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第16話 進級危機

 帰り道、蒼太は雨の中を一人で歩いた。左腕はまだ痛むが、病院には行けない。魔法で負った傷をどう説明すればいいのか。


 マンションに帰ると、リビングに母が座っていた。テーブルの上に、蒼太の成績表が広げてある。


「蒼太。座りなさい」


 母の声には、もう怒りはなかった。代わりにあるのは、深い悲しみだった。


「担任の先生から電話があったの。このままだと、進級も危ないって」


「……」


「何があったの? 教えて。お母さんに話して」


 蒼太は椅子に座ったまま、うつむいていた。何も言えなかった。言えるはずがない。


 母の目から、涙がこぼれた。


「お父さんが死んでから……私、あなたしかいないのよ。あなたが壊れていくのを、黙って見てられない」


 その言葉が、蒼太の胸を貫いた。


「……ごめん」


 それだけ言って、蒼太は自分の部屋に逃げ込んだ。


 ベッドに倒れ込む。天井が、滲んで見えた。


 ——俺は、何がしたいんだ。


 勇者になりたかった? 人を守りたかった? でも現実は——母を泣かせ、友達を傷つけ、侵食体にも負けている。


 力があっても、何も守れていないじゃないか。


 蒼太は枕に顔を埋めて、声を殺して泣いた。


 17歳の少年が背負うには、あまりにも重すぎる重荷だった。


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