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 上にはどんな強敵が待ち受けているのだろうかと、僕は不安で仕方がなかったのだが、


「……あれ?」


 意外な事に地下三階はとても単純な構造だった。通路の代わりに石で出来た扉があって、その側に普段より少し大きめの立て札がある以外には何も無い。つまりは密室の小部屋だった。実にシンプルである。


 僕は扉と掲示板に近寄った。


「いつもより文字が沢山書いてある……」


 忘れないうちに手を触れて、僕は内容に視線を移した。




『ちょー重要な掲示板! その10』




『順調に地上へ近づいている愛しの君へ。


 地下三階、到達おめでとう!


 魚達の水上ショー、ゆっくり楽しめていたら幸いだよ。


 今回の説明は少し長いから、しっかりと頭に叩き込んでね。


 さて、この階には見ての通り、通路が存在しない。それだけではなく、モンスターも登場しないよ。


 この掲示板のすぐ近くに、扉があるのはもう知っているよね? じゃあ、その扉に七個の石版が順番にはめ込まれているのは気づいたかい?


 この扉は階段のある部屋へと続いているんだけど、開けるためには石版をある法則に従って並べ直さないといけないんだ。


 つまりは、パズルだね。謎かけだ。


 勿論、手探りでというわけじゃない。この掲示板の下の方に、法則に関してのヒントを載せてある。しっかり、正しい答えを導き出してね。


 さあ、問題を解いて地下二階へ向かおう!


 追記

 間違った並べ方をしてもペナルティーは無いけど、死ぬ事も出来ないからお腹が減った時は大変だよ。




 以下、法則に関するヒント


1:まず、小さい子達は家にお帰りなさい

2:次に、重複は許されません。一つ残らず除去しましょう

3:さあて、マミムメモはさようなら

4:点々や丸もさようなら

5:左の反対、バイバイ

6:鶏に関係ないのは消しちゃえ!

7:じゃあ、ついでに鳥も消しちゃおう

8:最後、首を傾げる声を残すな』




「……今度は、パズルかあ」


 ダンジョンっぽいといえば、ダンジョンっぽい気がする。


 扉に近づくと、立て札に説明されていた通りに、横一列に七つの石版がはめ込まれていた。石版にはイラストと名前が彫られている。左から順番に、


スライム

ゴブリン

マウス

フラワー

ラビット

スパイダー

フィッシュ


 となっていた。


「これって、今まで僕が遭遇してきたモンスターたちだよね」


 どうやら今は、地下十階から出現した順番で並べられているらしい。スライムとゴブリンに関しては同じ階層から遭遇していたが、どうやら強弱でスライムが一番左に収められているのだろう。


「それでこれを、立て札のヒントを頼りにして別の順番で並べ直せば良いんだよね」


 僕は石版を扉から取り外そうと手を伸ばす。少し重量があったが、意外に取り外すのは簡単だった。


 立て札の前に移動して、地面に座り石版を並べる。そして、もう一度情報を整理しておく事にした。




目的:石版をある法則に従って並べ直す


 石版に描かれているイラスト・書かれている名前


・スライム

・ゴブリン

・マウス

・フラワー

・ラビット

・スパイダー

・フィッシュ


 法則に関するヒント


1:まず、小さい子達は家にお帰りなさい

2:次に、重複は許されません。一つ残らず除去しましょう

3:さあて、マミムメモはさようなら

4:点々や丸もさようなら

5:左の反対、バイバイ

6:鶏に関係ないのは消しちゃえ!

7:じゃあ、ついでに鳥も消しちゃおう

8:最後、首を傾げる声を残すな




「石版の種類が七つで、ヒントは八つって事は、ヒント一つにつき一つの石版を指し示しているってわけじゃなさそう」


 僕は腕組みをして考え込む。


「なら、一体全体、どんな法則なんだろう?」


 ヒントだけをもう一度眺めたが、さっぱりわけが分からない。


 まず、第一のヒントについて考えてみる。


1:まず、小さい子達は家にお帰りなさい


「小さい子って、スライムかマウスかな? どっちかっていうと、ネズミの方が小さかったけど、スライムってなんか液状だしなあ」


 次に、第二のヒント。


2:次に、重複は許されません。一つ残らず除去しましょう


「重複って、ほ乳類は除くとか? でも、ゴブリンってほ乳類なのかな……」


 続いて、第三のヒント。


3:さあて、マミムメモはさようなら


「マミムメモ? 意味が分からないや」


 ひとまず置いておいて、第四のヒントに取りかかる。


4:点々や丸もさようなら


「……次、行こう」


 第五のヒント。


5:左の反対、バイバイ


「左の反対は、右だよね。バイバイって、どういう事だろう」


 第六のヒントへ。


6:鶏に関係ないのは消しちゃえ!


「なんで、鶏が出てくるのさ」


 第七のヒント。


7:じゃあ、ついでに鳥も消しちゃおう


「鳥なんて石版の中にはいないじゃんか……でも、鶏は鳥だ」


 最後のヒント


8:最後、首を傾げる声を残すな


「んー、首を傾げる声……?」


 僕はついヒントにつられて、首を傾げてしまった。現状ではさっぱり意味が分からない。


「なぞなぞとか、そんな感じのヒントなのかな」


 それからしばらく、僕は立て札のヒントと目の前の石版を交互に見比べながら、法則とやらを見つけだそうと必死で頭を巡らせた。


 しかし、一向に進展が訪れないまま、僕の腹がグゥという間抜けな音を立てる。


「お腹、減ったなあ」


 意識してしまった途端に、心なしか頭の回転が鈍ってきたような気がする。


「でも、頑張らなきゃ。餓死なんて絶対嫌だよ」


 気持ちを奮い立たせるために掲示板の追記を凝視し、僕は再び法則を見つける作業に取りかかった。






 その後、ずっと頭を悩ませた甲斐があり、僕はヒントに関して一つの事に気がついた。


「なんだかコレ全部、何かを『取り除く』ような言い回しばっかりだ」


 帰りなさい。除去しましょう。さようなら。バイバイ。消しちゃえ。消しちゃおう。残すな。


「このヒントに当てはまるものを消していけば、何か分かるかもしれない」


 でも、と僕は深い溜息をつく。


「ヒントの意味自体が分かんなかったら、どうしようもないんだもんなあ」


 未だ、文章が意図している事には気づけないままだ。


「……とにかく、考え続けるしかないか」


 絶えずに空腹を訴えている頭を無理に動かして、僕は両手で頭を抱えながらも、必死の思いでヒントの解読作業に没頭した。

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