Rock and Rolling days
1.紙飛行機
バイト終わりいつもと違う通学路。
その日は何故か遠回りで学校へ向かってた。
市内で一番有名な病院の前を遠回り過ぎようとした時、米神にコツンと何かの小さな衝撃を受けた。
「いっ、ん?紙…」
それは紙飛行機だった。
辺りをゆっくりと見渡してみた。すると
5階位のある病室から一人の女の子が手を振っているのが目の中に入った。
思わず手を振り返した。俺らしくないが。
(これ、返しに行った方がいいかな?)
取りあえずその子の病室へ向かった。
「今日は」
彼女は小柄で痩せていた。
「今日は、初めまして」
軽く微笑んでくれた。
「どこが悪いの?」
(ったく俺ってデリカシーないのかよ…)
「私白血病なの」
聞いた事はあるがはっきりとはどんな症状になるかとかは解ってはいなかったがその病名の響きに少し強張った。
「そうなんだ…」
何とか沈黙を作らないようにしようと考えるが浮かんでこない。
「ねぇ今何処かに行く途中でした?」
「えっ、あっこれから学校にね」
「もう夕方なのに?」
「定時高なんだ俺」
「そうなんだ、ごめんなさい引き止めて」
「いや、大した授業受けてないから」
「何歳なの?」
「19だよ」
「私と一緒だね」
「タメなんだ、そうか」
その日俺は学校をフケて彼女と色々話をした。また来る事も約束して。
その数日後彼女の母親と出会う事になった。
「何時もお見舞いすみませんね…」
「いいえ、暇人ですから」
「…実はお伝えしたい事があるのですが」
「は、はい…?」
「あの娘には言ってないのですが後…」
その次の言葉はあの瞬間周りの雑踏の音さえ遮ってしまうほど重く俺の耳を塞ぎ闇へと突き落とした。
(何が出来るのだろう…俺に)
俺はその日から馬鹿な頭をフル回転してああだこうだと色々考え始めた。
「外に行かないか?」
「どこへ?」
「海とかそこらかな」
(ベタ過ぎるか(汗))
「デートだね(笑)」
「そうだな」
クラスの友に頼んで足代わりになってもらい
あちこち回った。
楽しい時間はあっと言う間過ぎ黄昏の海へ。
「今日はありがとうね」
「いや、大した事出来なくて」
「こんな楽しいの久々よ」
「俺は初めてかな?」
「えっ、モテるでしょ」
「モテる理由ないよこんな男」
「だって楽器弾けたり曲作れたりして」
「たまたま周りに居ないだけだし」
「こんなに優しいのに?あっ誰にでも優しいのかな?」
「違うよ、誰にでもってわけじゃ…」
その時彼女が俺の手を繋いできた。
(慣れてないんだな…こういうの)
「もう少しだけこのまま歩いていい?」
「彼女のワガママは受け止めるよ俺」
「嬉しい、また連れて来てくれる?」
「体調が良い時ならいつでも」
「じゃ今度はギター持ってきてね」
「!?…」
「駄目なの?」
「…はい」
「(笑)」
夕陽がゆっくりと沈み始めて寄せては砕け散る波飛沫も何だか心地好く二人歩くこの道も永遠にすら感じた時だった。
ーしかしその日は突然にやってきた。
「なぁ…俺がわかる?」
「…かる」
痩せこけた手を繋ぐ事しか出来ない俺。
「がん…ばるんだ」
「う…」
他に何も言葉が浮かばない。
彼女が何かを振り絞る様に俺に言う。
「…って」
俺は耳を近づけた。
「おんが…くがん…ばっ…」
それが彼女の最後の言葉だった。
俺の感情はこの日、死んだんだ。
それぐらいしか
温かく 強く弱く
君を抱きしめられる
真っ直ぐな太い腕が
今すぐ欲しい
唇より 無口なまま
君だけ見つめられる
一途で大きな瞳が
今すぐ欲しい
夜明けの光の一片が
ゆっくりとこの胸を伝う
その愛しさは決して
言葉にはならないから
喉が裂けても 愛していると
死ぬまで叫び続けよう
他に何も出来ない
俺を許してほしい
それぐらいしか出来ないから
心でしか話せないから
哀しい時 黙ったまま
君の直ぐ側で一緒に
流す涙が
今すぐ欲しい
夜明けの光の一片が
ゆっくりとこの胸を伝う
その愛しさは決して
言葉にはならないから
喉が裂けても 愛していると
死ぬまで叫び続けよう
他に何も出来ない
俺を許してほしい
それぐらいしか出来ないから
心でしか話せないから
それぐらいしか出来ないから
心でしか話せないから