優等生との出会い
嘲笑
属性測定を終えた後も、ざわめきは止まらなかった。
大講堂を出ると、廊下のあちこちで俺の噂が飛び交う。
「見たか? 完全に無色だったぞ」
「筆記首位なのに実技最下位、しかも属性不明とか」
「総合最下位で合格なんて、奇跡というか恥さらしだろ」
笑い声が耳にこびりつく。
胸の奥が重くなり、拳を握りしめるしかなかった。
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選ばれし者と落ちこぼれ
そこへ、試験上位者の姿が現れた。
**藤堂颯馬**が赤い瞳を細めて、鼻で笑う。
「同率首位? 冗談だな。実技最下位のくせに、俺と並ぶなんて」
**姫野沙耶**は口元に扇を当て、わざとらしく嘲る。
「無色……。まるで絵本に出てくる出来損ないの怪物みたい」
**天城悠真**は冷ややかに腕を組み、吐き捨てた。
「総合で最下位同然……。授業で足を引っ張らないといいがな」
三人の視線は、まるで「選ばれし者」と「落ちこぼれ」を線引きするように冷たかった。
俺はうつむき、反論すらできなかった。
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救いの声
「やめろ」
その時、凛とした声が響き渡った。
黒髪の少年――**神谷蓮**が一歩前に出ていた。
背筋を伸ばし、制服を着こなすその姿は堂々としている。
ただ立っているだけで、周囲を圧倒する存在感があった。
「属性がどうであれ、ここに立つ以上は同じ仲間だ。馬鹿にする資格はない」
その声は静かで落ち着いているのに、不思議と誰も逆らえなかった。
颯馬も沙耶も悠真も、舌打ちや肩すくめを残して引き下がる。
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神谷蓮
蓮は俺に近づき、まっすぐな瞳で見据えた。
「光永透、だったな」
「あ、ああ……」
「筆記で俺と並んだ。実技は不調だったが、伸びしろがある証拠だ」
そう言って差し出された手は、自信と確信に満ちていた。
戸惑いながらも、俺はその手を握り返す。
力強く、温かい握手だった。
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三人の始まり
「これからよろしくな。同じクラスだ」
蓮は穏やかに微笑んだ。
「ね、透。味方がまた増えたでしょ」
澪が隣で小さく笑う。
「……ああ。ありがとう」
胸に積もっていた重苦しさが、少しだけ和らいだ。
こうして俺と澪、そして蓮の三人の学園生活が始まった。
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違和感
去り際、蓮はふと小さく呟いた。
「……世界は、変わらなければならない」
俺も澪もその言葉の意味を深く考えなかった。
ただ、妙に冷たい響きが心に残ったことだけは、はっきり覚えていた。




