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レインドロップ  作者: uyu
1章

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16/19

流れる。のを辞める⑯


 「――少し休憩にしようか」


 血吸蝙蝠に遭遇、退治した後。

 どうやらやっぱり俺の運というのは良くはないみたいで、結局は……四匹のゴブリンの他に数匹の蝙蝠にも出会した。

 その度にほぼ同じ戦法を使い、倒した。

 「はいっ」

 俺は既に体力の半分以上を消耗している体感なんだけど……

 対面の石に座るアクアには、疲れた様子はひとつも見えない。

 凄いな、この子……。


 「ふー……っと……そうだ、ポーションの残りを確認しておかないと」

 ここまでに相当量のポーションを消費してしまったし。

 えっと、残りの本数は……

 「ポーションが三本。解毒剤が二本……か」

 かなり使ってしまったな……。

 正直、かなり心許無い。

 辺り一帯からモンスターの気配がしなくなったからボスまで保つ筈では、あるけれど。




 ――休憩がてら、街で集めた情報を思い返し頭の中で改めて整理していく。



 ・ダンジョンについて


 ダンジョンでは、モンスターは無限に湧く。

 これは世界中何処のダンジョンでも不変のルールであるそうだ。

 例えばそこに生息しているモンスターを一掃したところで一定期間が経過すると、不思議とまたモンスターが自然発生的に湧くらしい。

 理由は不明だそう。……というか、誰もがそれを()()()()()思わないとか。

 モンスターが何から発生しているのかとか、俺だったら気になるけど……ま、そういうモノなのかな?

 ちなみに、ダンジョンボスもいつの間にかひとりでに復活するんだそうだ。


 ・モンスターについて


 色々と知って理解したが、どうやらこの世界に於けるモンスターというのは、元の世界でいう危険動物と然程、変わりは無いみたいだ。勿論、ここで言う()()とは人間(ヒト)や草食動物、家畜にとっての、だ。

 モンスターはダンジョンでなくとも出没する。

 街道や森、山、水中。基本的に何処にでも、だそうだ。

 但し、街中等に発生する事は無い。稀に侵入する事も無い事は無いが、本当に稀だそう。

 ……モンスターは魔力とか、なんかそういう訳分からんものから良く分からん原理で生まれるのかな……とか考えてたんだけど、どうやら違うらしい。

 魔力ってのは、空気と同じでそこら辺にいくらでも有るみたいだから。


 モンスターにも魔法を使う個体や種族がいる。武器を使う奴もいる。知能が高いのも。

 コレらはかなり重要な情報だ。知らないのと知っているのでは、いざという時に全く違ってくる筈。


 その他、雑多な情報も得た。

 金貨や銀貨、銅貨……それぞれの価値。

 一日の時間。これは元の世界と同じ、24時間らしい。……偶然にしちゃ、ちょっとアレだけど別に気にしない。

 一週間、一ヶ月、一年の概念。これについても同様。

 ……面白かったのは、人の平均寿命の話。

 病気や事故を除けば、この世界の人々は六十〜七十年は生きるそうだ。

 ()()()()()()()

 …………こんな事まで元の世界と同じ、だって?

 そんなのは……有り得るのか?

 ま……今考えても仕方無い事か。意味が有るのか無いのかも分からないんだから。



 忘れちゃいけないのは魔法についての基礎知識。


 ・魔法について


 俺が想像する『魔法』って言ったらやっぱりゲームとかのアレ。

 ファイア、とかそんなの。

 回復魔法だったり、破壊魔法だったり、エンチャントだったり。誰もがパッと頭に浮かぶだろうイメージと変わらないと思う。


 この世界【エスペランサ】でも、話に聞く限りはそのイメージと大きく乖離はしていなかった。

 火・水・土・風の四大属性。

 それに加えて光・闇の二元魔法。

 後はそれらに含まれない特殊魔法だったりの、個人的才能がもたらす能力。

 だけど、どんなに不思議な魔法だろうと、理不尽に思える能力だろうとも、属性という意味では基本はこれら六種のどれかに属するんだとか。


 そして、それらを【魔力】と呼ばれるエネルギーを用いて行使する。

 魔法名(トリガー)を口にする者もいれば、所謂『無詠唱』で魔法を放つ者もいるらしい。

 ここらは個人差で、性格で決まるのが殆どだとか。


 ……んー。……これはでも、分かる気がするな。スッと頭に染みた。

 ヒーロー気質な奴とかなら、技名や魔法名は叫びたいだろうし。そっちのほうが威力が出るんだろう。……その逆も然り、なんだろうな。

 俺はどっちかっていえば叫びたい気もするな。少しだけ気恥ずかしいけど……そのほうが力が入る気がする。


 で、肝心要の……俺の能力。


 ヴィトリッタに聞こうとしたんだけど、結局見つからなかったんだよな、あの婆さん。

 あの宿へと足を運ぼうともした。

 でも辿り着けなかった……ホント、どうなってんだろな。

 隠り世……だっけ?

 未だに、俺には理解不能だよ。


 仕方無いからギルマスに聞いてみたら


 「僕には答えようが無い。ただ一つだけ言えるのは、君のソレは魔法では無い」


 だ、そうだ。


 いやまぁ、魔力ってのが俺の内に存在しないんだからそりゃあ魔法じゃないんだろうけどさぁ。

 知りたい事はそうじゃないのよ。


 ……つまり、俺の能力がなんなのか。

 なにも分かんない。自分自身の事なのに。


 …………。


 ……ま、別にいっか。

 自分が分かんないとか、今に始まったこっちゃ無いしな。




 「――――アメトさん?」


 その声にハッとする。

 「あ、あぁ……どうかした?」

 多分、どうかしてたのは俺だけど。

 「随分、考え込んでたみたいだったので。……大丈夫ですか?」

 「あ……うん。問題……無いよ」

 いかんいかん……

 頭を、切り替えろ。


 「……モンスターの湧く周期の事を、ちょっとね。酒場のマスターの話じゃ、ここのモンスターは一度倒してしまえば三日やそこらじゃ復活はしないそうだから……」

 初心者向けダンジョンってのは言葉通りの意味なんだろう。

 

 クエストの期間は三日間。

 一日目の今日は大半を街での活動に費やした。

 手元の時計を見ればもうすぐに日を跨ぐ。

 初のクエスト。……余裕を持っていきたいから、二日目でダンジョンボスを攻略するのが理想……いや目標だ。

 「ここからは探索行動に専念出来る。だから、今日のところはこのまま睡眠を取って明日、本格的にボス部屋を探す」

 「わかりました!」

 アクアはそう言って、地面にゴロンと転がった。

 「……そういえばアクア、寝袋とかは?というか荷物とか持ってないよ、な」


 「えっ?」

 「えっ?……いや、野宿は流石に冷えないか……?小石とか散らばってるし」

 「慣れてますから!」

 慣れとは。

 「食い物も持ってないよな?俺の、分けようか」

 「慣れてますから!でもお気遣いありがとうございます!お水だけ貰いますね」

 えー……。

 目の前で美味しそうに水を飲む、一見普通に見えるこの子が壮絶な生活……いや、人生を送ってきたんだろう事は想像に難くないな……。

 人の事情を邪推するのは良くないけれど……

 その辺り、いつか本人に聞けたら良いな。


 「うん……じゃあ、とりあえず休もうか。起きたらボス部屋の探索だ」

 準備しておいた寝袋を取り出し、潜り込む。……なんか少しだけ、いたたまれないな……。

 「はいっ、おやすみなさいアメトさん」

 すぐに静かな寝息が聞こえてくる。

 …………。


 「……俺も寝よ」



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