Just the same
大切な人が死んでも、世界は勝手に進んでいく。
いなくなって当たり前にしたくなかった。これはただの意地だと思う。それでも、流れる時間に反抗したかった。
大切な人が死んでも、時間は変わらず進んでいく。人類が滅亡して最後の一人になろうとも、地球という惑星が存在し続ける限り、時間は止まる事を知らないのだ。それは半永久的に。
だから、人間の一生なんてたかがゴミくずのようなもので。二十年も生きなかった人間の時間なんて、それ以上小さい、細胞レベルのようなもので。
それでも、その細胞レベルで時間を残した人達を、忘れたくはなかったのだ。
二人が死んで二ヶ月が経った。世界はまだ、僕には眩しくて仕方がない。
たかが二ヶ月。されど二ヶ月。けれど二ヶ月。この間に、周りはいつの間にか前に進んでいた。
教室の片隅で笑い合う姿はどこにもない。廊下の先にも、あの階段下にも。どこにもいない。
僕は知らぬ間に、二人の面影を探していた。
一ヶ月も経てば、人は二人の事を過去の遺物とした。そうだ、そんな人間もいたんだと、そう言って忘れていくようになった。酷い話だ。あれだけ仲良くしていたのに。同じ写真に写っているのに。存在していたのに。
彼の幼馴染は葬式の時、泣き崩れた。
どうして早く言ってくれなかったのだとか、もっと一緒にいたかったとか、さよならも言えなかったなんて。僕の隣でずっと泣いていた。
僕は泣けなかった。
ただ、目の前で起こっている事が、何処か遠い世界に思えてしまって。
彼が死ぬ事は分かっていた。教えてもらった。止められなかった。何もできなかった。
さらには任された彼女すら逝ってしまった。
僕は彼に残された想いすら、受け継ぐ事が出来なかったのだ。
一人で見上げる屋上の空は綺麗だった。
フェンスに背を預け携帯をいじる。隣からはもう、返事は返ってこない。
「お前がいないサッカーはもう慣れたつもりだったんだけど、やっぱり続けたくない」
嘘だ。サッカーは好きだ。さっきは彼女の前で泣きごとを吐きたかっただけ。本当は続けるつもりだ。どこ行くのかは分からないけど、それでも、自分にはそれしかないのをよく分かっている。
彼は最後に言った。サッカーを続けろと。自分の好きな事を、忘れるなと。
その言葉通りに動いていくつもりだ。けれど、僕にはもう、あの頃のような情熱は残っていなかった。
好きになった女の子は大親友の彼女になった。
それで良かったんだと思っている。傍から見れば、二人はとてもお似合いだった。まるで、あそこだけ世界が違うような。今考えると、あれは死の匂いだったのかもしれない。
結局、彼女には最後の最期で振られた。スマートフォンに残された、自分へのメッセージの下書きが、それを物語っている。
『貴方にはもっといい人がこの先沢山見つかるはずだわ』
不覚にも泣いてしまいそうになった。気付いていたのだ。二人の恋が、最期までの時間をかけた恋だった事も。自分の想いが、ただの高校生が抱く思慕だった事も。
最初から、僕は彼に恋をした君に恋をしていた。




