第七話
彼方は今も、目の前の男と水弾の応酬を続けていた。
後ろには、彼方と同じく敵を相手にしている良紀の気配がある。
良紀は大人数相手。
しかし、さっきは不意打ちだから危なかっただけで一人一人はけして強く無い。
良紀は発力が無い為に異能者にはなれないと言っていたし、この三ヶ月彼方の任務に手を出したことは無かった。
それでも、本気を出せば彼方と良い勝負になる位には強いと踏んでいる。
「っ!」
「ぼさっとしてんなよ。」
右大腿部に水弾が直撃し、彼方は吹き飛ばされる様に倒れた。
それと同時に、彼方の身を守っていた水球の大部分が只の水に戻り、バシャッという音と共に地面に吸い込まれて行く。
(……発力がもう少ない。決着…。)
そう考え、気力を振り絞って無事な左脚に体重を掛けて立ち上がった。
右脚の傷は貫通こそしていないものの、血管を多少傷つけたらしく、血が流れ続けている。
足下にはなぜか空の小瓶。
カリエの方も、警戒しているのか決着を付けようというのか、いきなり水弾のスピードが上がった。
一瞬ついて行けず五、六発、手や脚に擦る。
それでも負けじとこちらもペースを上げる。
両者とも、秒に数十発の水弾を相手に放ち、同時に自分に当たる直前に止めるという離れ業を披露している。
その時、ドンっという重々しい音が響き、カリエが後ろに吹っ飛んだ。
「なに…を……」
呻きながら上体を起こそうと試みるが腹部に重い衝撃を受けた為、それは叶わなかった。
縮こまって悶絶するカリエの側に、ザリッと靴音を鳴らしながら彼方が移動して来た。
殆んどの傷は掠り傷と言える程度のものだが、右脚の傷はまだ血が流れており、その脚を庇いながら立っている。その顔は、失血によって青白くなってはいるが、この場での勝者は間違いなく彼方だった。
「…水じゃ、無い。」
ぽつりと彼方が言葉をもらした。
それを聞いたカリエは不審そうに、
「何のことだ?」
と言った。
すると、カリエの目を真っすぐに見て答えた。
「……私の固有異能は水じゃ無くて、液体。………今のは……水銀。」
気が付くと、彼方の手には先程落ちていた小瓶。
しかし、今はコルクの栓が閉められ、中には銀色の液体が入っている。
「……予想で決めつけるのは…危険。」
そう告げると、拘束しようと腰のロープに手を伸ばした。
その時、一気に冷や汗が噴き出してきた。
後ろには巨大な殺気。
誰?と考えた所で、
彼方の意識はブラックアウトした。
センターの階級が混乱していたので整理しました。
下から、異能者が
十位、九位、八位、七位、六位、五位、四位、三位、二位、一位、特位
サポーターが
下級、中級、上級
です。ちなみに、彼方は四位で良紀が中級という事になっています。
こんがらがってすみません…orz
拙作を、今後もどうぞよろしくお願いします。