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朝食の訪問者

「支度はできたか」


朝食の時に着ていた動きやすい水色のシフォンワンピースを脱ぎ、左肩にだけ紐があるアシンメトリーの薄い紫色のワンピースに袖を通す

背中に大きなリボンが付き、動くたびにフラフラと上下に揺れ、腰からふわりと裾に広がるスカートの裾にルビーが縫い付けられているので、嫌でもコクの瞳を意識させる


「もうすぐ終わるから待ってよ」

髪を編み込まれながらキューラがニヤけながら鏡越しにこちらを伺うのを感じる


コクの部屋を入って右手のドアを開けらとあるかの部屋は、私専用の衣装とドレッサーが備え付けられている場所だった


(だったら朝もここで着替えられたじゃない)

と言ったところで、また聞く耳を持たないだろうことは容易に推測できる


「さっきから何ニヤニヤしてるの?」

あまりにも不自然な表情のキューラに鏡の中で目を合わせ聞く


「だって昨夜はお二人の初夜だったんですよね、それはそれはお熱い夜を……」

口元に手を当てながら顔を赤くする彼女に、それ以上のセリフは合わせない


「何もないから、あるわけないから!!」


その発言に納得できなかったのは、開け放ったドアに背を預けていた、夫であり王であるその人だ


「ほほぉ、ならば今夜からは何かあるかも知れんな、それからそこのお前」


腕組みをして、新しく着替えた白いシャツに黒いズボンは、私と違って普段着に近いのだろう、何も着飾ることもなくこれで謁見で良いのかと信じられなくなる


ビクリとしてその場に固まったメイド姿の彼女がなぜ泣きそうなのかは、その後に続く威圧感ある低い声に私としてはため息をつく


「たかがメイドの分際でなんだその喋り方は、メイド教育からやり直したいのか、それとも」


ルビー色の目に睨まれて、ヒィ!と変な声を出したキューラもコクの隣でハラハラしながらそれを見ているしかないサラフィーも、おそらく寿命がどんどん縮んでしまっているのだろう、血の気が引いていく音が聞こえそうなくらいの青い顔だ


「……ちょっと、私の友達いじめないでくれる、敬語をやめるように言ったのは私なんだから文句があるなら私に言って!!」

助け船ではないが事実だし、そんな圧力かける事かとイラッとしながら立ち上がるのは、これが一番彼を黙らせるには都合が良かったからだ


「メイドが友達?開いたこともない」

「聞いたことがなくても私の命令に従っただけなんだから良いでしょ」

間髪入れない返しで、口では勝てないと指をこちらに向け

「わかった、命令なら守らねばな」

とキューラに言い聞かせた


「そろそろお時間です」


次に顔が青くなるのは私の番だった


コクの後ろからさっきの男が逆さまにぶら下がっている姿が目の端に映ると

「ギィヤー」と部屋中に轟くのは私の可愛気のない


一人を除いては聞きなれない耳をつんざく超音波に最も耐えられなかったのは、天井から床に受け身も取れず転がる、執事ことコウモリ男のドゥリーだった


そんな登場の仕方しかできないのかとグダグダいう私に、そんな悲鳴しか出せないのかと苦笑しながらも、お姫様抱っこが板についてしまったコクが廊下を歩く様はその威厳を損なわず、礼をして通り過ぎるのを待つ多くのメイドは彼の背中を恋しそうに熱く見つめるのだった


最も、キューラとサラフィー、執事のドゥリーだけは、まださっきの超音波悲鳴攻撃からのダメージが続いているらしく、耳をさするお互いに目配せしながら二人の後をトボトボとついてきている


「お妃様の遠吠えは獣王よりも凄そうだ」

小声のドゥリーに

(聞こえてるし私は遠吠えなんてしませんよ!)という視線だけ送って黙らせ、いざ先王への謁見の間へ乗り込む、といっても私は運ばれてるだけだが………

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