勇者の剣
だいぶお待たせしました。
勇者の剣編第二幕です。
「世間話をしている余裕がないので本題に入ります」
「勇者の剣というものを知っていますか?」
見たことがあるな資料で、内容は調査中と書かれていたが。
考えるのをやめて葵に尋ねる。
「資料は届いているか?」
「はい途中報告ですが」
「それでもいい、寄越してくれ」
「どうぞ」
「私は、見ないほうがいいでしょう。少し店の人と話してきます」
そう言って彼女は席を立って、この部屋の唯一の扉から出て行った。
「盗聴する気はないようですがいいのでしょうか?」
「聞かなくてもいいことなのか、先方に尋ねなければならないことなのか。どちらにせよ、おそらくは大丈夫だろ。」
テーブルの上に置かれた資料を読みあさる。
読んでいけば行くほどに、自分の表情が険しくなっていくのがわかる。
勇者の剣はある隠語だ。
しかし勇者は黒髪黒目ということから、十中八九日本人だろう。
ならば何故彼はこんなものを作り出したのだろうか?
効果は分からないが、ここまで再現されているのにも関わらず新しいものが作られていないところを見るに、おそらくこれ以上作る気はないと勇者本人が宣言したのだろう。
それにそれを作った際に残した資料も破棄されていることが分かった。
「当時の情勢が知りたいな。あるか?」
「こちらに」
差し出された資料に目を通しながら、資料を見比べていく。
時折分かる事実に顔をしかめつつ。
最終的に勇者の剣が生まれた経緯を推察することができた。
「なるほどな、強国の力を削ぐために使うつもりだったのか」
「しかし内部分裂により、その剣が振るわれたのはたったの一度きりです」
「それでも、まだ残っている剣によって自信をつけすぎた国は、剣の力を自分の力と勘違いして、慢心した挙句に剣がいつ暴発してもいいくらい劣化していることに気がついていないのか?」
「気がついていてもどうすることもできないのかもしれません」
「後者だと嬉しいんだが、持ち主の性格から見てどちらだと思う?」
「……おそらく前者かと、この国の成り立ちから見ても、この国の広がり具合から見ても、あの剣を傘に来た強行軍であることは間違いありません」
「聞くことはひとつだけだな」
手元に置かれていたベルを鳴らす。
ほどなく、店員と思しき人がやってきたので彼女を読んでくるように頼む。
なめらかに一礼すると、音も立てずにドアから出た。
「少々勘違いしていたのかもしれません。彼らは、今も見張っているのでしょう」
「気配すら感じさせずにこちらの機材にさえ反応するなく、か」
「間違いないでしょう。彼らはマスターの世界にいたとされる」
「そこまでにしておいてください」
入ってきたお姫様に止められる。
「諜報部隊は、秘匿情報ってことか?」
「そう捉えていただいて構いません」
「OK、わかったこの話はここまでだ。聞きたいこともわかっているんだろ?」
「そちらについての情報は、必要ないと言われると思いましたが」
「一番必要なものだ、当時の国境線……そこに勇者の剣は眠っている確率は高い」
なぜならば、それはもはや持ち出すことすらできないものだからだ。
人の業が生みしものは、今もまだ人の悲鳴を聞くために残されている。
そんなに続かないと思いますが、勇者の剣の正体に気づいた方がいますでしょうか?
できれば感想では、言わないでいただきたいのですが。
というかこれ、きっと丸々カットされそうなシロモノですよね。