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越谷は軽く受け流したが、さいなまれているのはとても苦しいものだった。江島や須田、もう1人の友人、沢の前で、実際に発狂した姿を見せてしまったことがある。そこから来る安心感からか、江島と話す越谷の姿は、精神を患っているとはとても見えなかった。
「最近会ってないけど、枝里ちゃん元気?」
越谷は江島の彼女の名を口に出した。
「まあまあ。仕事辞めてからかな。落ち着いてる」
「自宅療養中?」
「フリーで稼いでるよ。会社に縛られてない分、気持ちが違うんだと思う。オレより稼いでんじゃないかな。そう言うお前の奥方は? まだまだ新婚ほやほやか?」
話を振られた越谷は、少しだけ頬を紅らめた。
「よせよ。もう1年経った。どんなであっても、生きてくのは大変だ」
「いいのか? オレんチ何か来てて」
「話してある。宜しく伝えてくれ、だと」
「そんな素っ気なくなるもんかい?」
江島は缶コーヒーを飲み干した。