１３
「うーん、駄目だ。一度にいろいろ考えると頭がこんがらがるよ」
僕は大きく寝そべり、深い深呼吸をして思考を落ち着かせた後、再び上体を起こした。
「一つずつ順番に、ゆっくり時間をかけながら考えてみよう」
最初に、第一のヒントから。
１：まず、小さい子達は家にお帰りなさい
「この『小さい子』が何を指し示しているのかが問題なんだけど……」
僕はもう一度、石版を読み返してみる。
・スライム
・ゴブリン
・マウス
・フラワー
・ラビット
・スパイダー
・フィッシュ
そして、ハッと気づいた。
「もしかして、『小さい子』って『小文字』の事なのかな」
僕は木の棒を使って土の地面に石版に描かれているモンスター達の名前を書き、彼らの名前から小文字を消してみた。
・スライム（スライム）
・ゴブリン（ゴブリン）
・マウス（マウス）
・フラワー（フラワー）
・ラビト（ラビット）
・スパイダー（スパイダー）
・フシ（フィッシュ）
次に、第二のヒント。
２：次に、重複は許されません。一つ残らず除去しましょう
「重複は許されないんだから……この中で二つ以上使われている文字を消してみよう」
重複しているのは『イ・ス・フ・ラ・ー』の五つだ。
・ム（スライム）
・ゴブリン（ゴブリン）
・マウ（マウス）
・ワ（フラワー）
・ビト（ラビット）
・パダ（スパイダー）
・シ（フィッシュ）
続いて、第三のヒントだ。
３：さあて、マミムメモはさようなら
「これはそのままの意味だよね、マ行の言葉を削除すれば良い」
・（スライム）
・ゴブリン（ゴブリン）
・ウ（マウス）
・ワ（フラワー）
・ビト（ラビット）
・パダ（スパイダー）
・シ（フィッシュ）
スライムが消えた。
そして、第四のヒント。
４：点々や丸もさようなら
「『点々』は『濁点』で、『丸』は『半濁点』だとすると……」
・リン（ゴブリン）
・ウ（マウス）
・ワ（フラワー）
・ト（ラビット）
・（スパイダー）
・シ（フィッシュ）
スパイダーが消えた。
第五のヒントだ。
５：左の反対、バイバイ
「左の反対は『右』だけど、『ミギ』はどれにも含まれてない……あ！ マウスの『ウ』ならあるぞ！」
・リン（ゴブリン）
・（マウス）
・ワ（フラワー）
・ト（ラビット）
・シ（フィッシュ）
マウスが消えた。
順調に名前が消えていく中、第六のヒント。
６：鶏に関係ないのは消しちゃえ！
「『ニワトリ』に関係がないんだから、この中の一語も含まれていないのは……フィッシュだ！」
・リン（ゴブリン）
・ワ（フラワー）
・ト（ラビット）
・（フィッシュ）
フィッシュが消えた。
いよいよ大詰め、第七のヒント。
７：じゃあ、ついでに鳥も消しちゃおう
「これはそのまま『トリ』を消せば良いよね」
・ン（ゴブリン）
・ワ（フラワー）
・（ラビット）
ラビットが消えた。
ラスト、第八のヒント。
８：最後、首を傾げる声を残すな
「首を傾げる時には『わ！』よりは『ん？』って声が出るよね。だから……」
・（ゴブリン）
・ワ（フラワー）
ゴブリンが消えた。そして最後に残ったのはフラワーだ。
「名前が消えていった順に並べ変えると……」
・スライム
・スパイダー
・マウス
・フィッシュ
・ラビット
・ゴブリン
・フラワー
「……この順番だ！」
僕はまずスライムの石版を手にとって扉に近づき、一番左側の窪みにはめ込む。続いて、スパイダー、マウス、フィッシュ、ラビット、ゴブリン、フラワーの石版も同様に扉へと埋め込んでいった。
全ての作業を終え、僕は扉から少し離れて成り行きを見守る。やがて、ゴゴゴと唸るような低音と共に、岩の扉が開き、その先の部屋の中心に階段が見えた。
「やった！ これで次の階に行けるぞ！」
胸に広がる喜びと共に、僕は意気揚々としたステップで地下二階へと駆け上がった。
