第4話 スキル発現
「お前、なんか変じゃなかった?」
模試の帰り道、健吾が不思議そうな顔で言った。
「数学のとき、すげえ勢いでペン動かしてたけど。あの問題、めちゃくちゃ難しかったぞ」
「……うん、まあ、なんか集中できたっていうか」
「集中できたってレベルじゃなかったろ。お前、途中から目が光って……いや、気のせいか」
蒼太の心臓が跳ねた。
「目が光ってた?」
「いや、光ったってほどじゃないけど。なんか、いつもと目つきが違ったっていうか。まあ、ゾーンに入ったのかもな」
健吾はそう言って笑ったが、蒼太は笑えなかった。
家に帰ってから、蒼太は自分の部屋で実験を試みた。ドアに鍵をかけ、カーテンを閉め、右手を前に出す。
——集中しろ。あの時の感覚を思い出せ。
何度か深呼吸をして、意識を指先に集める。あの温かさを、あの光を。
数分間、何も起きなかった。蒼太はため息をつこうとした——そのとき。
指先から、金色の光の粒子が舞い上がった。
「……!」
声にならない声を上げた。光は蛍のようにゆらゆらと揺れながら、暗い部屋の中で美しい軌跡を描いている。
蒼太は震える手で、光の粒子に触れようとした。指先が触れた瞬間、光はふわっと広がって——部屋中を満たした。
そして、蒼太の目の前に、文字が浮かんだ。
```
──────────────────────
スキル【叡智の瞳】が発現しました
──────────────────────
```
——スキル?
まるでゲームのステータス画面のような表示。半透明の金色の文字が空中に浮かんでいる。
```
【叡智の瞳】
対象の構造を直感的に把握する能力。
知識と理解力を一時的に強化する。
使用にはMPを消費します。
現在MP:30/30
```
蒼太は呆然とその文字を読んだ。そして、ゆっくりと本棚の一番下に目をやった。
『勇者エルドの冒険』。あの本の中に出てきた、賢者の魔法——「叡智の瞳」。
それが、現実に発現した。
「……嘘だろ」
蒼太の声は、暗い部屋に小さく響いた。
けれど、唇が——ほんの少しだけ——笑みの形に曲がっていた。
灰色だった世界に、確かに光が灯った瞬間だった。
---




