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錬金術師さんと森の怪物

…………………


 ──錬金術師さんと森の怪物



 ボクたちはエルンストの山に薬草の苗集めとユウヒノアカリ草などの上級魔力回復ポーションに必要な素材集めにやってきた。


 ユウヒノアカリ草も裏庭で栽培したいところだけど、ユウヒノアカリ草は太陽の光の当たり方が絶妙な場所にしか生息しないので、難しいところだ。今のところユウヒノアカリ草を自分たちで栽培できるようになったという話は聞かない。


 それ故に上級魔力回復ポーションは高いのだ。ポーション1本で8000マルクぐらいはする。ほぼ完全に上級冒険者様か騎士団専用のアイテムだ。


 だが、それも変わるかもしれない。何事も大量に作れば安くなるってエステル師匠が言っているように需要が大きくなって、供給も増えれば値下げ競争になる。


 需要って言うのはレーズィさんのゴーレムのこと。レーズィさんがゴーレムで一財産築いて、上級魔力回復ポーションをバンバン発注してくれるようになったら、需要が伸びて、供給も増え、値段も下がるかもね!


 まあ、値段を押さえるには素材をどうにかしなくちゃいけないんだけど。


「あっ。シトリアの実ゲットー。これを植えれば1年後にはシトリアの樹が生えるー」


 シトリアの実は最近調味料兼低級体力回復ポーションの素材になるのでよく消費するのだ。集めておいて損はない。ちょっとだけ森の動物たちに残して、残りは貰っていこう。低級体力回復ポーションで作るお料理美味しいんだよね。


「おっと。こっちにはツバメノタマゴ草がある。集めて、集めてー」


 ツバメノタマゴ草は中級魔力回復ポーションの素材になる。エステル師匠は上手く調合すればこれからも上級魔力回復ポーションを作れるって言っていたけど、すっごく手間がかかって、採算が取れるか微妙らしい。


 それからボクたちはどんどん山の奥地に入っていき、魔獣除けポーションの素材や体力回復ポーションの素材なんかをゲットしていく。


「おっと。あれは……」


 そこに見える赤い花を咲かせた草はアカヒカリ草だ! 爆裂ポーションの材料になるやつである! 食べるとすっごくピリピリするのだ。激辛料理には欠かせない素材だけれど、ボクは辛い食べ物には興味がないのでそこはどうでもいい。


 エステル師匠が欲しがりそうだから採取しておくのだ。冒険者の人たちには爆裂ポーションはよく売れるからね!


「後はユウヒノアカリ草だけどー……」


 これがなかなか見つからない。木の影や岩の影などを探してみるが見当たらない。


 くそう。いつもならば、ここまで時間がかからないのに、今日は特別ユウヒノアカリ草が見つからない日らしい。全く、厄日だね!


「リーゼさん。ユウヒノアカリ草ってどんな場所に生息してるんです?」


「うーん。夕日の光だけを浴びて育つって言われていますから、陰になっているところを探してみてください。形状はこの時期ならば桃色の花が咲いていて、花弁も草も丸々とした形の薬草ですから」


「了解です」


 ボクとレーズィさんは探す探す。だが見つからない……。


「リーゼ君。これだろうか?」


「あーっ! それです、それ! それが探していてたユウヒノアカリ草ですよ!」


 何とここにきてヒビキさんが発見した!


「しかし、日照時間を制限する植物というのも珍しい」


「ええ。珍品ですよ。夕日の光だけで育っているからこそ、魔力が詰まっているんだってエステル師匠は言ってました」


 ポーションの素材の中には月の光だけを浴びて育つツキノアカリ草というものもある。これまたレアアイテムで、これを使った上級体力回復ポーションは死人を生き返らせるぐらいの薬効があるらしい。


「これで素材は一段落! お昼にしましょう!」


 今日もボクがみんなのためにお弁当を作ってきたのだ。


「昨晩の残りの魚のソテー、キノコと大豆の和え物、トマトとベーコンのサンドイッチです! ご賞味ください!」


 今日も腕によりをかけてお弁当を作ったぞ! 1品は手に抜きしてるけど。


「ふむ。リーゼ君の料理はおいしいね。素材の味を上手く合わせている」


「美味かった」


 相変わらず食べるのが速いヒビキさんとユリアさんである。


「これ、美味しいですよう! ほっぺたが落ちちゃいそうです! まさに絶品!」


「い、いや。そこまでのものではないですよ」


 レーズィさんはエステル師匠の手料理を食べたら失神するんじゃなかろうか。


「って、皆さん食べるの速すぎですよう! せっかくのリーゼさんのお弁当なんだから、もうちょっと味わって食べましょうよう!」


「そうは言っても俺たちがのんびりしている間に何が近づいてくるか分からないからな。耳は澄ませているが、耳での索敵には限界があるし、対応が遅くなる。なるべく早く食べて、周辺を警戒しなければ」


「そういうことだ」


 そう告げるとヒビキさんとユリアさんは警戒態勢に入った。


 こ、これでは和やかにお昼というわけにもいかない。ボクはお弁当を掻き込むようにして食べる。ちょっと行儀が悪いけれど、冒険者風にダイナミックに戴いたというわけである。それでもヒビキさんとユリアさんに勝てる気はしない。


「美味しいお弁当にいい眺め。最高ですよう」


 そんなボクですら急ぐような状況でのんびりとお弁当を食べているレーズィさん。本当に冒険者としてやっていけるのかなあ?


「お昼は終わっただろうか、リーゼ君、レーズィ君?」


「終わりましたー」


 最後まで食べていたのはレーズィさんだけど、彼女もそこまでちんたらとはしていなかった。手際よくモグモグとお弁当を食べ終わると立ち上がって、魔術師の証である杖を手にする。実に満足そうだ。


「では、出発しよう。残りの素材の苗木を集めてしまって、日が落ちる前までにはこの山を下りるとしよう。どうもこの森はおかしな気配がしてならない」


「えっ? そんな気配がするんですか?」


「ああ。尾行されているようなそんな感触がする。気のせいだといいのだが」


 森の中でボクたちを尾行ってボクたちが採取した薬草を狙いに来たゴブリンとか? でも、今日は中級魔獣除けポーションを使っているから、ゴブリンが付いてくることはあり得ないと思うんだけどな。


「冒険者殺しかもしれないな」


「冒険者殺し!?」


 ユリアさんがさりげなく告げるのに、ボクが目を丸くする。


「すまない。リーゼ君、冒険者殺しとは魔獣の一種だろうか?」


「違いますよ! 他の冒険者が邪魔冒険者を殺したして、財産を盗んでいくことですよ! 人としてサイテーの行為です!」


 冒険者殺しは事故に見せかけて冒険者を殺す最低の行為だ。同じ冒険者だから協力するべきなのに、目の前の財産目当てに人殺しを侵すなんて人として許せない!


「ふむ。だが、どうも尾行しているのは人間ではない気がする」


「人間じゃない?」


 ひょっとして高位魔獣とかだろうか。ボクたちが隙を見せるのを静かにまって、隙が見えたら即座に襲い掛かってくるとか! ちょっと怖い!


「しかし、昼飯を食っているときにそいつは動かなかった。私には我々を観察しているように思える」


「観察か。知恵のある魔獣のようだな」


 知恵のある魔獣は危険度が半端ない。レッドドラゴンも知能を持っていたけれど、他の魔獣も年月を重ねることで知能を得る。そうすると冒険者には手におえない化け物のの出来上がりである。


 知恵のある魔獣ってのは人間を見ても突撃せず、人間が弱い部分をさらけ出すのを待つという。この間のレッドドラゴンにボクが襲われそうになっていたときも、レッドドラゴンは戦闘能力を持たないボクだけになったところを襲ってきたから。


「重々注意しましょうね。何が起きるか分からないです」


「そうだな。これから注意しておこう」


 謎の魔獣に尾行されながら、ボクたちは森の奥地へ。


「あっ! ここにもユウヒノアカリ草がいっぱいある! というか群生地だ!」


 森の斜面の大きな石が突き出した場所にユウヒノアカリ草がうっそうと茂っていた。これならば何本でも上級魔力回復ポーションが作れそうだ!


「リーゼ君。人工的に夕日しか当たらない環境を作ることは難しいのか?」


「う、うーん。岩とかを置いて環境を整えればできなくもなさそうですけど、基本的には無理ですね。生態系も謎が多くて、どんな栄養素の土壌で育つか分かりませんから」


 ユウヒノアカリ草は栽培するのがとても難しいのだ。


「私、研究のために2株貰っていいですか? もしかしたら、私ならユウヒノアカリ草を栽培して育てることができるかもしれませんから!」


 と、そんなことをレーズィさんが告げる。


「では、2株お譲りしますね。栽培、頑張ってみてください!」


「はいです!」


 レーズィさんは黒魔術師で青魔術師だから何か策があるのかも。


「他には、他には──」


「リーゼ君。静かに」


 ボクが次の薬草を探していたときにヒビキさんが制止した。


 こういう時は決まって──。


「グリフォン! それも2体!」


 2体のグリフォンが姿を現した! 片一方で雄で片一方は雌だ。って、冷静に観察している場合じゃない!


「レーズィ君。魔術を頼む。俺は奴らを押さえる。ユリア君はリーゼ君を守りながら、可能な限り援護してくれ」


「了解だ」


 ユリアさんがボクを引っ張って岩陰に隠れて弓を構える。


「では、いきますよう! <<速度低下>>!」


 レーズィさんが詠唱するのに、グリフォンたちの動きが鈍った!


「これならば行けそうだな」


 続いてヒビキさんが速度が鈍くなったグリフォンに向けて突撃する。


 頭に一撃の回し蹴り、グリフォンの鷲の頭がゴキリッとあらぬ方に曲がり、もう1体のグリフォンはヒビキさんを脅威と認めて飛び上がろうとする。


「今だ」


 そこにユリアさんが矢を叩き込んだ。


「新生竜でも気絶する毒矢だ。グリフォンが食らえばただでは済むまい」


 そう告げてユリアさんは素早く周囲を索敵する。


 ヒビキさんも油断なくナイフを構えて、別のグリフォンが現れないかと、とても慎重に索敵を続けている。だが、グリフォンのお替わりがくることはなかった。


「ふむ。このような怪物までいるとはな。この世界は危険だな」


「その割には余裕だったのではないか?」


 ヒビキさんが2体のグリフォンの死体を眺めて告げるのに、ユリアさんはグリフォンの毒矢に当たった部位を切り取っていく。


「それにしてもいいサポートだった、レーズィ君。この怪物たちがそのままの速度で襲い掛かってきたら危うかっただろう」


「い、いえ。そのようなことは。本当ならもっと戦闘向けの魔術を使うべきでした」


 それって死霊術とか悪魔召喚? ダメだよ、ダメ。


「リーゼ君。グリフォンは素材になるのか?」


「なりますとも! グリフォンの胆嚢は上級疲労回復ポーションの材料になりますし、別のレシピの魔力回復ポーションの素材にもなるんです!」


 思わぬおまけをゲットしてしまった。


 けど、また内臓が増えるとエステル師匠がそろそろキレそう……。


「肉は食わないのか? 毒矢を使った方は十分に加熱しなければ食せないが、もう一方の方は少し加熱するだけで食べられるぞ」


「お肉……。ちなみに美味しいです?」


「美味いぞ。ヒビキに麓までグリフォンを担いでいってもらおう。鍋があればいい具合に料理できる。ヒビキ、運べるか?」


「運べないことはないが、そこまでして食べるものか?」


「せっかく狩ったのだ。食ってやらねばならないだろう」


 すっかりお肉気分のユリアさんだ。かくいうボクもグリフォン料理は気になる。


「リーゼ君。他に集める薬草はあるだろうか?」


「そうですね。後1、2種類程度です。すぐに見つかると思いますよ」


「では、それを採取したらここに戻ってきて、グリフォンを麓まで運ぶとしよう」


 というわけで、ボクたちはグリフォン肉を美味しくいただくことに。


 最近、お肉ばっかり食べてるけど太らないかな?


…………………

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