表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レインドロップ  作者: uyu
1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/7

流れる。のを辞める⑥

――――――――



 「――只今、当ギルドでは新規の登録をお断りしております」

 意気揚々とギルドに乗り込んだ俺は、ギルドの受付嬢から開口一番にそう言われてしまった。


 えぇ……?

 親父さんに貰った紹介状とか、そんなの関係無くなった……って事?

 ダメ元で出してみようか。……そう考えもしたけど、登録自体やってないなら意味……無いよなぁ。


 「あの、いちおう聞いてみますけど……どうしても駄目?なの?」

 「申し訳ありませんが」

 ――駄目だな、これは。とりつく島もない。

 「はぁ……。分かりました…………」

 ギルドの外に出てへたり込む。

 ……酷く重い気分だ。

 これからどうしようかな……。いっそ、別の街のギルドとか……?

 うーん。

 いやでも、まだ自分の能力も把握出来ていないのに、そこまでの決断は難しいな……


 ……どうしよう。


 目を閉じて考えていたら、何かが足にガンとぶつかった。

 「痛っ!」

 「ん?ぶつかってしまったか、申し訳ない。だが君、そんなところに座り込んでいては危ないぞ」

 「あ、そうですよね。どうもすみません……」

 目を開けて移動しようと立ち上がり、迷惑を掛けてしまった人に頭を下げようと顔を見る。

 「ぅお……」


 「?……僕の顔に何か付いているかい?」

 「あ……いえ!どうもすみませんでした!」

 「いや。こちらこそ済まなかった」

 その人物はギルドの中に消えていった。


 ……なんだアレ。

 あんなイケメンが存在して良いの?なんかキラキラしてたんですけど。

 鎧も似合ってたなぁ。なんか某ゲームとかのそれみたいだったけど、イケメンは何着ても似合うんですね。……羨ましい。


 「はぁ…………。取り敢えず移動しよう」



 「おい、見たか?」

 「あぁ。……くく、良いカモ発見だぜ」



――――――――



 「よう兄さん」


 ……。

 この通り、人が少ないし……なんか薄暗いなぁ。


 「おい無視してんじゃねーぞ」


 ――っ!?

 視界が大きく傾く。

 いきなり肩を掴まれた……のか?


 「何シカトこいてんだよテメェ」

 そもそも気付きもしなかった……とは、とても言い出せない。

 男三人組……。こいつら、どう見てもチンピラだよなぁ……

 「兄さんよ。お前、随分と懐が暖かいみたいだよなぁ」

 男達の視線は俺の腰……に、提げている袋に注がれている。

 しまった……。金貨の入った袋を無防備にし過ぎたか。

 そこまで気が回らなかった……くそ。


 「俺らさぁ、ちょっと金に困ってんだわ」

 知らねぇよ。

 「なぁ!!」

 なんだよ、うるせぇよ。耳元で大声出すなよ。

 「貸してくんねー?大丈夫大丈夫。その内に返すから」

 「――そつけ」

 「あ?なんつった、今」

 あー……怖い。こういうの、苦手なんだよな。昔から。

 「嘘つけって言ったんだよ。ばーか」

 声が震えてるのが、自分でも分かる。

 血がどんどん冷たくなっていく感じも、……だけど汗が噴き出るのも。

 「状況分かってねーのかこの馬鹿は?……おいお前等、少し分からせてやれ」


 「がっ……!」

 リーダー格らしき男が言い終わる前に、横に立つ男から腹にパンチを喰らう。

 ……痛い、痛いってマジで。なんでこんな事されなきゃならねーんだよ。

 「殺すぞ。何、一発でへたってんだよおい。……なぁ!!」

 「――っ!?」

 頭に横薙ぎの蹴りを喰らって、一瞬意識が飛ぶ。

 理不尽な暴力。

 こんな事、昔にもあった様な気がするなぁ……


 「なんだおい?上等かましておいてコレかよ。テメェ本当に殺してやろうか」

 口の中に鉄の味が広がる。

 何発もパンチを喰らい、遂には腹の中のモノを戻す。


 身体中が、痛くて熱い。痛すぎて、気持ちが悪い。

 意識が朦朧とする。

 ……やべ、このままやられたら本当に死んじまうかも……


 「……も、かんべん、して」

 「あァ?聞こえねーよ」

 また、腹に蹴りを喰らう。……もう……あんまり、痛みを感じないな……

 「勘弁して、……下さい」

 「借りても良いよな?」

 借りる……?

 あ……金か。

 「はい……どうぞ」

 リーダー格の男が腰の辺りを弄る。


 …………。

 ……仕方無い、よな。

 本当は……本当に、渡したく、無かったよ。

 恩人に貰った大切なモノなんだから。

 奢ってもらった食い物も吐き出しちまってさ。

 でも……やっぱり。

 やっぱり。

 俺は、流されるままにしか……!



 「……?おい。なんだこの手は?」

 気付けば俺は、金貨を奪おうとする男の手を掴んでいた。

 ……どうして……だ?

 なんで俺は、こんな事……

 「離せよ、オラァッ!!」

 頭を思いっきり踏みつけられる。

 「ぐっ……うあぁぁあ!!!」

 割れる……割れそうだ……!


 …………でも……!

 「取りたい……なら、殺せよ……!」

 「……!?お前、何言ってるか分かってんのか?」

 「殺せ……!殺して、みろよ!!」

 なんでだろう。こんな事、一度だって考えた事も無かったのに。

 どうしても、渡したくないんだ。

 流れに……逆らってみたく、なったんだ。


 「馬鹿かこいつ?殺さねぇとでも思ってんのかよ」

 思ってねぇよ。

 「殺してやるよ……!!」

 頭蓋からミシミシと嫌な音が鳴る。

 思って……ねぇよ。殺さないなんて。

 自分から飛び込んだ世界だ。分かってんだよ。


 「だ、けど……よぉっ!!あ、あァア……!」

 「死ねよ……早く死んじまえよ!!」

 もう……っ!!

 「流されるままなのはっ、御免なんだよ!!!」



 本当に死ぬ……そう思った時。


 ――その瞬間、確かに聴こえた。

 何故か、今まで全身を襲っていた痛みさえ何処かに消え去った。




 (死なせない)


 だ、れ……?


 (だから指先で私に()れて。心配しないで、私が貴方を死なせない)


 触れる……。


 (そう……指先に意識を集中して……)


 なんだ?……身体の奥から、何かが湧き出るような……。


 (――ありがとう。これで……!)


 一瞬、何かと……俺の意識が、混ざった様な気がした。




 ――そこで、俺の意識は途切れた。



――――――――



 「ぅ……」


 痛っ……!


 ……たく、ない?……あれっ?

 全然痛くない……なんでだ?


 「まさか、全部が夢だった?……なーんて」


 ……そんな訳、ないよな。

 第一、目の前に転がる男達が如実に物語っている。

 全てが、現実だった事を。


 「じゃあどうして傷が……?……それに、あの時の声は……」

 なんだったん、だろうか。

 それに、この男達……。

 「これ、死んでる……よな」

 触って確認するまでも無い。見たら……分かる程に。

 「…………」

 なんだろ。あんまり……感情は動かないもんだな。

 死体を見るのは、そりゃ初めてって訳でも無いけど……流石に殺された人を見るのは初めてだ。

 「でも……。別に、何も思わないな」

 こいつらが悪人だから?そう、思っておけば……良いか。


 「時間……は、そんなに経ってないな」

 空に浮かぶ、元の世界に有った物よりも少し小さく見える太陽。

 その位置は、気を失う前とそんなに変わっていない様に思える。


 「おーい。さっき俺に話しかけてくれた……っていうか、助けてくれた誰かー?」

 勿論、返事は無い。

 何せ……見渡しても、人影のひとつも無いからな。

 「やっぱ居ない……か」

 ま。……居ないものは仕方無い。

 取り敢えず……移動しよ。

 ……こいつらは……このままで良いや。知ったこっちゃないし。うん。




 「――ひひっ。()()()()()見たのう。……どうじゃ?」

 「あぁ、驚きに驚いたぜ。()()()()()()

 「本当じゃったろ?」

 「……あぁ」

 「ひひっ!縁は形を成していく。大きい存在は図らずもデカいモノに引き寄せられる。そういうモンじゃ」

 「俺にゃさっぱりだが、相変わらず怖い婆さんだよ」

 「さて。確認も終わった事じゃし……あの兄さんに少しばかり助け舟でも出してやるかね。借りもあるしのう……ひっひっひっ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ