02 噂*
書き直し済
彼との出会いから約1年が過ぎた頃。
あれ以来、彼に会うことは無かった。
私は冒険者として安定した収入を得られるまでには成長できた。戒めとして狩りに向かう時は友人、ミルと一緒に行っている。
「今日はどうする?」
「いつものでいいんじゃない?」
「わかった」
友人のミルは依頼板に向かった。
「おい!!! 聞いたか!!!! 最期の一匹が倒されたらしいぞ!!」
「聞いた聞いた、とうとうやりやがったな!」
どこか周囲が騒がしい。
「ちょいちょい、アレル!」
「ん?」
ミルが指差す方には1枚の張り紙がしてあった。勿論、他の人もそこに集まっている。
「どうしたの?」
「これこれ、とうとう最後の一匹が倒されたんだよ!」
「最後の一匹?」
「ほれほれ!」
私はその張り紙に目を向けると、そこには…【勇者、ついに七匹目の神獣を討伐】と大きく書かれていた。
神獣、その生き物は幼少の頃から聞かされている話。
時に災いを、時に戦争を……我々人類の歴史を作り出したと言っても過言ではない存在。そして、人類が再び歴史を歩みだすにはその七匹の神獣を討伐し666年の眠りにつかせる。過去の歴史においてそれを実現したものは居ない。
話を戻すが、つまりは勇者という人物はその誰もなし得なかったことを成した。確かに、みんなが沸き立っているのも分かる。
「どんな人だと思う?」
「どんなひと?」
ミルが不意にそんな事を聞いてきた。
「やっぱり筋骨隆々な感じの人なのかなぁ?」
「んん~、どうだろ」
「それか、物凄い魔法の使い手とか!」
“勇者”の本当の姿を知る人は居ない。噂では男であるというのが唯一世間に出回っている。
そして、もう一つ噂になっているのが……彼は王女様が召喚した異世界の人間であるという話。勿論、後者は殆どの人は信じて居ない。何故かと言われれば、それは物凄い危険なことだから。失敗すれば両者の命が失われるだけで済まない。天災が起きて1000年間世界は“暗闇”に包まれると言われている。
「はあぁ~」
「どうしたの?」
郊外の街道を歩きながらミルが深い溜息を吐いた。快活な彼女にしては珍しい。
「いやぁね、勇者様って1人で倒したって言われてるじゃない」
「さっきの話?」
「そうそう、それでね、噂では男って言われてるじゃない」
「そうだね」
「これって何かおかしくない?」
「おかしい」
ミルがどういう意味で言っているのか分からない。別におかしいところなんてあるのかな?
「だからね! 1人で神獣を倒せるくらいの人だったら女の1人や2人居てもおかしくないじゃない!」
「あぁ……そゆこと」
なんでそこで、握り拳を作っているのかは分からないけど……。
「それに、今日の凱旋パレードも1人で出るらしいのよ!」
「へぇ~」
凱旋パレードなんかあるんだ……それじゃあ、その時にようやく顔が見れるのかな?
「………なんか、反応鈍くない?」
「えっ」
少しの間を置いて、ミルは何かを思い出したのかニヤリと笑いながら――
「そっかぁ……アレルには、もう好きな人居たもんね~」
「っ!!」
「図星ですか? 図星ですかぁ~」
そのニマニマした顔やめなさい! 一応、女の子なんだし……。
「はぁ…さっさと行くよ!」
「はいは~い、アレルさま~!」
少し歩いて、森までやって来た。
偶然にも一年ほど前に彼にあった場所……
それから私達は昼食の時間まで狩りを続けた。