#1 カマストマード
この章を3日間で。
「おいコラァ!!なんで俺らには朝食がねぇんだよ!!
なんだぁ?俺らが魔界のもんだからか!?」
「あぁん!?」
「そーだ!!」
エミルと僕が経営する宿屋〈フェリオード〉の食堂に色んな数名の宿泊客が朝食を召しているなか、3人組のゴブリンがエミルに向かって怒鳴りつけていた。
「ちょっと、あなたたちなんですか!?」
食堂に戻った僕は彼らの仲介にはいった。。
「んだてめぇ?」
一人のゴブリンがこちらを下から睨みつけてくるが、やはり小さいせいか威圧感などは感じない。
「ただの宿屋の主人ですが。」
答えた僕にもう一人のゴブリンがすぐに話しかけてきた。
「あぁん?
んならおめぇも分かってるだろォ?
宿の奴らは客を快くもてなすのがあたりめェじゃねぇのかぁ?
魔界とカマストマードとの平和協定が結ばれてる今、魔物だからって差別するってのかぁ?」
「そーだそーだ!!」
いちゃもんをつけるゴブリンにひたすら便上するもう一匹。
「しかし、あなた方は確か昨晩の夕食と1晩の部屋の貸し出しのみですよね?
朝食の分の金は無いから朝食は抜きでいいとおしゃっていましたよね?
それなのに朝食をよこせと言って断るのはおかしいですか?
あなた方はタダで飯を食おうと僕たちを脅しているんですよね?」
そう、敢えて朝食を食べている周りの人に聞こえるように話したため、周囲の目はゴブリンへの敵意のみだ。
そんな周りに圧倒され、ゴブリン達は焦り出した。
「な!客が食いたいって言ってるんだから出すのが当たりめえだろぉ?」
「そーだ!!」
「それになんだてめえ。みたところエルフでもなけりゃ何処の種族だぁ?
そんな見ず知らずの種族のような奴が宿屋」
この〈カマストマード〉という世界もちろん、では僕と同じ種族は存在しないようで、エミルのようにエルフだったり僕から見て何かしらの特徴がある種族がこの世界では当たり前なのだ。
しつこいゴブリン達に僕は冷静にあることを提案した。
「じゃあ、ゴブリンさんたち。」
「なんだぁ?」
「丁度昨晩、二階に役所の者が泊まっておりますので、呼んで来て僕たちの話を聞いてもらいますか?
「このフェリオードという宿は」と直接伝えてもらってよろしいですか?
ゴブリンはルールの守れない悪い種族と思われるだけですけど。」
ゴブリンは確か魔物に近い魔族だから、カマストマードの人族とも交流が必要とされるはずだ。
〈魔界〉のものでも、〈カマストマード〉に来てしまえば役所の人には逆らえないはず・・・・
「っぐ。役所の奴がいるのか。」
「なんだとー!?」
「どうするよ?」
所々で繋がっている〈カマストマード〉と〈魔界〉。
二年前までそれぞれ敵対していたが、魔界のトップに立つ者、いわゆる魔王が自らの座が後継者に譲ったことによって敵対する理由がなくなり、互いが協定を組むこととなった。
それによって、今ではこの〈カマストマード〉でも魔界に住む魔物などが住み着くようになり、度々宿屋に泊まりの来ることもあった。
まだ此処に来て2年しか経っていなかった僕にとっては恐ろしいことだった。
ここに来て、簡単な〈魔物〉程度なら見たことあるが初めて〈魔界〉という存在を知り、そこから〈魔族〉や〈妖族〉などという〈魔界〉の世界の住人が泊りに来ることは初めてだった。
その時はある程度此方の言葉を話すことも出来るようになり、その相手がたまたま優しい魔物だったのでなんとかやり過ごせたが、今のこういうゴブリンなどが来た時は大人しく従うしかなかった。
「ぐぐぐ・・・・」
兄貴ゴブリンはしかめっ面をして、走り去った。
「逃げるぞ!!」
「そ、そーだ!!」
「あ、待ってくれー!!」
ゴブリントリオを宿屋から出て行き、〈鋼鉄の森〉の方へ逃げて行った。
それを見届けていた食堂にいた数名の宿泊客は再び食事を続けた。
「エミル・・・いつまでも黙ってないで言い返しちゃえよ。」
「・・・・うん・・・」
一番初めにこういうことがあった時もそうだった。
いつものエミルならばあんな奴ら言い返すなり魔法なりで倒せるはずなのだが、魔界の魔物を相手にするとトラウマが頭の中で蘇り、まともに相手にすることができなくなるらしい。
もちろん当時、僕はエミルに頼りきっていたのでどうすることもできなかった。
けど、今ではこの世界の言葉をほぼ使えるようになり、何とかやり過ごせるようにはなった。
エミルは目を細めて、僕に言った。
「けど、またあんな嘘ついちゃって・・・・」
「こうするしかないじゃないか。」
そう、取り締まったりしてくれる役所の人が泊まっているのは嘘だ。
宿泊客の役職をむやみに聞いてはいけないのが宿のマナーなので、誰がなんの仕事をしているか分かるはずがない。
そもそもこの宿に泊まる客も多くはないので、二階の部屋を貸すことは滅多にない。
けど、こうするしかない・・・・
僕は魔法が使えるわけじゃないし、魔物を倒せるほどの力を持っていないのだから、こうやってやり過ごすしかない。
「ご馳走様。」
しばらくして食事を終えた宿泊者が増え始め、食器の後片付けにまわった。
食堂がほとんどからになったところでエミルはチェックアウトの人を待つため、受付に向かった。
ここの宿は一晩ずつでしか泊まることが出来ないので、前日の夜から昼前までしか部屋は貸さず、それ以外の時間は食事の準備、宿泊者を受け入れる準備などがあるため強制的にチェックアウトさせる。
二人で経営していくにはこうしなければならない。
食器を全て洗い終わった僕はエミルのいる受付に向かった。
「もう客は居ない?」
「んーっと。」
エミルは後ろの壁に掛けられた部屋の鍵を数えて答えた。
「後108号室の人がまだね。」
「うーん・・・・もう10時過ぎてるしなー・・・・呼びに行ってくるよ。」
「ありがとうイツキ。」
僕はエミルのお礼の言葉に少し満悦しつつ、まだチェックアウトをしていない108号室の宿泊客を呼びに行った。
108号と描かれたプレートを貼られたドアの前で立ち止まり、トントントンとテンポ良くノックした。
ノックしてすぐに中から「は〜い。」
返事が返ってきた。
「あの・・・・すみません。
そろそろ・・・・・」
「あー、はいはい。ごめんね今片付けに終わったから。」
そう言って向こうから扉を開いた。
扉の先には顔を隠すようにフードを被った僕より背の高い客がリュックを背負って立っていた。
「ごめんね、ちょっと資料を散らかしちゃって。」
客は頭を片手でかきながら申し訳なさそうに謝ってくれた。
少し情けなさそうな声だが、男性の声だな。
後は・・・・資料とか言っていたし研究者か何かか・・・・・
「いえ、〈フェリオード〉の宿泊制度を解っていただけてありがたいです。」
「いやー。それにしても君ってどこの種族のものなんだい?」
「あ、えーっと。」
時々ここに泊まりに来る人は僕を見かけると同じ質問を投げかけてくる。
僕はこの世界に存在している種族にはどれも当てはまらない特徴を持っている。
肌の色や大体の容姿はエミルのような〈エルフ〉に最も近いが、耳の形が違う上に髪の色が金色系でなく黒なのでまた違うのだ。
僕はこの四年間で思い出せたこととして、元いた僕の世界では〈エルフ〉や〈獣人〉、〈ドワーフ〉といった種族なんて存在しておらず、ましてや〈魔物〉何てものはありえないかった。
それらは僕の世界にとって、作り物語などで取り上げられる架空の存在でしかないなかったのだから。
もしもそれらの種族も存在する世界であれば、僕は〈人間〉と呼ばれるのだろう。
しかし、この世界の人達に言った所でこの世界の住人は〈人間〉という言葉も知らないのだから信用されない。
「僕はエルフの間で生まれたのですけど、遺伝子異常によってこの体になったんだと思います。」
「ほ〜面白い・・・じゃなくて、そうかそうか、君も大変だね。
今朝も大変だったろう。」
(今面白いって・・・)
男性は僕の頭を掻き毟るように、手でぐちゃぐちゃにした。
「君、今朝は凄いものを見せてもらったよ。
ゴブリン相手に手を出さずに追い返すんだから。」
「は、はい・・・」
僕は一歩下がって頭を掻き毟る手を振りほどいた。
「君の名前は?」
「え?」
宿泊客に名前を聞かれるのは初めてなことで、少し戸惑った。
特にこれから関わるわけでもないから教えなくてもいいのに、つい口が滑ってしまい教えてしまった。
「そうか、イツキくん・・・か。また会う機会があるかもな。」
それはまた泊りに来るってことかな?
泊りに来てくれるのはありがたいけど、時間を守って欲しいものだ。
「じゃあ、鍵を持って受付に行けばいいのかな?」
「あ、大丈夫です。
このまま僕が部屋を掃除するので、受付に一言行ってくれればいいです。」
「そうかい、ご苦労様。それじゃあはい。」
男性は僕に何かを握った手を差し出した。
何かなと思いつつ、その握られた手の下に自分の両手を構えた。
そして、男性の手から落ちたものは15ピール銅貨一枚。
この国の通貨で、3番目に価値の低いコインだ。
これ二枚で小麦のパンが一つ買える。
これは、宿泊代というわけではなく、いわゆるチップというものだ。
このような宿屋ではチップがもらえる事は稀で、嬉しくなってお礼を言ってしまった。
「あ、ありがとうございます!!」
「いやいや、それはこっちのセリフだよ。美味しい夕食、朝食をありがとうね。」
「それは受付の子に言ってください。」
「あ、そうか。まぁ、安心して泊まれたからありがとう。」
「そうですか、それは良かったです。」
「じゃあさようなら。」
「ありがとうございました。」
受付に向かう男性に少し頭を下げてそれから部屋の掃除に取りかかった。
(でるのは遅いわ、人の頭をかくわ嫌なところあるけど、チップをくれるなんて意外といいひとなのかな〜)
「ん?」
ベットのシーツを引っ張った時一枚の紙が落ちた。
それを拾ってその紙に書かれた文字を読もうとした。
やっぱ読めないや。
4年間でやっとここに住む人達と会話を交わせるようにはなったが、読み書きに関しては全く分からない。
・・・・じゃなくて、たぶんさっきの人の忘れ物だ!
早くあの人に渡さないと!!
シーツを籠に放り投げ、その紙をもって受付に向かった。
そこには既に男性の姿はなく、受付で鍵の確認をしていたエミルに尋ねた。
「エミル!さ、さっきの人!!」
「え?さっき出て行ったばっかだよ。」
「分かった!!」
まだ間に合う。
出入り口を出抜け敷地から出て、大きな道にたどり着き右左を確認した。
「・・・いた!!
すみませーん!!」
走りながら、その男性を呼んだ。
男性は振り向いてこちらに気づき、立ち止まってくれた。
「あれ?どうしたんだい?」
「はぁ、はぁ、こ、これ。」
僕は片手を膝に起き、息を切らしながら右手に持った紙を男性に向かって差し出した。
男性はその紙を見つめ、やがてそれが自分の物である事に気づき驚いた。
「あ。僕の大事な資料じゃないか。
わざわざ届けに来てくれたのか!」
「は、はい。」
「君はしっかりしているね。」
男性はフードて隠れた顔からニヤリと口を開いて、嫌がらせのごとく右手で僕の頭を掻きむしった。
僕はすぐにそれを振り払って軽く深呼吸した。
「すーはー・・・」
「いやー、迷惑ばっかかけてすまんな〜」
絶対に反省してないんだろうな・・・・
すぐに疑うのを止め男性に別れを告げた。
「では、お気をつけて。」
「ああ、ありがとな!」
男性は行こうとした道に歩き出し、背中の向こうから右手を上げ、かっこ良く去って行った。
「さて・・・仕事に戻らなきゃ。」
人を助けることができたことに満足出来たのか、鼻歌を歌いながら〈フェリード〉に帰った。
〈フェリード〉の敷地に入ったところでエミルがポンプから水を汲み上げているのが見えた。
帰ってきた僕に気づいたエミルは少し心配そうに聞いてきた。
「急いでたけどどうしたの?」
「さっきのお客さんの忘れものを渡しに行ってた。」
「そう。ありがとう。」
「じゃあ急いでシーツ集めてくるね。」
「よろしく。」
彼女は洋服やシーツを洗濯するため、せっせとタライに水を汲み続けた。
僕はその洗濯物を集めてくるのが
一つの仕事。
客が泊まった部屋のシーツを全て集めたところで1度エミルの元へ渡し、次に自分たちの洗濯物を取りに管理人室の部屋へ向かった。
風呂場の入り口に設置された溝に洗濯するものを溜めており、それを一つずつ籠に入れていく。
この仕事を任せられて4年経った今でも慣れないことがある。
こっちの世界で普段着ているエミルお手製の僕の服などは平気なのだが・・・・
「・・・・下着・・・・」
今は家族の様に一緒に暮らしているが、エミルは本当の家族なわけでは無いし、別に付き合っているというわけではない。
けど自分の好きな女性の下着を目の前にして変な想像をしてしまうのに罪悪感、愚かさを感じどうも慣れない。
僕はすぐに手に取ったそれをカゴに投げ入れた。
しかし、まだ慣れないのは下着だけではない。
「・・・っう。」
次のものを手にとったとき、鉄の濃い血生臭い匂いが僕の鼻に刺激を与えた。
それは、白い布に大量に染み込んだ返り血。
彼女の調理用のエプロンだ。
昨日は客が結構いる方だったので、その分作る夕食の量も増え、必要な材料も増える。
この宿は基本材料は自給自足。
パンを作る小麦などはここら辺の土の事情で農作は出来ないので街に出て買うが、魚や肉は幸い狩る場所が遠く無いのでそこは自給自足だ。
その分街で売っているように既に処理されているわけでないので、自分で処理しなくてはならない。
なので、血が染み付いていてもおかしくないのだ。
僕はそれを下着と同じようにすぐにカゴへ投げ入れた。
「うえ・・・・」
全てカゴへ移し替えた所でエミルの元へ向かった。
「はい。よろしく。」
僕はまだシーツを洗っているエミルの隣にカゴを置き、洗い終わったシーツを一つ一つ物干し竿に干していった。
「ふぅ。」
本日全ての洗濯物を干し終えて腰に手を当て、一呼吸した。
うん・・・・やっぱり気持ちいいな〜
広い敷地に沢山並べられた物干し竿は白いシーツで埋め尽くされ、気持ちの良いそよ風に揺られまるで白く大きなカーテンがあるようだ。
「やっぱ気持ちいいね。」
僕の後ろではタライを片付け終えたエミルが後ろで手を組み、そよ風を気持ち良さそうに受け止めて呟いた。
僕はエミルに答えるかのように、自分で思ったことを口にした。
「うん・・・気持ちいいな・・・・」
洗濯も終わったことだしもっとこの風を受けていたい・・・・・
このまま寝転んで目を瞑って・・・・
そんな妄想をしている中、敷地の向こうから僕たちを呼ぶ声が聞こえた。
「お〜い。」
「あれって。」
「フィロちゃんね。」
柵の向こうでは、大きな犬に股がって大きく手を振っている少女がいた。
少女は股がっている犬に何かを支持し、柵を跳び越えてこちらに向かったきた。
「おはよう!エミル姉にイツキ兄!!」
「おはようフィロちゃん。」
「おはようフィロ。」
愛犬である〈スノウ〉に股がって元気に挨拶してくる短髪で活発な少女は〈フィロ・クリチャード〉。
〈獣人族〉の特徴である動物の耳と尻尾があり、何かしらの動物をパートナーとしている。
「今日もいい朝だね!」
「う、うん。そうだな・・・・」
朝からゴブリン相手にしなくちゃならないし、フード被ったおじさんには頭をくしゃくしゃにされるし・・・・
いい朝とは言えないな・・・・
「あれ?全然いい朝って感じじゃないよ?」
「実は今朝からいろいろあってね・・・・」
「ふーん、大変だったね。」
横でエミルが何か思い出したようで、フィロに向かって尋ねた。
「ねぇフィロちゃん。今日ってフェノちゃんが届けに来る日じゃなかった?」
「あー、そういえば昨日もフィロだったな。」
僕もすっかり忘れてた。
クリチャード姉妹は交代で毎日牛乳を届けに来てくれるのに、今日は2日連続で妹のフィロが届けに来ている。
「そうなんだなー。実はお姉ちゃん風邪引いちゃってね・・・・」
「あら、それは可哀想に・・・・」
「それで今日は私が配達に来たんだよ。」
フィロは愛犬のスノウから降り、座っていた鞍にかけてあるバックから大きい瓶に入った真っ白な牛乳を一本取り出した。
「はい、今日の分ね。」
「ありがとうフィロちゃん。」
「はーい。」
「あ、そうだ。フィロちゃんこれからお昼のするんだけど一緒に食べていかない?」
エミルは手を合わせて提案した。
「え?本当に。じゃあご馳走しまーっす!!」
「じゃあ、支度してくるから待っててね。」
そう言ってエミルは先程受け取った牛乳瓶を抱えて裏口から宿に入って行った。
僕とフィロは並んで地面に座り込んだ。
「それにしても大変だよなぁ。
まだ若いのに親の代わりに毎日配達してるんだから。」
本当大変だろう。フェノは僕たちと同い年だけど、フィロは僕たちの3コ下でまだ子供みたいなもので、本当はたくさん遊んだりしたいんだろうな。
「いやいや。
お母とお父はもう年寄りみたいなものだし、私だってもう大人だよ!」
ごめんね、子供みたいとか言っちゃって。
「それに、スノウと一緒に配達するのも楽しいし、ほぼ毎日イツキ兄に会えるからいいもん。」
「そうかそうか」
僕はこの世界の人に受け入れられている喜びにフィロの頭を撫でて表現した。
フィロは気持ち良さそうにしてくれている。
その隣ではスノウも地面に横たわって気持ち良さそうに寝ていた。
「ねぇ、イツキ兄。」
「ん?なんだい?」
「またしていい?」
「・・・・はぁ、いいよ。」
僕はフィロがくる度にしてくることに大分慣れて、気にしないいようになってきてしまった。
「やった!」
フィロは僕に正面から抱きついてきて、肩の上に顔を乗せた。
「クンクン。」
軽いな・・・・
数秒経ってフィロは僕から離れて気持ち良さそうに言った。
「うーん!やっぱり面白いなー!」
僕にもよくわからないけど、フィロは僕の匂いを「珍しい匂い」といって面白そうに嗅いでくるのだ。
やっぱりこの世界じゃない匂いでもするのかな?
「やっぱイツキ兄好きだよ!」
「そうかいそうかい。」
僕はまたフィロの頭を撫でた。
やっぱり僕はフィロを子供・・・いや妹のようにしか思えないな。
「フィロちゃーん。イツキー。準備できたよー!」
裏口の隣の窓からエミルが顔を出して僕らを呼んだ。
「それではいっただっきまーす!」
「「いただきます」」
フィロは食卓に並べられた食事をムシャクシャと次々と口の中に放り込んで行った。
「フィロ、スノウを見習えよ。」
「え?」
食卓の横には受け皿に入った食べ物を静かに食べているスノウがいる。
「こら、スノウ。せっかく作ってくれたんだから残しちゃ駄目だよ!」
「いや、違うだろ。もっとゆっくり食べなさいってことだぞ。」
「大丈夫大丈夫!!・・・・っう゛!?」
「ほらー。言っただろう。」
苦しそうにしているフィロにエミルは優しくぐ水の入ったグラスをあげた。
フィロはすぐそれを受け取り口へ流し込んだ。
「ふぅー!死ぬかと思った〜。」
そう言ってすぐに食べ物を口に放り込むフィロをみて僕とスノウはため息をついた。
「フィロちゃん。お代わりもあるからね。」
「ほひはぼう!」
「jこら、口の中に入れたまま喋らない!」
本当に子供なんだから・・・・・
食事を終えたら、フィロは「まだ配達が残ってるから!!」といってすぐさまスノウに乗り、何処かへ言ってしまった。
「それじゃあ夕食の材料をとってくるよ。」
「分かった。いつもの準備しておくね。」
これから材料である肉を確保するため、狩にいく用意をした。
「はい、これ。ちゃんと魔力も込めといたから。」
「ありがとう。」
僕は麻袋にロープを入れ、弓と矢を持って僕の拾われた場所、〈ノルベント森〉に向かうべく、崖を登る階段を一段一段登って行った。