第19話 三つの過ち
泣き終わった後、蒼太は少し眠った。屋上のコンクリートの上で、凛が隣にいる安心感の中で。
目が覚めたとき、頭の中が不思議と澄んでいた。2週間ぶりに、霧が晴れたような感覚。
蒼太は自分の中を見つめた。これまでの失敗を、一つずつ。
——俺は、一人で全部やろうとしていた。
侵食体との戦い、勉強、母との関係。すべてを自分一人で抱え込んで、誰にも助けを求めなかった。それは「強さ」じゃない。ただの「意地」だ。
——俺は、力に頼りすぎていた。
スキルがあれば何でもできると思い上がっていた。でも、力は道具に過ぎない。それをどう使うか、何のために使うかが大切なのに、そこを見失っていた。
——そして俺は、大切なものの優先順位を間違えていた。
世界を救う前に、目の前の人を大切にしなければならなかった。母を。健吾を。凛を。自分自身を。
「勇者エルドの冒険」のクライマックス。エルドは竜王と戦う前に、仲間たちに言った。
——「俺は一人じゃ勝てない。でも、みんなと一緒なら、どんな敵にも負けない」
子供の頃は、ただカッコいい台詞だと思っていた。
今なら、その言葉の本当の意味がわかる。
蒼太は立ち上がった。
「白石さん」
「ん?」
「ありがとう。——俺、やり直す」
「やり直すって?」
「全部。まず母さんに謝って、健吾にも謝る。塾にも戻る。そして——侵食体のことも、ちゃんと向き合う。でも今度は一人じゃなく、みんなの力を借りて」
凛が微笑んだ。
「うん。それがいいと思う」




