二回目
気が付いた時には元の白い部屋にいた。
どうやら死なずに済んだようだ。
頭痛もなく、体調は全く問題ない。
そしてメガネの男もそこにいた。
『ようこそ、2時間の部屋へ』
ついさっき聞いたばかりの声が響く。
『次の案内は2時間後となります。しばらくお待ちください。』
さっきのは夢か?
意識を失っていた間にある程度時間が経過したはずなのにまた2時間。
前回と同じデジタルのカウントダウンが始まる。
スマホも使えないし、時間はこの表示だけが頼りだ。
「なぁー、あんた、さっきもいたよな?」
メガネの男に声をかける。
「ごめんなさい」
「謝られても困るんだが、あんた、スマホは持ってないか?」
スマホがあれば誰かに連絡するとか、場合によっては警察もアリだし何とかなるだろう。
「持ってるけど使えないんです。充電しても動かないんです。」
「おまえもか」
メガネの男は自分から話そうとはしないが、こちらから聞けばそれなりに答えてくる。
また寝込んで首を絞められても困るので、俺は男に話し続けた。
「さっきのアレはなんだったんだろうな」
「死んだんです」
「え?」
「二人とも死んだんです。だから、また初めからやり直すんです」
「死んだって、俺もおまえも生きてるじゃないか。頭大丈夫か?」
確かに死ぬかもと思うぐらい苦しかったし頭も痛かった。
でも今生きているのだから死んでるわけがない。
「僕は9回目なんです」
その男は説明を始めた。
ここが密閉された空間で空気が足りないこと。
それは二人で何もしなければ、残り30分までに二人とも死んでしまうということ。
過去に3回殺されたこと。殺された後に相手が変わること。
つまり、相手を早い時間に殺せば、この部屋を出られるであろうこと。
だから俺を殺そうとしたこと。
「僕を殺してください」
メガネの男は最後にそう言った。
そんなことが出来るわけがない。
確かにひ弱そうに見えるメガネの男が俺を殺そうとしても難しいだろう。
寝ているところで首を絞める程度が限界。警戒されたらもうその手も無理だ。
メガネの男の話が本当であれば、ここを抜け出さなければ、あの死の苦痛を繰り返すしかないということだ。
唯一の救いは、死んでも生き返ることだろうか。
「おい!聞いてるんだろ!」
中空に向かって俺は叫んだ。しかし、反応はない。
「どこかにスイッチとか何かないのか?」
俺は何もない部屋を見渡した。
すると、先程は見落としていたのか部屋の隅に小さな箱が見えた。
「あれか」
箱は紙製で簡単に蓋が空いたが、スイッチなどはなく、ナイフが1本入っているだけだった。
いわゆるサバイバルナイフだろうか。
これを使って壁に穴でも開かないだろうかと試みたが、傷もつかない。
それでも、部屋どこかにヒントが無いか調べ続けた。
部屋の端から端まで調べ終えた時には頭痛が始まっていた。
見つかったのは、部屋の反対に同じように置かれたナイフ入りの箱だけ。
残り1時間以上ある。
「なんなんだよ!」
床をたたいてもびくともしない。
何もしなくても死が近づいてくる。
とてつもない息苦しさ、激しい頭痛、頭が働かなくなり、手足を動かす力も出ない。
なんとか生き続けようともがく。抵抗する。
まだ生きている、死んでたまるか・・・