03 再開と悲しい朗報*
書き直し済
昼食後の狩りを終えて町まで戻ってきた。
ミルが言っていたとおり、出かける前よりも町は活気づいていた。
道の脇には露店がズラリと並んでいる。
そこかしこに花が飾られ、町全体がお祭り騒ぎ。話によると国王様が国庫をこの凱旋の資金に惜しげも無く投入したらしい。
余談ではあるが、国王――クレーベル――は随一の善政を敷き国民からの尊敬も厚く、こういった催事には多くの資金を援助し、国民との交流も欠かさずに行う。そして、周辺諸国との交流も厚い。世界規模で尊敬される国王、それが現国王クレーベル様だ。
この町ルークは国王のお膝元でありロナード王国の都である。
この国の人口の殆どはここに集中している。
それは単にこの町が都だからということではない。この町から一歩出ると、そこはいつ魔獣に襲われるか分からない危険地帯。到底ここ以外に住むことはできない。お陰で冒険者という仕事があるわけだけど。
他にも、ここは大陸を南北に往来するには必ず通る必要がある東西に幅広い大国。人や様々な物が行き交い交通の要所でもある。そのためこの国が繁栄したのは必然であると言えよう。
話がずれてしまった。
とりあえず、私達はあたりを散策しながら役所へと向かう。
報奨金をもらうためである。魔獣、野獣から手に入る素材や木の実や草花などの植物を役所へ持っていくと依頼内容通りに換金してくれる。
私は、二年くらい前から独り立ちして一人。両親はここより西の街に住んでいる。
そのため、宿を借りてそこで生活している。ここで家を買うなんて到底できやしないけど、日々の生活には満足できている。
ちなみに、友人のミルとは偶然知り合った。
またしても話が……。
とりあえず、凱旋がもう少しで始まるとのこと。
今日分のお金を手に露店で腹ごしらえをするため暫しぶらつく。
「これください」
「私もそれください」
「はいよ! 熱いから気をつけてね」
「ありがとう」
「ありがとうございまーす」
露店に売っていた、パンにお肉と野菜を挟んだ物を買った。度々買う私のちょっとしたお気に入りの食べ物で、お値段もお手頃で腹持ちもいい!
私達は、それを手に一行が通る道で待つ。
暫くすると、ラッパの音と共に遠くの方から歓声が聞こえてくる。
どうやら、始まったらしい。
町は一層賑やかになり、私のいるところにも行列の先頭が見えた。
ミルによると、この後は王城で勇者様と王様がバルコニーから演説をされるらしい。特にこれからの予定も無いので私達はそれを聞きに行く予定だ。
あいにく、人が多すぎて勇者さんの顔ははっきり見えなかった。
勇者と王様が演説するというバルコニーの下には多くの人が集まっている。
しばらくして、周りが賑やかになりバルコニーに視線を向けると、もうそろそろで王様の話が始まる。人たちは皆んな上を見上げている。
王様は華やかなドレスに身を包み静かに話し始めた。
勇者様は奥にいるのか姿は見えない。
ここロナード王国は歴代、女性が国王を務めることになっている。
私からしたら、良い王様だったら男でも女でもどうでもいいって感じだけど。他国でも女性の国王様の国が多いらしい。理由は……よく分からない。
王様の話が終わり、盛大な音が鳴り響く。
恐らく次は勇者さまの演説が始まるのだろう。
周囲の人たちもそれを察してか、賑わいが増した。
盛大な音が徐々に弱まり、聞こえなくなるとバルコニーから一人が姿を現した。
その姿を見て私は驚愕した。
バルコニーから現れたその人を、私は知っている。
あの時、森で出会った……もう一度会いたかった人。
それからのことは覚えていない。
ミルに声かけてもらってようやく周りの様子を知ることができた。さっきまで居た人たちはポツポツと街に戻っている。辺りも暗くなり始めていた。
「だいじょうぶ?……じゃないよね、どうしたの?」
いつもは快活な彼女だが、今の私の状態をみてか心配してくれたみたいだ。
「ごめん、ちょっと動揺してて……」
「そんなに動揺するなんて、何かあったら相談に乗るよ?」
「う、うん……ありがとう、でも今は待って」
ミルは少し落ち込んだような表情をしたが、それ以上は何も言ってこなかった。私は、心の中で「ごめん」と謝りながら宿へ戻った。