表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

第一話

「以上で異能者・準異能者統括育成第五学園の入学式を終了します。新入生は第二検査室で発力(はつりょく)強度の検査をして下さい。センター職員の方は職員証明証を持って第四講堂までお集まり下さい。」



当然長かった校長や来賓の話を聴き終えた良紀は、アナウンスに従って彼方と一緒に第一講堂を出た。

隣を歩く彼方との距離は50㎝位。これでも再会してからの3ヶ月でましになった。

周りの生徒たちも、元からの知り合いかは分からないが、殆どが2〜3人程で話しながら歩いている。

廊下の突き当りから、ほとんどの生徒は左へ曲がっていくが、十人程は右の方へと歩いてゆく。1人で歩いていた生徒はほぼ右へ折れて行った。

良紀たちもそれに倣って、右の通路へ足を進めた。


「思ったより少ないもんだな。」


歩きながら隣の彼方に声をかける。

3、40人は職員が居ると思っていたからだ。


「……奨励されてるだけだから。」


センターでは、十五歳の若い職員は一般常識を身に付けるために、一般科の授業もある統括育成学園への入学を勧めている。しかし、少しでも早く階級を上げたい多くの者は、わざわざ学校に時間を割くことはない。


「そうゆうもんなのか?ここなら、二位以上の異能者も居るだろ。指導を受けた方が上達は早いだろうに。」

「……任務を受けないと、階級は上がらないから。」


確かに、任務は8割方日を跨ぐので、学校生活との両立は厳しいだろう。

因みに余談だが、これらの会話中ずっと彼方は前しか見ていない。


「彼方はいいのか?」

「……四位になったばかりだから。」


それを聞いて合点がいった。

一般的に、四位から急に任務の難易度が上がると言われている。

四位をとってすぐ任務を受けるより、学園への入学の方が安全に実力を上げられるだろう。




そうこう話している中に講堂へ着いた。

第四講堂は、百人位は入りそうなフリースペースになっている。


「異能者はあっちみたいだ。俺はこっちだな。」


と、言いながら彼方と別れて左奥の受付に向かう。

その受付に座っているのは、どうやら教師のようだ。


「おっ!来た来た、三人目。これで最後だな。」


そう言って良紀を迎えたのは、金髪の20代位の男だった。多くの教師と同じようにスーツを着ているが、開襟の着崩した様子を真面目な教師と称するのは抵抗を覚える。


「俺は、サポーター育成科代表教師で上級サポーターの風見(かざみ)だ。よろしくな。とりあえず、職員証出してくれや。」


こんな所で教師やってていいのか?

とは思ったが、取り敢えず呑み込んで、自分の名前を告げつつ職員証を渡すと、驚いた様子で風見が言った。


「ほう。中級か……。さっきの二人は、発力持ちで下級だったぞ?」

「そういう先生こそ、発力無しなんじゃないんすか?」

「ど、どうしてそう思うんだ?」


どうも図星らしいが、それ以上追及せずに尋ねた。


「なんとなく、ってとこだ。じゃ、帰っても良い?」

「ちょっと待て。おまえ、誰かの専属に就いてるか?」


風見は、慌てて帰りかけた良紀を引き留めた。


「四位の水城彼方(みずしろかなた)の専属だ。」

「最後に一応あれ通ってってくれ。」


そう言って示すのは、幅二m。高さ三m程のゲートだ。

それは、異能発現力強度検査機F型だ。

ゲートタイプということは、異能発現力――――略して発力――――の大きさを調べる物ではなく有無を調べるもので、どんなにわずかな発力でも感知するが一定以上の発力は感知しないという代物だ。F型は最も検査範囲が低い。


良紀がそこを通っても、当然F機は反応しない。通り抜けた良紀はそれを一瞥すると、彼方がいる異能者用の受付に向かった。


異能者用受付では、彼方が半透明な銀色のドームの中にいた。異能発現力強度検査機S型、発力量を計るドームタイプの中で、普及している物より検査範囲が一段階高い。

そのドームを、外側から女性が操作している。良紀が近づいくと、女性がこちらに気がついた。


「どうしましたか?検査は彼女で終わりのはずよ。」


女性は、不審そうに良紀を観察しながら言った。


「俺は倉見ですよ。そこにいる水城さんの専属です。」

「そうだったの。わたしは異者教育科教師の二位異能者、泉よ。あと少しで終わるからもうすこし待っていて。」


泉は受け答えを聞き、一転してにこやかになった。


「水城さんは素晴らしい才能の持ち主だわ!彼女の専属なら、貴方もさぞ優秀なのでしょうね」


答えようと良紀が口を開いたところで、ピーッとブザーが鳴り、彼方がドームから出てきた。

すると泉は、どこかはしゃいだように彼方を迎えた。


「あら、終わったの?水城さん。少し待ってて下さいね。今結果を出しますから」


そしてドームのそばへ近寄ると数十秒の操作の後、紙を持ってきた。


「すごいわ、水城さん。発力値50000超えよ!さっきの人たちは全員1000台だったのに。こんな好成績、二年振りよ。」


嬉しそうに言いながら、50382と書かれた結果表を彼方に渡す。

受け取った彼方は、しばらくじっと結果を見ていたが、無造作に折りたたむと懐に仕舞った。

そして良紀を見て、


「行こ。」


と言うと、泉の方を向いてぺこっとお辞儀をして出口へ向かった。

良紀は、


「次の登校は一週間後よ。」


と言う泉に、彼方に倣ってお辞儀をすると、彼方を追って小走りで講堂を出て行った。





廊下に出てしばらく歩き、前を行く彼方に「どこに向かってるんだ?」と聞こうとしたとき、不意に彼方が立ち止った。

ぶつかりそうになって軽くのけ反った良紀に、彼方が「念話」と小さく言い目をつぶった。

念話とは異能者が共通に持っている能力(characteristics common  略してCC)で、ほかにも身体強化や索敵、念動力等がある。

効果の表われ方は発力量と熟練で決まる。


「……知り合い。昼ごはん一緒にって……。」

「そうか。で、どこでだ?」


随分急な話に少々面食らいながらも尋ねると、彼方はすたすたと歩き始めながら言った。


「この近くのレストラン。ここの食堂はまずいって……」


学園内の奴なのか。と思いながら、良紀も彼方の隣に並んで歩き始めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ