要のカルテ
「自分が独りだなんて言ってるような奴は、寂しいって背中で泣いてるようなもんだ」
そう笑う大輔も、同じように寂しいって言っているように見えた。
そう言ったら、勘違いだと叩かれた。
寂しいんだ。
僕はそう感じた。
大輔はいつも独りだったから。
でも僕に何ができるだろう。
「要、お前の助けなんかいらないんだからな。
余計なことなんかするな」
僕が手を差し伸べても、大輔はそう言って僕を睨む。悲しい目で。
人の役に立つのって難しい。
僕は大輔の役に立つようにと言われてきたのに。
『僕の助けがいらないと言うなら、僕に手当などさせないでください』
「ウルセェなぁ。ロボットの癖に、そんな皮肉を言うのか」
ふん、と大輔は鼻息を荒立てるだけ。
その右手の拳はまた包帯を巻き直さなければならない。
大輔の手はいつも傷だらけだ。
僕はそんな手に薬を優しく塗り込む。
…もう喧嘩などしないで。
どうか彼を独りにしないで。
そう静かに祈りながら。
………自虐的に笑ってしまう。
この、僕が。
この機械人形の僕が。祈るだなんて。
…一体何に?
「要はロボットの癖に鈍臭いよな」
小馬鹿にしたかったのか、大輔は僕に向かって口を尖らせる。
その子供のような仕草に、我に返る。
『僕くらい高度なロボットは人間味も再現してるんです』
大輔は僕の返しに笑う。
「違いねぇ」
優しく手のひらに包帯を巻いていく。
痛くなりませんように。
彼の心が、痛みから守られますように。
機械人形でも、僕の願いは叶えられるだろうか?