「蹴らないでください」
映画っていいですよねぇ
あなたは映画、好きですか。
私はけっこう頻繁に見に行く方です。もちろん、劇場に。
だいたいは、レディスデーや、毎月一日の映画の日なんかで、割引になるときを狙っていきますけど、どうしても都合がつかないときは、モーニング割引のある映画館を利用します。
映画館にもよるんでしょうけど、うちの近くには「朝一番の上映回のみ1,100円」にしてくれる映画館があって、助かってます。
ところで、映画好きにはおなじみでちょっと楽しみなのが、上映前に流れる『上映中にしてはいけない』系映像。
ポピュラーなのは、頭のカメラで大切なものを盗んじゃうあの方とパトライト警官の熱い追いかけっこですけど、最近では、その時の上映作品の登場人物が作品をパロディしながら注意喚起とか、いろいろ工夫がされてますよね。
印象に残ってるのは、座頭市だったかな? マナー違反の人がぞくぞく斬られちゃうの。いやもう容赦ない。
えっと、なんの話でしたっけ?
そうそう、その『映画館でやっちゃいけない』事の中に、『座席を蹴らないでください』って、あるじゃないですか。のー・きっきんぐってやつです。
なんか、映画の内容に興奮して、自分の前の座席の背中をけっちゃう人、いるんでしょうね。飽きたお子さんとか。
今って、設備の充実した映画館が多くて、足元も余裕あって、前の座席になんか届かないことの方が多そうで、私自身は全然、座席を蹴られた経験はないんですけど。
なので、これは友人の話なんですけど。
その時は、レイトショーだったのかな? 加えて、映画自体がマイナー作品だったみたいで、ほかに観客はいなかったみたいなんです。
で、貸し切り状態なことに油断して、家でDVDでも見てるような気分で声を出して笑ったり、つっこみを入れたりしてたら、後ろの人が不愉快に思ったんでしょうね。
がつんって、座席を蹴られたんですって。
あら、一人で夢中になってて、途中で人が来たのも気づかなかったのかなって、友人は反省したそうで。
で、しばらくは静かに鑑賞してたんですけど、やっぱり盛り上がってくると、体も口も勝手に反応します。
すると、また蹴られる。
友人、最初は怯んでたんですが、何度も蹴られて腹が立ってきた。
そもそも、後から来て真後ろに来た方が悪いんじゃないか。こんなガラガラのシアター、ほかにも席はいっぱいあるのに、難癖をつけるために座ったとしか思えないって。
で、次に蹴られたときはさすがにむっとして、友人、自分の座ってる座席の背面を肘でガツッとやりました。文句があるなら直接かかってこい、くらいの勢いで。
そしたら。
ガツガツガツガツガツガツっ
友人の座っていた席以外の、シアター中の椅子という椅子が一斉に、後ろから蹴られてるような音を立てて揺れ始めた。
地震でも起きたかと、慌てて立ち上がって振り返ると、
シアターにいたのは自分一人。
椅子が蹴られる音に追い立てられるように、友人はシアターを飛び出したそうです。
「マナー違反はあっちなのに、逆ギレされるって怖いよね」って、友人は言ってましたけど。
怖いのはそこじゃないんじゃないかなぁ。
誤って短編で投稿してしまったものを引っ越しさせてきました。
元の方は数日中になんとかします。