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レインドロップ  作者: uyu
1章

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5/7

流れる。のを辞める⑤

――――――――



 ――ぎゅるるる……


 「あー……腹減ったなぁ……」

 この世界に来てから恐らく丸一日くらいは経つが、その間、何も口にしていない事に今更ながら気付く。

 「今日は冒険者とかの話を聞いて回りたかったけど、まずは腹ごしらえだな」


 昨日みたいな屋台よりも、やっぱちゃんとした店で喰いたいが……。……お?

 「これは食い物屋、だよな」

 看板に肉と魚らしき絵が描いてある。

 ……よし、入ってみるか。

 暖簾を潜る。

 中は……カウンター席に、テーブル席。

 ここらへんの作りは、普通に見慣れた感じだな。


 「――らっしゃい!何名様で!?」

 人差し指を立てる。

 「ハイよ、一名様ご案内!」

 可愛い制服(かな?)を着たウェイトレスの女の子に案内され、カウンター席に座る。

 「さ、何にしやしょう!?」

 ……どうでも良いけど、なんでこんなちゃきちゃきなんだろ。そういやニーナからは関西弁も聞いたよな。

 「あー、そうだな……おすすめなんかは有るかい?」

 「あいよー!おすすめいっちょう!」

 まだ決めた訳じゃないんだけど。……ま、いっか。

 注文した品が来るまで、置かれた水を啜って待つことにする。

 そうしていると自然に、隣に座る二人連れの話が耳に入ってきた。


 「なぁ、聞いたか?例の話」

 「ん……どれだ?草原に出るって噂の人食いシマウマの事か?」


 なにそれ。

 シマウマが人を喰うの?めっちゃ気になる。


 「違う違う。ニーナ様の話さ」

 「あぁ……例の犯人はまだ捕まってないんだってな。くそ、俺達に出来ることが有れば何でもするのによ」

 「はっきりとした証拠が有る訳じゃないけど、十中八九……犯人はあの()鹿()()()だろ?諦めが悪いにも程があるよなぁ」

 「多分な。だけど尻尾を掴ませないあたり、しょうもない悪知恵だけは働くみたいだな」

 「違いねぇや!」


 ハッハッハ……と笑う男達。

 ニーナ……やっぱ予想通り、面倒な事に巻き込まれてるみたいだな。

 俺も、何か力になれたら良いんだが……まだ事情も良く知らないからなぁ……。あれは、カーンさんの気遣いだ。

 無関係である俺を、無闇に巻き込まない為の。

 だけど……いや、だからこそあの家には大きな恩がある。

 なんとか、力になりたいな。うん。

 と、いうことは……ここはやっぱり冒険者になるのが良いのかな?

 戦いとかは怖いけど、戦い以外にも稼げるってイメージが有るし。……勝手なイメージだけどさ。


 「あいよ兄さん、お待たせ!ウチのおすすめの煮込みだ!」

 ドン!と目の前に大きな皿が置かれた。

 肉と豆の入った料理みたいだな。横には米っぽいのが盛られている。

 へぇ……米、有るんだな。かなり嬉しい。

 「いただきます」

 スプーンで掬い、煮込みを口に運ぶ。

 おぉ、これ……多分豚肉だ。しかし豚肉特有の臭みも殆ど無く、にんにくの風味と程よい塩気があって旨い。

 「旨い、旨い」

 咀嚼しながら、米も掬って口に放り込む。……うん、合うな。食感は少しだけ硬めだけど美味しい。

 こんな感じのモノが有るなら、食べ物の心配はあまりしなくて大丈夫そうだ。よかったよかった。

 半分程食べ進めたところで、店主に話しかける。


 「なぁ親父さん。ちょっと聞きたいんだけど、冒険者のなり方って知ってるかな?」

 そう言うと、店主はなんとも不思議そうな顔をする。

 「あん?なんだ兄さん、ンな当たり前の事を……あっ、分かったぞ!もしや兄さん、よっぽど田舎の出だな!?それが街に出てきたばっかりってとこだろ、服装も変わってるしよ。どうだ、当たってるかい?」

 なんだかちょっと不本意だけど、ここは流れに乗っとくべきだな。

 「実はそうなんだよ。昨日もさ、宿すら見つけられない体たらくで……。田舎の村から冒険者を目指して出てきたはいいものの、ね」

 店主は何度も大きく頷く。

 「うんうん……!男一匹!故郷を捨てて、夢を追い駆けてるって訳だな!好きだぜそういうの!」

 おいおい、泣いてるぞ……

 「良いねぇ、青春だねぇ。こんちくしょう……!!俺の料理も旨いって言ってくれたしよ、嬉しいねぇ!おし、気に入った!おっちゃんになんでも聞いてくんな!」

 「あ、ありがとう……?いや、冒険者についてなんだけどさ」

 「あーあーそうだったなぁ、いや悪い!近頃忘れっぽくてよ!」

 「気にしてないから教えてもらえるか?」


 「おう冒険者な!兄さん、ギルドは知ってるかい?」

 ギルド、そして冒険者といえば……

 「いわゆる【冒険者ギルド】って奴かな」

 「そう!冒険者になりたきゃそこに行くのが一番()ぇえんだ。おぅそうだ、良けりゃあ一筆紹介状を書いてやるぞ」

 紹介状?

 「親父さん、元は冒険者かなんかだったのか?」

 「まぁー、昔ちょいとな!で、どうする?」

 そりゃ勿論。

 「お願いしてもいいか?()()は有ったほうが良いに決まってる」

 「よし来た!!ちょっと待ってな、紙とペンを持ってくるぜ」


 「――おい、マジか?まさか……」

 「あぁ。あの兄ちゃん随分と――」


 ……ん、なんだ?

 隣の二人組が随分とざわついているような……


 「おう、待たせたな!書いたぜ紹介状!」

 あれ?紙とペンを持ってくるって言ってた気がするけど、もう書いてくれたのか。仕事の早い親父さんだなぁ。

 「良いか兄さん。これを持って、この街で一番高い建物に行きな!そしたら兄さんは晴れて冒険者だこんちくしょう!」

 なんでこんちくしょうだよ。

 「はは……。いや、本当にありがとう親父さん。助かるよ」

 「良いって事よ、べらんめえ!!」

 出会ったばかりの俺に、なんでこんなに親切にしてくれるのかは分からないけど……悪い人じゃなさそうだし、これは素直に受け取った上で感謝しよう。


 残りの飯もかっ込み、ドン!とカウンターに置く。

 「いや旨かった、ご馳走様でした」

 紹介状をズボンのポケットに突っ込みながら立ち上がる。

 えーっと、伝票とかは……無いのかな?

 「親父さん、ご馳走様。いくらかな」

 「あぁん!?良い、良い!今日は俺の奢りだ!!故郷から出てきたばっかりなんだろ!?」

 「いやいや、ここまでしてもらってそれは流石に……」

 「良いっつったら良いんだよ兄さん!とっととギルドに行きな!」

 背中をバン、と叩かれる。

 ジーン……とする痛みは、だけど少しも嫌じゃない。


 「じゃ、じゃあ有難く。料理、美味かったよ親父さん。また来るぜ」

 「おう!今度は冒険者として、な!!」


 暖簾を潜って外に出る。

 なんだか気圧されたけど、素晴らしい出会いだったなぁ。



 「さて……と。一番高い建物は……」

 ぐるっと辺りを見渡す。

 ほぼ真後ろを向いた時、その建物は見えた。

 「あ。アレか」

 他の建物に比べて、頭二つ分くらい抜けたのが有る。

 「よーし、行くかぁ!」

 なんか色々あったけど、俺の異世界生活がやっと本格的に始まりそうだぜ!




 「――らっしゃい!……ん、なんだ。アンタか」


 「ひっひっ。馳走になりに来た客に向かって随分だね」

 「どうせツケだろうが!まぁいい、何にする?」

 「そりゃあカエルさね」

 「あいよ、カエル丼いっちょう!!」


 「ところで。儂の前に黒い髪をした客が来たろう」

 「ん?おう、なんだ知り合いだったのか?」

 「そういう訳でも無いんじゃがね。……そうかいそうかい。やっぱりねぇ」

 「なにがやっぱりなんだ?」

 「ひひっ。あの兄さんは面白いぞ……楽しくなりそうじゃ。……ひっひっひっ!」

 「相変わらず訳分かんねぇ婆さんだな」



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