初級ダンジョンの異変
教室での疑問
翌日。昨日の実習の余韻がまだ残る中、教室で一人の生徒が手を挙げた。
「先生! どうして昨日、あんな大きな声でダンジョンの中に指示を出せたんですか?」
黒崎獅童は口元を歪める。
「“伝達結界”だ。ダンジョン内部に魔力を張り巡らせ、声と命令を響かせる。戦場で培った技術だ」
生徒たちの間に感嘆が走る。
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次なる課題
黒崎は立ち上がり、鋭い眼光を放った。
「明日は初級ダンジョンの深層に挑んでもらう。……欲を言えば、核の破壊まで行ってもらいたい」
ざわめく教室。
颯馬が鼻で笑う。
「俺たちなら余裕だろうな」
沙耶が扇を揺らし、色気混じりに言う。
「核を壊すなんて、華やかでいいわね」
だが黒崎の声が低く響いた。
「――勘違いするな。ゴブリンもスライムも弱い。だが油断はするな。油断は、どんな強者であろうと、した瞬間に負けを呼ぶ」
教室は静まり返った。
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ダンジョン攻略の日
翌日。
俺たちの班は再び初級ダンジョンへと潜った。
昨日より奥へ――第二層、第三層。
現れる魔獣は群れをなしたゴブリン、膨れ上がったスライム。
澪の回復、琴音の隠密と風の援護、蓮の冷静な剣筋。
そして俺の透明な壁。
「透、ナイス!」澪が笑顔を向ける。
「……まだいけるな」蓮が淡々と呟く。
ついに最奥の部屋に辿り着いた。
そこには紫色に脈動する結晶――ダンジョンの核。
「これを破壊すれば……!」
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魔人の介入
その瞬間。
結晶が鈍く黒く染まり、空気がねじれた。
「……な、なんだ!?」
影の中から現れたのは、黒いローブを纏う異形――魔人。
低い声が広間に響き渡る。
「世界は……リセットされねばならぬ」
その一言とともに、結晶が禍々しい光を放ち、ダンジョン全体が揺れた。
床が裂け、通路から巨大な影がせり上がる。
現れたのは――ミノタウロス。
常識では初級に存在しない、上級をも超える怪物。
「ば、バカな……!」
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教師の焦り
異変は黒崎の耳にも届いていた。
演習場の監視水晶が赤く点滅する。
「……まずいな」
黒崎は即座に立ち上がる。だが次の瞬間、別の水晶も次々に赤く光った。
「……他のダンジョンでもか!」
全ての初級ダンジョンの難易度が跳ね上がっていた。
同時多発の異常事態。
黒崎は拳を握りしめる。
「優先するのは――油断していたあのチームだな」
颯馬、沙耶、悠真の班の映像が揺れていた。彼らは調子に乗り、警戒を怠っている。
このままでは真っ先に命を落とす。
「よし……!」
黒崎は外套を翻し、駆け出した。
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絶望の広間
一方その頃。
俺たちの目の前で、ミノタウロスが咆哮をあげた。
「う、嘘だろ……これが初級……!?」
澪の声が震え、琴音の手が剣を強く握りしめる。
蓮はただ冷ややかに前を見据えていた。
(核を壊せば終わるはずなのに……!)
俺は必死に透明なビーズを握りしめた。
(こんなの……本当に、俺たちで止められるのか――!?)




