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第8話 侵食体
異変は、3月の終わりに始まった。
蒼太がスキルの発現に慣れ、日常にささやかな充実感を取り戻し始めた頃——東京の各所で、奇妙な事件が報道され始めた。
渋谷のスクランブル交差点で、突然黒い霧が発生し、数十人がパニックに陥った。原因不明。
新宿御苑で、地面から異様な植物が生えてきて、公園が一時閉鎖された。当局は「環境異常」と発表。
そして——蒼太の通う学校でも。
ある朝、校舎の裏庭で、一匹の「それ」を見た。
黒い影のような生き物。犬ほどの大きさだが、形が定まらない。まるで闇を固めたような存在が、校舎の壁際にうずくまっていた。
蒼太は思わず【叡智の瞳】を発動した。
——視界に浮かんだ情報に、蒼太は血の気が引くのを感じた。
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名称不明
属性:闇
危険度:D
分類:侵食体——物語世界からの逸脱存在
備考:放置した場合、周囲の負の感情を
吸収して成長する
```
——物語世界からの逸脱存在?
蒼太が呆然としている間に、影の生き物は壁に溶け込むように消えてしまった。
その日から、蒼太の周囲で「影」の目撃が増えた。学校の階段の踊り場。塾の自習室の隅。電車のホーム。蒼太にしか見えない——いや、蒼太の力を持つ者にしか感知できない存在が、じわじわと増えていた。




