第八話
語彙が無いために同じ表現が繰り返しでてます。
国語辞典を脳みそに移植したい気分です……
楽な仕事の筈だったのに。
男の頭にはそれしか無かった。
依頼は囮の男を捕縛しにやって来るセンターの異能者を逆に捕まえろ、という物だ。
今まで、センターの異能者を相手にしたことは無くとも、長い間傭兵稼業をしてきた自信がある。
カリエも相手をするという話であったし、何か有っても、こちらには切り札がある。でも…
「くそっ。まだなのか!」
話が違う。サポーターが何故こんなに強いのか。男の頭の中はそんな言葉で一杯だ。
今も自分達の攻撃を受け流し続けている少年に、異能を使っている素振りは無い。
なのに、息も乱さずに、ただたんたんと迫って来る攻撃を避け、払い落とし、時には蹴り返して他の石に当てるという危険な行為も、事も無げにやっている。
焦れったくなった仲間達が、痺れを切らして躍りかかっては一撃で昏倒させられる。
そんな状況と、少年が何処か感じさせる底しれなさとで男達はパニックに陥っていた。
そんな時現れた、自分達では及びもつかない強大な殺気と存在感に、背筋を凍りつかせながらもほっとした心持ちで注意を向けた。
そこには、ゆっくりと倒れていく少女の姿。
その光景に再度安心した時、(ん?)と思った。
なぜか息苦しいのだ。
呼吸が出来ない。いや、息が吸いにくい。
なぜかと疑問に思って周囲を見回すが、特に不審なものは見当たらない。
少年が目を見開いたまま立ちすくんでいるのは少々不気味だが、何をしているという風でもない。
思考している間にも、息苦しさは加速していく。
目が痛い。眼球がせり出してきているかのようだ。
男は半狂乱になって駆けだした。
あの少年が呼吸困難に陥っている様子はない。
――――――あそこまでたどり着けば
その一心で男は走った。
あと10メートルというまで走ったが、額に強い衝撃を受けてたたらを踏んだ。
透明な壁があって先に進めない。
壁をガンガンと殴りながら意味もなく叫ぶが、効果は息を無駄に吐き出したために、余計に息苦しくなるだけだった。
唐突に視界が真っ暗になる。
男が目覚めることは無かった。
モブ男視点です。