[第2話:8月18日 豚カツと給料日]
ガソリンもオイルも同じ。
よく考えたらそんな筈がない!というのが僕の答えだった。
その距離わずか20m。
信号が赤にかわり、僕はアクセルを緩めた。
その時ブルルル…と情けない音を出してエンジンが止まった。
「えぇっ!?オイ、嘘だろ?」
何度もエンジンをかけようとするが、なかなかかからない。
そうしている間に信号は青になり、後ろから車が、原付が、自転車が追い抜いていく。
焦りながら振り向くと、大型ダンプが接近していた。
あんなのにぶつかられたらたまったものではない!
「くそっ、かかれ!かかってくれ〜!」
思いっきりエンジンをかけた瞬間やっとエンジンがかかり、走りだした。
「危なかった…。」
このままでは危ない、と思った僕は帰りつくとまずバイク屋に行ってオイルを交換することにした。
「えぇ!?」
ガソリンスタンドでのおっちゃんの話をしたときのバイク屋のお兄さんの反応。
やっぱ問題だったんだ…。
よく陽に焼けたお兄さんは耳を疑ってか何度か聞き返し、半笑いで
「そりゃ問題でしょ。」
と言った。
とにかくバイクは一日預かってもらうことになり、その日は歩いて帰った。
その晩、定食屋でご飯を食べていた所に電話がかかってきた。
僕は丁度頼んだ豚カツ定食がきた所だった。
バイトの給料日まであと一週間だったが、いつもに比べると財布に余裕があったので少し高めの豚カツ定食を頼んだのだ。
電話の相手はバイク屋のお兄さんだった。
「バイク、見てみたんですけどエンジンのかかりが悪いのはオイルのせいじゃないみたいですね。部品が悪くなってるんで変えるのに5000円かかりますけど…いいですか?」
僕は急いで湯気をあげる豚カツ定食とむっすりと立つ定食屋のおやじを見比べたが、5000円くらいならと渋々承知した。
次の日、バイクが治ったという連絡がきた。この日が8月19日。給料日まであと6日。