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ほどなくしてドアを開けたのは、ジーンズにTシャツという越谷とさして変わらぬ恰好をした青年だった。歳も同年代のようだったが、髪は越谷よりよほどさっぱりとしている。無精髭がちらほらとしていたが、気の良さそうな顔立ちにはかえってそれが似合っていた。
「おうおう」
「どうもどうも」
挨拶も何も無く、意味のないことばを2人は交わし、江島は越谷を部屋の中に招き入れた。意識せずに背をかがめるようにして越谷はドアを通る。痩せているわりには身長がだいぶあるので、その仕草は「くぐる」と言うほうがふさわしいとも言えそうだった。
「とりあえず。ほい」
越谷は缶コーヒーを江島に放った。いつものことだからか、江島は取り損ねることも無く、危な気無くキャッチした。もう1缶投げる。
「須田の。冷蔵庫入れといて」
「んあ。サンキュ。のど乾いてた」
越谷もプルタブを引くと、
「ホントだったら、ビールにしてた」
「悪いね」
「下戸のお前に、付き合わせるわけにゃいかないからな」
缶コーヒーを飲みながら、越谷は何気無くワンルームを見渡した。タオルケットがぐしゃぐしゃになっている、ベッドがまず目に入る。仕事机も大きなものだった。キーボードの他に、業務用のタブレットが設置されている。あとはもう、散らかり放題だった。雑誌やら着ていたシャツやら、無造作もいいところに転がっている。本人曰く、
『どこに何があるかだいたい分かってるから心配ない』
そうだ。