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07 扉が開いたら*

書き直し済

 扉が開いたら勇者様がいた。


 その人は、私が扉の向こう側にいたことを知っていたかのように、笑顔を向けてくれた。あの時と同じように。

 それを見た私はというと……固まっていた。それはもうガッチガチに……。


「あの、大丈夫ですか?」

「え、あっ、はい! だ、だいじょうぶっです!」

「そうですか? こほん。本日は来てくれてありがとう。これからお話があるんだけど、時間大丈夫? そんなにかからないとは思うけど」

「は、はい」

「それは良かった。じゃあ付いてきて」


 そう言うと彼は振り返りスタスタと歩いていった。彼が向かう先は、綺羅びやかな装飾と光に彩られた赤い絨毯。こんな汚れた靴で歩いていいものか戸惑っていたが、「どうぞ」と彼が振り返り一言かけてくれたので、付いて行く。

 足音が響く。

 捕まった小動物のように、あたりをキョロキョロと見回してしまっている。まさに別世界という言葉が正しい用に思えた。ただ、王城だというのに人が誰ひとり居ない。



「ここの部屋で少し待っててね」

「は、はい」


 そう言われて通されたのは、とある一室。

 部屋の中央には机と、机の四辺にそれぞれ向かい合いように二人がけの椅子があった。他にこれといった物は置いていなかった。窓が無いせいか圧迫感がすごい。


「わっ!」


 椅子に座ってみると凄いフッカフカで、思わず声が出てしまった。でも、こんなに柔らかい椅子なんて初めて座ったかも……あぁ、眠くなってきたぁ……。



「お待たせ、アレルさん?」

「えっ、は、はいっ!」


 軽く夢の世界に飛び立とうとしていた意識が一気に引き戻された。視線が必然的に背中側にある扉へ向かう。


「ク、クレーベル様!? すすす、すみません!」


 扉の向こうに居た、いらっしゃったのはロナード王国現国王クレーベル様。その後ろに勇者様も見える。私は即座に椅子から立ち上がって床に座り頭を下げる。


「あぁ、いいんですよ、頭を上げてください」

「で、ですが!」

「そういうのは良いんです。楽にしてください」

「は、はい、し、失礼します」


 私がさっきまで座っていたところに座り直すと、向かいにクレーベル様と勇者様が座った。ただここでも、警備の人は入ってこなかった。というよりも、扉の向こうにもそういった人は見えなかった。

 それに、クレーベル様をこんなに間近で拝見する事はなかった。光に反射してキラキラと輝いている白く長い髪、傷一つ付いていない白い肌。見るからに上質そうな衣服から目の前の人がその人であるということははっきりと分かる。遠くから見るのとは全く違う美しさが目の前に居る。


「では、早速本題に入りましょうか。ご存知かもしれませんがわたくしはクレーベル・ロナードと申します。こちらはユウさん」

「アレルです」

「それでアレルさん。手短に言いますと、今日はこちらにいる勇者ユウさんの世話係。先の選考会で合格されたので、それについてお話しようと、この席を設けさせていただきました」


 ほ、本当に合格してたぁぁぁッッ!!!!!

 と、私は心の中で叫んでいた。なんとか叫ばずに済んだのは、緊張して到底声なんて出そうに無いからではあるのだが。


「選考に関してはユウさんに一任しておりましたので、わたくしは何も言うことはありません。こらから、ユウさんのことをよろしくお願いします」


「勿論です! 精一杯務めさせていただきます!」


 その応えはさっきまでの緊張を忘れさせるような堂々としたものだったと我ながら思う。


「それでは、早速本日から……と言いたいところですが、アレルさんにも事情がおありでしょう。五日後までに諸々のことを準備してください。部屋や生活で必要なものは支給させていただきますので安心してください」

「分かりました」


 それからは、クレーベル様に色々と冒険者の仕事や生活について聞かれた。何が楽しいのかは分からないけど、興味深そうに私の話を聞いてくれた。


「興味深いお話をありがとうございました。

 そろそろ、時間のようですのでここで失礼します。明日からユウさんをよろしくお願いしますね」

「いえ、えぇっと……よ、よろしくお願いいたします」

「はい。お願いいたします」


「これからよろしく」


 彼は最後にそう言って優しく微笑んでくれた。以前、彼に会ったときのように。


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