大親友のお話
僕と君の365日は連載中ですが、こちらも不定期に上げていきます。
365シリーズの2番目、365日が終わった後で。
短編集になります。もちろんメインは365なのであしからず。
365の連載中に見て、365が終わった後に見て、二度楽しんで頂ければ幸いです。
よろしくお願いします。
君に会いたいななんて思ったんだ。
365日後の世界。いつかどこかの世界。
もう会えないなんて分かっていながらも。
僕はまだ、君と約束をした夢の続きが見たいんだ。
あの日より少しだけ背が伸びて。
あの日よりずっと大人になった。
だけど心のどこか。
どこか深い深い深淵の底で。
あの日よりずっと大人になった表情で。思考で。心で。
振り向いたら君に会えるんじゃないかなんて思ってしまう、僕の考えはまだ子供のままらしい。
君がいなくなってから、僕の日常は変わらなかった。
当たり前のように部活に行って、授業に出て。
時にはサボって空を見上げて。
ふと、隣に君がいると思って話しかけてしまうんだ。
「本当にあいつ馬鹿だよなあ、そう思うだろ--?」
『お前も十分馬鹿だよ』
なんて。
言葉が返ってこなくてふと横を見れば、僕の隣には誰もいないんだ。
人を鼻で笑うその声は、もうどこからも聞こえない。
そうやって僕は実感する。
ああ、僕の隣に今君はいない。
寂しいなんて思えなくて、だってここにはまだいるような気がして。
ただ胸にぽっかりと空いてしまったこの穴は、確かに君が存在していた証なのだ。
懐かしい公園でサッカーボールを蹴る。
ボールは返って来ることはない。もう永遠にない。
君からのパスはもう永遠にこない。
君を目指して始めたこの球技は、君が辞めた後でも続けていたこの球技は。
君に僕が挑む前にもう届かなくなってしまった。
「ずるいな」
そうだ、ずるいな。
きっと君は僕にこう言うのだ。
『嫌だよやりたくない、というかお前の方がうまいに決まってんだろ』
君に憧れて始めた僕が。
君に叶う事なんて有りはしないんだよ永遠に。
季節は沢山巡ってまた春になって。
僕はスーツ姿で街に出るのだ。
新しい街にはもう慣れて。
心から愛した彼女も出来て。
唯一無くした友の代わりは、まだどこにもいないみたいだ。
ふと、桜に支配された公園で。
楽しそうにサッカーボールを蹴る少年達を見る。
あの頃の僕らを思い出した。
君は元気でやっているだろうか。
僕が死ぬまで、待っていてくれるだろうか。
転生はまだしないでほしいな、僕は君に話したい事が沢山あるから。
美しい黒髪と、陽に浴びてきらめいた栗毛が、僕の視界の端を横切った。
慌てて振り返れば、そこには誰もいない。
ただ桜の花びらだけが舞っていた。
僕はこの日、君がいなくなった日振りに、透明な雫が頬に伝う感覚を感じた。
僕と君の365日後の世界で。