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第4話

「部室にいる先輩っていつもアンニュイな顔してますよね」


 御上が部室で明日提出の宿題をやっていると唐突に後輩がそんな事を言ってきた。


「俺はいつもこんなんだと思うが?」

「えー前に見掛けた先輩はサブミッションかけられても元気にタップしてましたよ」


 見てやがったか、こいつ。

 ……まあ、ここや寮にいるとテンションが下がるのも事実か。


「部室で一人でいるとな、将来について色々な事を考えちまうんだ」


 背筋を伸ばして軽く深呼吸。


「経済は未だ低迷しているし犯罪は凶悪化と低年齢化の一途を辿ってる。

自分達の代表たる政治家も汚職や対立政党の批判ばかり。

朝、テレビを見ても暗くなるニュースばっかなんだよ。

俺自身も将来の夢とかなくてな」


 こんな事を他人に話しても仕方ないと思うが、誰かに聞いてもらいたくなる事もある。

 愚痴に付き合わされて申し訳ないと後輩の方に顔を向けると、


「えーと……」


 頬に指を当て首をかしげていた。

 もしかして聞いてなかったのか? という疑念が頭に浮かぶが、すぐにそれはないと打ち消す。

 こういう事をぞんざいにする奴ではない。


 御上がそんな事を考えていると、後輩は勢いよく机を叩いていつもの朗らかな笑顔を見せる。


「部活をやって嫌な事を忘れちゃいましょうよ!」


 こいつは将来への不安とかまったくなさそうだな。

 それとも、変な気を使わせたか。


「……ああ、そうだな」


 名前からしていかがわしく活動も不明瞭な部活だがこいつと一緒にいるのは割と楽しい。

 宿題は捷護にでも見せてもらえばいい。


「やるか、部活」

「はい! 来れない部長の為にも」


 奮い立とうとしていた気力が一瞬で萎えた。

 さて、宿題でもやるか。


「? どうしたんですか」

「いや、なんつーか、俺の「やるか、部活」で終わらせとけば綺麗に終わったんじゃないかってな」

「はあ。そうなんですか?」

「少なくとも俺のテンションが下がる事はなかった」

「ははあ~ん。先輩って部長が来ないから寂しいんですね? だから部長の名前が出たら……」

「それはない」


 全身に悪寒が走る。

 何故自分の周囲の人間は誤解するのか。

 御上は頭を抱えたい気分だった。

 あいつと男女の関係になる訳ないだろ。

 もしかして自分を陥れようとする秘密結社の陰謀ではないのか?


「ついでに言うと、あいつ、今日は学校には来てるぞ。補習があるから部室には顔出さないだろうが」


 なので明日か明後日には部活に出てくるだろう。

 つまり今から覚悟をしておく必要がある。

 その事を告げると後輩はひゃっほーい、と破顔する。


「じゃあ一週間の成果を見せましょう!」

「ん、ああ……ああ」


 成果といってもこの一週間は特に何もしていない。

 ただ部室でぐだぐだしていただけだ。

 が、後輩的には意味のある時間だったのかもしれない。

 そんな事を考えながら御上は宿題のノートを閉じる。



 こうして、彼等の日常はゆっくりと過ぎていくのだった。


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