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こんなところが、沢の自然なやさしさだった。平等に振る舞うやさしさは、友人として誇らしいものだ。そんな沢に、
「働き口は見つかりそうか?」
江島が訊いた。
沢は専門学校を卒業していたが、家庭の事情などもあり、今は働いていない。本人があまり触れられたくないことだったので、越谷や江島も、時折しか訊いていなかった。
「――それがなー。お前たちみたいに手に職無いし。まだ」
言い辛そうだった。正直なところ、沢は友人たちと会う以外は、引きこもりを続けている。終日、ゲームをするかライトノベルを読んで、過しているらしい。越谷たちも心配していたが、本人が動く姿勢を見せていないのに、無理強いするわけにはいかない。ただ今は、その様子を見守っているしかなかった。あまり言い過ぎると、意固地な部分も持ち合わせている沢の機嫌を損ねてしまう。友人として、それは避けたい出来事だ。
「『ハロワ』登録すれば?」
越谷も少し訊いてみた。
「――今は、ちょっと」
「そうか」
それより先は掘り下げなかった。ハローワークに登録しても、仕事が引っかからないと以前ぼやいていた経緯がある。一番苦しいのは沢自身だろう。他人に上手く説明出来ない、精神の病を持っている越谷にとってみれば、それは痛いほど分かった。