第2話 自己紹介では終わらない
自己紹介を済ませて、先生に言われた席へと着く。
窓側の一番後ろ、漫画などで良くある主人公や転校生が座る席。そこが今日から僕の席らしい。
「ぼくは横形湊だよ。お隣さん同士、よろしく」
「あ、うん。よろしく」
隣の席らしい彼女は声のトーンを落として軽い自己紹介をして手を差し出してきた。それに僕は答え、手を差し出し返して握手をした。
「お、ずるいぞ。俺も混ぜろ!」
「うるさいですよ戸田君!」
「なんで俺だけ!?」
「やーいやーい、先生にかっちゃん怒られてやんのー」
「横形さんもですっ」
「うぐっ」
「きしし」
なんだか賑やかなクラスだなと、この仲良さそうな二人と、それを見て笑うクラスメイト達を見てそう思った。
「じゃ、改めて。俺は戸田克義。好きなものは女、二に女、三にオシャレが俺のモットーだ。困ったことがあればいつでも頼れ」
茶髪のセミショートで、セットされているのかピンピンと立てている戸田君。耳にピアス、服装は乱れているがわざとなのだろう、ちゃんとオシャレしているように見える。
チャラい人なんだと一目でわかる。
「さっきも言ったけど、ぼくは横形湊。趣味は人間観察なんだ。ちなみに、かっちゃんとは幼なじみなんだ」
一人称がぼくの横形さんは普通の女の子に見えるけど、活発で元気な感じの明るい少女って感じかな。
「それで……」
横形さんは真ん中の席から一人女の子を連れてきた。
「この子がぼくの親友のまーるんこと、綾未麻瑠。って言っても知り合いなんだよね」
「よ、横形さんっ」
「あれ、知り合いってなんで……」
まだ何も言ってないはずなのに。
「言ったでしょ」え。「ぼくは人間観察が趣味なんだ」
そういうことか。
人間観察が趣味だから、洞察力が鋭いと。
「まーるんの目線がはるっちに行ってたからねぇ。丸わかりなのさっ」
「は、はるっち?」
「君の名前は悠人でしょ?だからはるっち」
「気にしないでくれ。こいつのこれは今に始まったことじゃないしな」
「う、うん」
「ぼくが誰をなんと呼ぼうがなんでもいいじゃない!かっちゃんの女ったらしっ」
なんだか変な人達だな……けど、なんか面白いな。
この人達がクラスメートだと思うと、なんだか自然と笑いがこぼれる。
「あ、はるっち笑った!」
「そりゃ誰だって笑うだろうが」
「けど、楽しそうに笑ったのは初めてだよね」
綾未さんに指摘され、少し驚いた。
「さすがまーるん。良く見てるねぇ~」
「ち、ちが……っ」
──キーンコーンカーンコーン
「お、チャイム鳴ったな」
「せ、席に戻らないとっ」
「うん、だね」
これからどんなことが起きるのか、心の海は密かに波打っていた。