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第四話

「逃げてるのはカリエ・マラー、男だ。水操作の異能だから、彼方と似てるんだよな。」

「……四等級」


入学式の翌日、彼方と良紀は朝から寮の前に居た。

これから向かう任務の情報を確認しなおしていたところだ。


「ところで、何に使うんだ?それ。」


言いつつ指し示したのは、彼方の腰の位置に取り付けられている()だ。

すぐ取り出せるように纏めて留められている。

彼方はなぜそんなことを訊くのか、という風に首をかしげながら


「……捕縛するのに使わない?」


と言うが、それに対して良紀も同じ様な表情をしている。

しかし、すぐに合点がいった顔で言った。


「あ、持ってくのに使うのか。」

「?」

「お、もう九時か。んじゃ、そろそろ出発するか?」

「……うん。」


なにやら話が噛み合っていないようだったが、九時の鐘が鳴ったことでこの話は有耶無耶のまま終了となった。





森の、人気のない街道を二人は駆けていた。

走り始めて20分程経ち彼方が目配せをすると、すぐに気付いた良紀は小さく頷いて止まった。


「……どうやって?」

「…なにが?」

「………速い」


彼方が言っているのは今までの移動のことだ。

彼方は身体強化で人間の限界を超えた動きが出来るが、良紀は異能力を使わずにそれにについてきた。

それは、普通は(・・・)あり得ない。

そんな至極当然の疑問を、良紀は一言で片づけた。


「昔から鍛えてるからだろ。」


そんな良紀に、彼方は呆れを含んだ声で言った。


「見えないのに…………。」


彼方が言うように、良紀は鍛えているはずなのに、そこまで強そうな印象を与えない。

筋肉は付いているのに、どこか弱弱しく見えるのだ。


「ま、それも訓練の賜物だ。大体、昔から鍛えてるのなんて、彼方が一番知ってるだろ?」

「それにしたって………」

「そんなことより、敵の居場所は分かったか?」

「……一応」


話しながらも任務は忘れていなかったようで、北を指しながら200m位、と索敵CCの結果を言った。


「作戦はどうするんだ?」

「………正面から……罠が」


どうやら相手も、警戒しているらしい。

不意を突こうとすれば、逆に罠に嵌るはめになりかねないようだ。




「……行こ」


そう言って再び走り出した彼方を追って、良紀も走り出した。






二人が足を踏み入れた廃村は、殆んどの建物が残っている。

しかし人の気配は無く、荒らされた跡のある建物もある。

二人は、警戒しながら無言で、村の中心部まで歩いてきた。

その時、良紀に鋭く名前を呼ばれた彼方がバッと横に飛び退き、一瞬後、彼方が今までいた場所が轟音と共土煙に覆われた。

二人が臨戦体制で攻撃が放たれた方を見ていると、大柄の男が民家の陰から姿を現した。


「そっちのガキも良い反応すんじゃねーか。下級じゃ無いのか」


今良紀が着ているのは学園の制服。

サポーターである事は一目瞭然だ。


「右目から頬に掛けての傷痕。彼方、こいつみたいだ。」

「………ダーラのカリエ•マラー。…任務に依り、捕縛します。」


彼方が言い終わるかどうかのタイミングでまた、カリエが攻撃を放った。

しかし、彼方は避ける様子も見せず、ただ立ち止っていた。

良紀も何をするでもなく見ているだけだ。

そして、彼方に攻撃が当たろうかという時…………

彼方に当たろうとしていた水弾が止まった。


「同じ異能か。奇遇だな。」


カリエはまだ笑っている。

目の前の少女を倒すことなど容易だと思っているのだろう。


「でも、今度はそうもいかない…ぜっ!」


カリエの言葉とともに放たれた水弾は先ほどより大きく、多く、速い。

受け止め切れずに、彼方の全身が血に塗れることを想像したのだろうが、それは大きく外れた。

水弾は、またも彼方の目前ですべて止まっていた。

それだけでなく、止まった水弾は合わさって大きな水球となり、彼方の目の前で漂っている。


「ほう、案外やれるもんだな。」


そう言ったカリエの目の前にも、地面から集まってきた水球が漂っている。


「じゃあ、これはどうだ!」


その声を皮切りに、向かい合った両者へ向けて攻撃が始まる。

盾のように相手を守る水球を避けるように、曲線を描いて無数の水弾が飛び、相手に届く前に水球に取り込まれる。

両者の力はほぼ完全に拮抗していたが、良紀が行動する様子はない。

ただ、雨のように行きかう水弾を見ているだけだ。

しかし、不意に焦った様子で叫んだ。


「彼方!囲まれてる。逃げろ!!」


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