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この度異世界で拾われました。  作者: れぇいぐ
竜使いとドラゴンの鱗(上)
6/9

#1 フィロ=クリチャード

「ノヴァも手伝いなさい!!」


何時もの様に朝を迎え、再開した宿は朝食の準備で忙しかった。


「起きなさい!!」


この幼女をこの宿に居候させ、早半月が立った。

居候しているにもかかわらず、<フェリオード>の手伝いをしないことにイツキも我慢の限界だった。


ノヴァの部屋、以前はエミルの部屋だったところのベットの上に掛け布団に覆われた膨らんだ部分引っ張り、あらわにした。


「う〜、嫌だ〜寒い〜おやすみ〜」

「三言ですませるな!!

ほら!起きて!!」

「う〜」


幼女はうなだれながら寒そうに体を丸めた。

それでもベットから降りようとしない幼女に怒鳴りつけるイツキ。


「居候させてるんだから少しは手伝え!!」


まるで朝起きれない子供を起こすお母さんの様になってしまっていた。

少年は軽く一呼吸して幼女の名前を叫んだ。


「ノーヴァー!!」

「きゃあぁ!?」


流石の魔王様でもイツキの怒声には驚き、目を覚ました。



「イツキ(にい)朝から凄い声出すね〜。」


<フェリオード>の静かになった食堂の一つの席に座りなが、横で伏せている愛犬(パートナー)、スノウの背中を優しく撫でている獣の耳と尻尾を生やした少女は食卓にグダーと上半身を倒しながら呟いた。

それに、洗い場で朝食の片付けをしているエミルは答えた。


「イツキは怒ると怖いからね。」

「ね〜。」


しばらくして、イツキがノヴァの後ろ襟を掴んで連れてきた、と言うよりノヴァを持ってきたと表現できる状態だった。


「おはようイツキ兄。」

「おはようフィロ。と言うか、来てたのか。」

「うん」


イツキは年下の少女とたわいも無い挨拶を交わし、ノヴァを食卓の椅子に下ろした。


「む〜。(わらわ)は偉大な魔王だぞ〜。」


ノヴァは起こされた不満があるのか、少し寝ぼけながらイツキの服を掴んでそういった。


「魔王の威厳なんて何処にも無いくせに。」

「本当だよね〜。ノヴァちゃん全く魔王なんかに見えないもんね。」


ノヴァがここに居候を始めてフィロが毎朝牛乳を届けに来るたびに会っているので、既にノヴァが魔王であることは知っているようだ。


まぁ、みんな半ば冗談としか思ってないだろうけど。


「そう言えばフィロちゃん最近うちに配達に来るのが早いね。」

「そうなんだ。

......実は最近早く配達するをモットーにしてるんだ!」

「へぇー、偉いね。」

「でしょ!」


何だろう、さっきの間は...


「それより!ノヴァ!早く起きろ!!」


イツキはノヴァの頭にコツンと拳を下ろした。


「いったーい!!

イツキは何をするのだ!!」


ノヴァは殴られた頭を痛そうに両手で抑えながら怒った。


「むー!最近妾に対する扱いが雑では無いか!?

始めてあった時は怪我した妾を背負ってくれるぐらい優しかったではないか!!」

「あれは<フェリオード(うち)>特有の初回サービスだ!

今はノヴァが居候してるんだから、働いてもらうぞ!」

「うー。」


反論出来ない幼女はうなだれるしかなかった。

イツキはさらに追い打ちをかけた。


「ほら!フィロを見習いなさい!両親の代わりに朝っぱらから仕事のお手伝いしてるんだぞ!」

「えへへー。」


フィロは照れ臭そうに頭を下げた。


「それに犬のスノウでさえ働いているというのに、魔王さんが働かないでどうするんだ!」

「魔王は働かないものなのだ〜。

それに最近泊りに来る客も少ないで無いか〜。」


確かに最近客が減っているのは確かだけど....


「それーとこれーとはー....」


イツキはこめかみを浮かべ今にも起こりだそうとした時だった。


「はいはい。私たちの朝食の準備も出来たから食べましょう。

フィロちゃんも食べて行くでしょ?」

「もちろん!今日の仕事もこれで終わりだし。」


今日の配達はこれで終わり?早すぎない....か?


イツキはフィロの発言に少し違和感を感じていた。


それもそのはず、フィロがフェリオードに配達に来るのはいつも最後の方らしいが...

その点に関しては特に問題はない、しかし気になるのは最近ここへ配達に来る時間が早いということだ。

一ヶ月前ほどまで僕らの日課が終わったお昼の時間に配達に来てくれるが、徐々に早くなり、今では少し遅い朝食の時間に届けに来てくれる。


それに....


「それじゃあ。いっただきまーす!」

「いただきます。」


朝食の置かれた食卓を3人の少女と一人の少年が取り囲んでいる。


イツキは下でのんびりとパンを食べているスノウの背中見つめた。


パンにこのノルベント森で最近採取できた甘い蜂蜜をかけ、美味しそうに食べるノヴァの横では、いつもならガツガツ食べるフィロはおらず、今は静かに何か思いつめたような顔を食べていた。


....本当にどうしたんだ?



どうも様子のおかしいフィロに尋ねてみた。


「ねぇフィロ?」

「ふぇ?」

「最近様子がおかしいけどどうしたんだ?」

「え、う.....

イツキ兄にはばれちゃうか〜

けど、大丈夫だよ。イツキ兄達には関係無いから....」

「フィロちゃん....」


やはり、何か異変が起きているのだろう....

けど無理に聞き出すのも可哀想だし今はそっとしておいてあげるか。


「ごちそうさまでした!!」

「速っ!」


誰よりも速く食事を済ませたノヴァは元気よく食後の挨拶をした。

今日はフィロがいつもより食べるのが遅いせいか、ノヴァの食事が速く感じられた。


「今日はわらわの勝ちだな!!」


ノヴァは競っていたのか、フィロに自慢げに勝利宣告した。


今日はって....いつも一緒に食べる時は競ってたから食べるのが速かったのか!!


ノヴァにそう言われ、フィロは負けたのにも関わらず、パクパクとご飯を口の中へ流し込んでいき、あっという間い食べ終えてしまったようだ。


「次は負けないからね!」

「臨むところだ!!」


そうか...

ノヴァなりにフィロを元気にさせようとしてくれていたのか....

けど.....



「はい!

朝食が終われば仕事だ!ノヴァ!」

「な、なに!?

わらわはまだデザートを!!」

「今日の〈フェリオード〉のメニューにはデザートを付いておりません!!」


僕はノヴァのパジャマの後ろ襟を掴んで管理者部屋から引きずりだしていった。


「イツキ兄とノヴァちゃん本当に仲がいいね。」

「そうね。」


食事を終えたスノウは眠そうに大きくあくびをしてぐったり倒れた。



洗濯、部屋の掃除を終えたイツキとノヴァは狩へ行くついでに能力の特訓を兼ねて〈ノルベント森〉へ向かった。


「ノヴァも目が覚めたらこの森で倒れていたって本当?」

「本当だ。なぜ此処にたどり着いたのかは知らんが、それ以外の記憶は覚えてる。」


初め僕に対する皮肉かと思ったが、詳しい情報を教えてくれているだけなんだよね。


「イツキは何も覚えて無いんだろう?」

「うん...元の世界にいた頃の思い出や記憶がほとんど無かった。

自分が何でこの世界に来たのかも全く分からないんだよ。」

「そうか。

ところでイツキ。」

「ああ、分かってる。」



2人は目の前にゆっくりと道を横切ろうとする生き物に眼を光らせた。


「「今日は鹿肉だ!!!」」


そんな叫び声に目の前にいた鹿は驚いて颯爽と逃げ出した。


「絶対に逃がさせんぞ!」

「もちろんだ!!」


2人は鹿に必死になるのもそのはず、この世界では鹿は貴重で、ましてやこの森で遭遇することはノヴァが自ら仕事をするくらい珍しい事なのだ。


だから絶対に!!


「イツキ!あいつ空へ駆けはじめたぞ!」

「な、魔物の鹿!?

確か以前魔力のある鹿は珍味だとか...」

「なおさら逃がさんぞ!!」

「ああ!!」


まるで階段を駆け上がるように走る鹿にノヴァは呪文を唱えて魔法を発動させた。

するとしたから黒い手のようなものが何本か空へ駆ける鹿に向かってうねうねと伸びはじめ、鹿の足を掴んだ。

掴まれた鹿も必死に逃れようと空中で暴れ、何本かの黒い手を振りほどいた。


「イツキ!わらわはこれで一杯一杯だ!とどめを!」

「分かってるよ!!」


イツキはすでに鹿へと持っていた弓を構え、矢を装填して弦を弾いていた。


この矢に自分の魔力を込める....

この矢に命を吹き込むみたいに....


今にもノヴァの魔法をほどき切れそうな鹿へ向かって黒い矢は鹿の体の前に黒い魔法陣を浮かび上がらせ、そのまま一直線に鹿の体を突き破り、鹿にとどめを刺した。


「よし!」

「今日は鹿肉パーティだな!」

「だね!」


けど、本当に魔法は凄いな....


普通こんなデカイ鹿ましては魔物の鹿を倒すのにただの矢一本では倒すことはできない。

この魔法でなら敵に当たれば一瞬で息の根を止められるので、無駄な外傷を与えず獲物の血抜きが楽になる。


「うえ....」


イツキが鹿の首元をナイフで切り口を入れ、中から血がドロドロでてているのをノヴァは気持ち悪そうに見ていた。


「俺だってこんな事はしたく無いんだ...

鹿肉パーティのためだ我慢しろ。」


あまりのグロさに死んだ鹿を直視できていなかった。


そうだ、これくらい大きければ逆に余りそうだな...

ならいっそのこと余ったら客の朝食にしようかな。けど、それじゃあ逆に足りなくなりそうだな。


いろいろ考えているうちに血抜きが完了し、まず自分の体についた鹿の血を持ってきた万能布で拭き、次に鹿の体も軽く拭いた。


「はい、ノヴァ。」

「....」

「ノヴァ?」

「....は!ああ、分かった。」


いろんな道具を入れた麻袋をノヴァに渡し、自分は縛った鹿を背中に背負った。


「ノヴァ?」


先程から妙に静かになったノヴァが気になり声をかける。


「なんだ?」

「さっきからぼーっとしてるけど...」

「あ!そうだ!!」

「え?どうしたの?」


突然走り出したノヴァをイツキは少し出遅れたが、魔王といっても所詮小さな女の子だ、歩幅で追い付いた。


「なんだよ、突然走り出して...」

「思い出したんだ!!」

「何を?」

「わらわが飛ばされた時に倒れていた場所だ。」

「え?」


すると、辺りを見渡しても木々ばかりの場所から少し広い草原のような場所についた。


「ここだ!」


ここって...僕が


「わらわはここで倒れてたのだ!」


けど、どうして?

僕がこの4年間元の世界に戻るヒントを探すため、ほぼ毎日探しにきていたのに、この場所を見つけることは出来なかったぞ....


「イツキ?」

「え、ああ。

実はね...」


安らかで気持ちのいい風が吹く中、2人は草原に横たわっていた。

そして僕は、ノヴァに僕の事情を話した。

僕も〈カマストマード(この世界)〉の飛ばされた時にここで倒れていたこと、其の後すぐに普通の狼に追いかけられたこと。


「ははは!

それは災難だったな!!」


ノヴァは他人事のように笑ってそう言った。


「けどね、僕はそのおかげでエミルに出会えたんだ。」

「そうか、わらわもこっちに飛ばされたおかげでイツキに出会えたんだな...」

「何か言った?」

「にゃんでもない!」


恥ずかしそうにして体をイツキとは反対側に寝返りをうった。


「そうだ、ノヴァは何で〈ノルベント森(ここ)〉に飛ばされたんだ?」

「え...」


以前、ノヴァの過去を聞こうとしたが、その話になるといつも寂しそうな顔をするので「言わなくてもいいよ。」と言ってしまったが、いつまでも何も知らないままで居るのは不味いと思い、今一度尋ねてみる。


「...すまん。」

「まぁ、いいよ。やっぱ無理しなくていいよ!」

「だけど...だけどいつか絶対教える!!

だから....」

「うん、分かったよ。」


やっぱり無理して聞くなんてこと僕には出来ないや。



「さて、肉が腐る前に持って帰ろうか。」

「うむ。」


柔らかい草のベットから体を起こし、元の来た道を辿って....

あれ、確かにこっちがもと来た道のはず...


「あれ、やっぱり道を間違えたかな?」

「いや、こっち側であってるはずだぞ。

けど、やっぱり何かおかしい...」


元から木々ばかりの場所だから、目印をおいて現在の位置を分かるようにしているはずなのに...

それが見当たらない....


「一度戻ってみないか?」

「そうだね。」


ノヴァの意見に賛成し、振り返ってまた来た道を戻った。

しかしさっきの草原広間にはたどり着けず、まるで同じ道を何度も来ているような感じがした。


「前に進め....ってことか。」



元の場所に戻ろうとするより、先へ進む方が、同じ道を何度も回っているようには感じなかった。


20分くらい歩いただろうか、鹿一匹を抱えて歩くのはあまり鍛えていないイツキには辛いものだった。


「はぁ...はぁ...」

「だらしないぞイツキ。それでも魔王の眷属か。」

「麻袋さえ持ってくれないノヴァには...言われたくない...」

「だって重いじゃん☆」

「....」


ノヴァに対してここまで頭にきたのは初めてだ。


「あ、あれ。出口じゃないか?」

「本当だ!あ、ちょっと待てノヴァ!」


やっとの事でこの森から抜け出せることに喜んでいるのか、イツキの声を無視し、先へ走って行ってしまった。

イツキも重い荷物を抱えながらも追いつこうと必死になった。


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