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06 手紙と不思議な鳥*

書き直し済

「そういえば、ミルは昨日のやつ来てなかったみたいだけど」

「あー、言おうか迷ってたんだけど、ちょっと用事があってね」


 私はいつもどおりミルと一緒に狩りに来ていた。午前中には予定していた分の動物は狩れていたから、今はゆっくり昼食を食べていた。


「用事って?」

「ちょっと実家の方で色々あってね。アレルにはちゃんと話がついたら話すよ。

 そんなことより、どうだったの? 選考会の話!」

「うん~無理だろうなぁ。予想通り結構な人がいたし。正直言って手応えも無かったような感じだしね」


 昨日のことを話しながら休憩を終へ、早めに街に戻り素材を買い取ってもらった後、宿へ戻ることにした。


「リーシャさん、鍵いいですか?」

「はいぃ、お帰りなさい。それと、お手紙が届いてますよぉ」

「えっ……」


 それはもしや……!!


「ちょうど、アレルさんが出ていってすぐに届いたんですよぉ」

「あ、ありがとうございます!」


 その手紙と鍵をそそくさと受け取って部屋に戻る。

 そんなまさか、とは思っていても少しぐらい期待してもいいじゃない。で、でも昨日の今日で早すぎる気もするし。それにいつも手紙でやり取りしている人はいる。でも、いつもの手紙の模様とは違う気がするが……き、気のせい気のせい!!


「うそ……」


 そこにはこう書かれてあった――


『一週後、5月23日に登城せよ。』


 それを読んだ私は、そっと手紙を置いて机の上に置いておいた月読紙を見る。今日は5月16日、ということはキッカリ一週間後だ。


「ほんと、なの……?」


 それから、私はベッドに突っ伏していた。



「ん……寝てた?」


 どうやら、そうみたい。疲れていたのか、はたまた……手に持っていた紙に目を向ける。


『一週後、5月23日に登城せよ。』


 本当だった。


 夢じゃなかった。


 間違いなくあの選考会を受かったということなのだろうか。


 また、ベッドに倒れようとする体を必死に抑える。


 少なからず、私はもう一度勇者様に会いたいと思っていたのかもしれない。昨日、会った時はものすごく緊張していた。それも、久しぶりに会うことができて嬉しかったからなのか……。

 どんなに言い訳しても、私はずっとあの人が好きで、それが叶わなくとも傍にいられる可能性を手に入れることができた。素直に喜ぼう。




 時間は流れ一週後。

 手紙が届いてからの一週はいつもどおり過ごした。一度、ミルに話そうかと考えたけど、まだちゃんと決まったわけでもない。もし行って、別の用件……重大な事件とかで容疑を掛けられていて……ないな。でも、そういったことが無いとも言い切れない。だから、ちゃんと決まってからこの事は話そう。


 そして、目の前には石レンガ製の城門がそびえ立っていた。


「本当にこれでいいんだよね……」


 城門付近には警備とか、そういった人が一切いない。城門は固く閉ざされて開く気配がな……っ!!


 その瞬間、石同士の擦れる音と共に固く閉ざされていた門が開いた。そして、向こう側の門の中央にいたのは人ではなく鳥。それも大型の……。


 一人と一匹?の間に静寂が流れた。


 すると、その鳥はお辞儀をした。一瞬戸惑ったがこちらも、それに習って頭を下げる。数秒後、頭を上げると鳥はそのままの場所に佇んでいた。

 「ファサ」という音とともに、その鳥は振り返りガッチリとした足で奥にそびえ立つ王城へ歩いていった。


「えっ」


 こ、これはついて行ったほうが……いいのかな?

 私が戸惑っていると、その鳥はピタッと止まり首だけをこちらに向けた。合った視線は「付いてこい」とでも言っているような……い、いいんだよね。


 そんなことを思いながら城門をくぐった。


 今まで、城壁外からでしか見る機会がなかった王城が目の前にそびえ立っている。凱旋のときも城壁内には入れてはいない。

 徐々に王城へ近づいていき、石レンガの模様がくっきりと見えてくる。


 石レンガ畳の道を鳥の後を追って進む。ここにも警備の人は見えない。


 前を進んでいた鳥が止まり私の足も止まる。今まで周りを見ていた視線が前にいく。これまた重々しい木製の扉が視界いっぱいに広がる。


 そして、「ギィイィイィー」と音を立てて扉が開いた。


「お久しぶりです。アレルさん」


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