陰謀と策略
「送り込めたか?」
「はい間違いなく、例のアレも取り付けました」
「これで奴らの情報は筒抜け、あとはどう仕留めるかだ」
「そうですな。これでコアが手に入ればあなたと私の地位も安泰です」
「これで私たちがこんな狭い世界から、広い世界を支配できる。その第一歩だ」
二人を見つめる何かに気づくこともなく、お互いの利益を語り合っていた。
気づけるはずもない、そこにあるのはただの壁なのだ、何者も潜むことはできない真っ平らな壁それ以外はなにもないのだから。
同時刻、ダンジョンにて報告が入る。
「聖女が来ました。例の彼女です」
「周りには?」
「います、抜剣はしていませんが殺気が漏れています。どうやら、人を真正面から殺す人たちのようです」
「なら彼らが入ってこれないようにしておくか、聖女が入ったら、透明防壁展開の後入口を塞いでいいぞ」
「了解です……間一髪でした」
扉が締まるその寸前、何かが防壁にはじかれる。即座にその何かは解析され、見ている画面に表示される。
「魔法だな、塞ぐ寸前で攻撃してきた。明らかにタイミングを計られているな」
「となると彼女に、接触されるとまずい人達もいるということでしょうか?」
「いや、邪魔だから消してしまおうという、ダンジョンを地位確保のための道具と見ている奴らとは違う教義優先の奴らだな」
ハテナマークを浮かべている葵に対して、遠谷は説明を続ける。
「教義に反することを述べる彼女が許せない、正義は自分たちにのみある。そういう考えの奴らだろう」
「ですが、なぜこのタイミングなんですか?」
「魔物に殺されたと証言すれば、それが通ると考えているんだろう。それにこのことを証言するのは自分たちだけだ。証人が全員グルなら、白だって黒だ」
「それは横暴が過ぎませんか?」
「しかし数というのは、いつだって横暴の塊だ」
「それが騎士のすることですか?」
「騎士が誇りを持つのは、同じ人間相手だけだ。彼らにとって彼女は、人ではない」
「ッ!…………聖女とコンタクトを取ります。あとは打ち合わせ通りに」
「ああ、頼む」
そうして作戦は決行された。