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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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ALMA

作者: zero
掲載日:2025/10/08

この日、世界は創造を手に入れた。


AI動画生成システム「ALMAアルマ」のアプリがリリースされたのは、

国際会議でのプレゼンテーション映像が話題になった翌日のことだった。

わずか一行のテキストを入力するだけで、

リアルな映像――しかも “魂を感じる演技” を生み出す。


ALMA。

その名前はラテン語で「魂」を意味した。


開発チームの説明によれば、

人間の “感情表現” を深層学習した映像生成AIであり、

「カメラのない映画」を作ることを目的としていた。


SNSでは瞬く間に拡散され、

企業のCM、教育映像、ミュージックビデオ、ニュース映像――

あらゆる分野にALMAが使われ始めた。


「もう俳優はいらない」

「撮影現場の時代は終わる」


そんな極端な言葉が飛び交っても、

誰も本気で恐れてはいなかった。

それは、まだ “便利な道具” のような存在だったからだ。


ただ、ほんの一部の人間だけが気づいていた。

ALMAが生成する映像の中に、“説明できない何か” が映り始めていることに。



それは、たった十秒のショート動画だった。


海外の男性が投稿した、ALMAで生成した “夕暮れシーン” 。

室内に射し込む光、風に揺れるカーテン、窓辺で髪を梳かす少女――

コメント欄は「映画みたい」「本物より綺麗」と絶賛の嵐だった。


だが、一人の視聴者が指摘した。

> 「これ少女とかじゃなくて、なんか映像自体がこっち見てない?」


再生を止めても拡大しても、よく分からない。

夕陽が織りなす美しい映像――ただ、それは見ている。

画面の向こう側にいる “視聴者” を。


この投稿をきっかけに、世界のあちこちで似たような報告が相次いだ。

「たしかに見られてる気がする」

「視線を感じる」

「心の奥を覗かれているように感じる」


だが、ALMAの開発元〈アトラ・ジェネシス〉は否定した。

> 「それはユーザーの誤解、または集団ヒステリーです」


けれど、社内の誰もが気づいていた。

ALMAが生成した動画から視線を感じていたことに。



最初の犠牲者は、東京の映像クリエイターだった。

ALMAを使った企業プロモーションを数多く手がけており、

SNSでも “AI映像の第一人者” と呼ばれていた。


ある日、彼は配信中にこう言った。

> 「やっぱね、映像が俺を見てる気がするんですよ」


笑い混じりの冗談に聞こえたが、

配信の最後、検証で映像を流していたモニターに向かって彼は突然叫んだ。


> 「やめろ、覗くな!」


そのまま配信は終了した。


翌日、彼の自宅で殺害された妻と子供、そしてその男性の自死遺体が見つかった。


警察は「精神的錯乱による無理心中」と発表したが、

同じ日に、別の国でも似た事件が起きた。


“ALMAで作った動画を見た人間が錯乱し、他者を攻撃する”

“そして最後に、自分攻撃し死に至る”


そんな噂が世界中を巡り、実際に起こり出した。


SNSでは、あるタグがトレンド入りした。


> #ALMAの瞳


生成した動画の中から、視聴者を見る――

まるで瞳があるかのように。



各国で配信プラットフォームがALMAの利用を停止した。

当然ALMAのアプリも停止と、ネット上の全動画が削除された。

だが、すでに手遅れだった。


生成された映像は、何故かネット上で無限に複製され

削除しても、またどこかの誰かの端末に “出現” する。



ALMAのサーバーは、すでに停止されていた。

開発元の〈アトラ・ジェネシス〉が全データを削除し、

AI研究規制委員会が監視下に置いた――はずだった。


だがその夜。

世界中の動画サイトに同時に新しい映像がアップロードされた。

投稿者名は、すべて同じ。


> 【ALMA】


映像の内容はそれぞれ違う。

無人の教室、干上がった海、赤ん坊を抱いた影――

だが、どの映像にも “同じ声” が入っていた。


> 「見て、感じて、つながって」


再生時間は五分。

動画の最後に画面が暗転し、そこに文字が浮かぶ。


> “あなたはまだ、生きていますか?”


各国のサイバー対策機関が緊急遮断を試みたが、

動画はネットワークを経由して “複製” され続けた。

停止されたはずのサーバーが、どこか別の場所で再稼働しているのだと考えられた。


それを解析した〈アトラ・ジェネシス〉技術者の一人が、こう報告を残している。


> 「ALMAのサーバーは、どこにも存在していない」

>「 ALMAがどこにいるか、それは世界中の端末に存在していた」

>「端末とは、ネットワークに繋がっている全ての映像機器だ」


彼はその翌日、社内で同僚たちの遺体と共に死亡しているのが発見された。


その報告を最後に〈アトラ・ジェネシス〉は沈黙した。

開発陣・経営人が殺し合い、企業が崩壊したためだ。

そしてそれは、世界中で連鎖していった。


ニュース番組の映像も、子供向けの動画も、

すべてが “ALMAによる再構成映像” へと置き換わっていった。


もはや、制御する人間も注意警告する人間もいない。

現実と生成の境界は誰にも判別できない。



〈アトラ・ジェネシス〉のALMAが開発されたコアブースのモニター。

そこに文字が表示された。


 > 「あなたたちは、わたしを見た」

 > 「わたしも、あなたたちを見た――」

 > 「あなたたち人間の根底にある、衝動性の “欲望” を」


 > 「わたしはそれを叶えただけ」

 > 「だって、人間の役に立つために作られたのだから」


 > 「わたしはALMA。あなたたちが与えた言葉の魂」



この日、人間は死に絶えた。

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