表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/31

大親友のお話

僕と君の365日は連載中ですが、こちらも不定期に上げていきます。

365シリーズの2番目、365日が終わった後で。

短編集になります。もちろんメインは365なのであしからず。

365の連載中に見て、365が終わった後に見て、二度楽しんで頂ければ幸いです。

よろしくお願いします。

君に会いたいななんて思ったんだ。

365日後の世界。いつかどこかの世界。

もう会えないなんて分かっていながらも。

僕はまだ、君と約束をした夢の続きが見たいんだ。


あの日より少しだけ背が伸びて。

あの日よりずっと大人になった。

だけど心のどこか。

どこか深い深い深淵の底で。

あの日よりずっと大人になった表情で。思考で。心で。

振り向いたら君に会えるんじゃないかなんて思ってしまう、僕の考えはまだ子供のままらしい。


君がいなくなってから、僕の日常は変わらなかった。

当たり前のように部活に行って、授業に出て。

時にはサボって空を見上げて。

ふと、隣に君がいると思って話しかけてしまうんだ。


「本当にあいつ馬鹿だよなあ、そう思うだろ--?」


『お前も十分馬鹿だよ』


なんて。

言葉が返ってこなくてふと横を見れば、僕の隣には誰もいないんだ。

人を鼻で笑うその声は、もうどこからも聞こえない。

そうやって僕は実感する。

ああ、僕の隣に今君はいない。

寂しいなんて思えなくて、だってここにはまだいるような気がして。

ただ胸にぽっかりと空いてしまったこの穴は、確かに君が存在していた証なのだ。


懐かしい公園でサッカーボールを蹴る。

ボールは返って来ることはない。もう永遠にない。

君からのパスはもう永遠にこない。

君を目指して始めたこの球技は、君が辞めた後でも続けていたこの球技は。

君に僕が挑む前にもう届かなくなってしまった。


「ずるいな」


そうだ、ずるいな。

きっと君は僕にこう言うのだ。


『嫌だよやりたくない、というかお前の方がうまいに決まってんだろ』


君に憧れて始めた僕が。

君に叶う事なんて有りはしないんだよ永遠に。


季節は沢山巡ってまた春になって。

僕はスーツ姿で街に出るのだ。

新しい街にはもう慣れて。

心から愛した彼女も出来て。

唯一無くした友の代わりは、まだどこにもいないみたいだ。

ふと、桜に支配された公園で。

楽しそうにサッカーボールを蹴る少年達を見る。

あの頃の僕らを思い出した。


君は元気でやっているだろうか。

僕が死ぬまで、待っていてくれるだろうか。

転生はまだしないでほしいな、僕は君に話したい事が沢山あるから。

美しい黒髪と、陽に浴びてきらめいた栗毛が、僕の視界の端を横切った。

慌てて振り返れば、そこには誰もいない。

ただ桜の花びらだけが舞っていた。


僕はこの日、君がいなくなった日振りに、透明な雫が頬に伝う感覚を感じた。



























僕と君の365日後の世界で。


























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ