表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/103

錬金術師さんとグリフォン肉パーティー

…………………


 ──錬金術師さんとグリフォン肉パーティー



 ユリアさんの提案でボクたちはグリフォン肉をいただくことに。


 ユリアさんはグリフォンを運ぶ間、冷凍の魔法をかけていた。こうすることで肉が獣くさくなくなるらしい。グリフォンの体内のお肉は腐りにくいけど、血は冷凍の魔法をかけておかないと腐敗して、そのせいで生臭くなるそうだ。


「で、グリフォンを2頭も狩ってきた、と」


 ボクたちがグリフォンを家の玄関まで運んできたのに、エステル師匠が頭痛がすると言うように頭を押さえる。まあ、案の定のリアクションだ。またこれで家の中が内臓だらけになるのだから。


「肉を食うんだ。美味いぞ」


「だからって、2頭も食えないだろう。あたしたちの胃袋はそこまで大きくはない」


 ユリアさんがちょっとウキウキしながら告げるのにエステル師匠がため息を吐いた。


「近所の連中を呼べばいい。これだけの肉の量なら8、9人は呼べるぞ」


「あたしの家で宴会でもするつもりかい? 全く、しょうがないね。馬鹿弟子、近所回って暇そうにしてる奴らを適当に引っ張ってきな」


 なんだかんだでエステル師匠もお肉が食べたいと見たね。


「ふふっ」


「何がおかしいんだい。呼んでこないなら、あんたに全部食わせるよ」


「ラ、ラジャ!」


 ひええ……。エステル師匠ってば割とシャレにならないこと言うんだから。


「では、行ってきます!」


 というわけで、ボクはご近所さんたちをグリフォン肉パーティーに誘いにいく。


「グリフォン肉、食べません?」


「グリフォン肉かい。そりゃあいいや。酒を持って行くよ」


 お隣の農家夫婦をまずゲット。


「グリフォン肉、食べません?」


「グリフォン肉? 食ったことないが美味いのかい?」


「冒険者の人が言うには美味しいそうですよ」


「なら、お邪魔しようかね」


 水車小屋の管理人さんゲット。


「グリフォン肉、食べません?」


「え? グリフォン肉? 誰かグリフォン討伐したの?」


「はい。ヒビキさんとレーズィさんとユリアさんが」


「あー。早速パーティー組んだわけか。なら、お邪魔しちゃおうかな」


 開拓局の暇そうなハンスさんゲット。


 そろそろ人数的には良さそうなのでハンスさんと一緒に家に戻る。


「あっ! もう料理している!」


 ユリアさんがうちの鍋を出して料理を始めていた。なにやら煮込んでいるし、焼いている。何を作っているんだろうか?


「エステル師匠ー。ご近所さんたちを連れてきましたよー」


「まあ、これだけいれば食いきれるだろう。馬鹿でかいグリフォンだからね」


 ボクが告げるのにエステル師匠がそう返す。


「レ、レーズィさん。冒険者の方、上手くやれてますか?」


「はい! ヒビキさんとユリアさんがいるので楽ちんですよう」


「そ、そうですか」


 ハンスさんが何やら挙動不審にレーズィさんに話しかけていた。それからハンスさん、「俺も冒険者になればよかった」とか小声で言っている。ハンスさんは頭がいい人なんだから、別に力仕事をしなくてもいいと思うんだけどなー?


 ひょっとしてハンスさんもレーズィさんと一緒に冒険したいのかな?


 それだとハンスさんってば本当にレーズィさんに惚れちゃってるみたい。もう、胸の大きい人がそんなにいいのかな。


「できたぞ。グリフォン肉のスープとステーキだ」


 黙々と調理していたユリアさんが声を上げる。


 覗いてみるといつの間にか出現した鉄板の上には香ばしい香りを放つグリフォン肉が鎮座し、ユリアさんがかき回していた鍋には白っぽいスープに野菜と肉団子が浮かんでいた。どちらも食欲をそそられる!


「グリフォンのステーキはそのまま頬張れ。塩で軽く味付けしてあるから、それで十分だ。新鮮な血の味がそのままソースになる。私の家では定番の料理方法だ。グリフォンの血には精力を増す力がこもっているそうだぞ」


「まあ、確かに精力剤には魔獣の血を使うこともあるね。しかし、血の処理が案外面倒だし、この村じゃそこまで需要がないから作らないんだが」


「錬金術師はすぐに薬にしようとするな。薬にせずともそのまま食せばいい」


「冒険者の小娘。こちとら薬を扱う人間としていろいろと考えてるんだよ。病人にステーキは食わせられんだろうが」


 エステル師匠とユリアさんが言い合う中で、ボクはユリアさんお手製のグリフォンのステーキに手が伸びる。お皿に乗ってナイフとフォークで解体し、いざお口の中へ!


 うん! 美味しい! グリフォンって鶏肉みたいな味がするんだね。脂身は少なめでさっぱりとしていて、それで確かな肉の味。食感は柔らかくて、簡単に食べられる。お肉はやっぱりいいものだ。これならいくらでも食べられそう!


「美味いな。奇抜な見た目の生き物だったから、どんな味かと思っていたが鶏肉だ。いや、サバイバル訓練の時に食べたカエルに似ているかもしれない。淡白な味わいだが、飽きが来ない。これはいいものだ」


 ヒビキさんもグリフォンステーキをもぐもぐしてそう告げる。カエルは意外と美味しいよね。揚げるとおいしいよ。


「そっちのスープは?」


「うむ。こっちは毒矢で仕留めたグリフォンの肉を肉団子にして入れてある。グリフォン肉と野菜が出汁になっていて美味いぞ。これもシンプルに塩だけで調理しているが、好み酔ってはアカヒカリ草の実を入れてもいい。私は少し入れるのが好みだ」


 ほへー。グリフォンのミートボールかー。初めて食べるなー。


「はい、ヒビキさん! 今日はお疲れさまでした!」


「ありがとう、リーゼ君」


 ボクはヒビキさんにスープを注いで渡す。グリフォン討伐の功労者から食べる必要があるよね。ボクってば何もしてないし。


「レーズィさんも! お疲れさまでした!」


「はいっ! これからも頑張りますよう!」


 レーズィさんも今日は活躍したので労わねば。


「ユリアさんは……お疲れさまでした」


「うん」


 ユリアさんはもう自分で注いでもぐもぐと食べていた。素早い。


「エステル師匠も食べましょうよ」


「ああ。夕食はこれで済ませていいだろう。アカヒカリ草のストックはあったかね」


「それなら採取してきました!」


「よくやった、馬鹿弟子。気が利くな」


 エステル師匠は辛党だもんね。だから、よく味付けで揉めるのだ。


「こいつをちょいちょいと入れれば、いい具合だ」


「い、入れすぎじゃないですか?」


 1粒でもピリピリするアカヒカリ草の実をエステル師匠は20粒くらい入れてる。スープがほんのり赤色に変わっていく光景はこの世の終わりを見ているような気分だ。


「ヒビキも使いなよ。ぐっと美味くなるよ」


「ふむ。そのままでも素材の味がしていいのだが」


 あー。エステル師匠ってばヒビキさんにまで。


「錬金術師。私にも寄越せ」


「はいはい」


 そして、ユリアさんも入れる。こっちは2、3粒。それでも辛いよ。


「ふむ。これぐらいか」


「そうそう。そんなもんだ」


 あーっ! ヒビキさんがエステル師匠に騙されて10粒も入れてるー!


 辛いよ! そんなに入れたら滅茶苦茶辛いよ! 食べられなくなるよ!


 ボクのそんな心配をよそにヒビキさんがグリフォンスープを啜る。


「うむ。確かに美味い。この手の辛さは好物だ。白米が欲しくなるな」


「おっと。あんた、いける口か。そいつは悪くないねえ。それに合いそうな酒持ってきてやるから待ってなよ」


「い、いや、酒は別にいいのだが……」


 ヒビキさんってあんまりお酒飲まないよね。酔っぱらってるところみたことないし。どういうことなんだろう? 下戸なのかな?


「うーん! 美味しい! 美味しいですよう! 魔獣のお肉がこんなに美味しくなるだなんて、どんな魔術を使ってるんですか!?」


「魔術は使っていない。素材のうま味だ。山育ちは素材の味を大事にする」


 ……レーズィさんってダンジョンで暮らしてたとき何食べてたんだろう? 魔獣のお肉を食べるのは初めてではなさそうな感想だったけれど。ま、まさかゴブリンとか食べてないよね? あれは召使い的なものだよね?


「酒だぞ、酒。冒険者の小娘も飲むか?」


「私は冒険者の小娘ではない。ユリアだ。それはそうと私も酒は飲む。グリフォンの肉と酒はよく合うからな。寄越せ」


「ここは年功序列であたしからだ」


 一番の年上はここでニコニコしてミートボール頬張ってるレーズィさんだよ?


「かーっ! いけるね! こういうときのためにとっておいてよかった!」


「うん。度数の高い酒とグリフォン肉はよく合うな。このスープを飲んでおけば二日酔いにもならないと言われている。だからいくら飲んでもいい」


 酔っ払い出現。近所の農家の人たちもエステル師匠たちとわいわいしている。


 お酒が飲めないボクは仲間外れの気分です。


「リーゼ君。酒が呑めてもいいことはないぞ」


「そういうものですか?」


「そういうものだ」


 ヒビキさんは酔っぱらったエステル師匠に1杯だけ飲まされたけど、それ以後は飲んでいない。適量のお酒は体にいいんだってエステル師匠はいつも言って飲んでるけど、実際のところどうなんだろうね?


「ぷはあ。こんなにご馳走が食べられるなんてこの村は最高ですよう!」


「レーズィさんがこの村を気に入ってくれてよかったです」


 スープを飲み干して満足げなレーズィさんと相槌を打つハンスさん。でも、レーズィさんの視線は更なるグリフォン肉にしか向いていないのが悲しいところだ。


「さて、内臓などはまた油漬けにするのだろう? 手伝おう」


「ありがとうございます、ヒビキさん!」


 その日、エステル師匠はあんなに渋々とした様子だったのにグリフォン肉がなくなった時はご機嫌だった。レーズィさんのお腹も見るからに膨れている。ユリアさんは最後のシメと言って、パスタをスープに入れて食べていた。本当にユリアさんはよく食べる。


 ボクとヒビキさんはグリフォンの内臓でポーションに使える部位を洗浄して、油漬けにしておいた。部屋の中が一段と内臓だらけになったけれど、エステル師匠は酔っぱらってご機嫌なので気付いてない。しめしめ。


「では、今日は食事をありがとうね、リーゼちゃん」


「いえいえ。ご近所さんですから」


 そして、近所の農家夫婦と水車小屋の管理人さんたちも帰っていく。


「レ、レーズィさんは今付き合ってる男性とかおられます?」


「私は人類を労働から解放する使命と付き合ているのですう!」


 ハンスさんは相変わらずレーズィさんからスルーされている。残念な人だ。


「楽しかったですね、グリフォン肉パーティー」


「ああ。こういうことはいいものだ。周囲と友好関係を築ける。現地の人々との友好関係は勝利に繋がることもある」


 勝利って何に勝つんだろう?


「さて、今日は俺が風呂を沸かそう。リーゼ君から入るといい」


「ありがとうございます、ヒビキさん!」


 今日はくたくたでお腹いっぱいだからお風呂に入ってベッドに直行したい。


 明日からは本気出して、裏庭を拡張するぞー……。ふわあ……。


…………………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ