無色の烙印
入学式
入学試験から数日後。
俺たちはついに――ビーズ学園の大講堂に集められた。
荘厳な柱と高い天井、壇上に並ぶ教師たち。
国家直属の教育機関。その威厳に圧倒される。
学園長が立ち上がり、朗々と告げる。
「試験を終えた諸君。これより正式な合格発表を行う」
張り詰めた空気の中、全員の視線が壇上に注がれた。
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合格発表と順位
「まずは筆記試験の結果である。第一位――神谷蓮、および光永透」
会場がざわめきに包まれる。
「透が……?」「無色なのに……?」
俺は息を詰めた。
必死に積み重ねてきた努力が報われた瞬間。だが、驚きと疑いの視線ばかりが突き刺さる。
「第三位――藤堂颯馬」
「第四位――姫野沙耶」
「第五位――若葉澪」
澪の名前が呼ばれると、彼女はほっとしたように笑った。
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「次に実技試験である。第一位――神谷蓮」
会場は拍手喝采に包まれた。
筆記も実技も首位。名実ともに新入生の頂点に立つ男。
「第二位――藤堂颯馬」
「第三位――姫野沙耶」
「第四位――天城悠真」
「第五位――若葉澪」
澪は実技でも安定していた。支え役としての素質が光る。
そして最後に告げられた名前は――。
「最下位――光永透」
その瞬間、会場が凍りつき、すぐにざわめきが爆発した。
「筆記1位で実技最下位?」
「バランス悪すぎだろ」
「やっぱり無色は無色か」
胸に突き刺さる声。合格の喜びよりも屈辱が勝っていた。
「以上の者、すべて合格とする」
その一言で、俺の学園生活が正式に始まった。
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属性測定
続いて、属性測定が行われた。
学園に唯一存在する巨大な水晶に触れることで、正式に属性が証明される。
まず壇上に立ったのは藤堂颯馬。
彼が水晶に触れた瞬間、赤い炎のような光が迸る。
「藤堂颯馬、赤属性!」
「攻撃特化か、やっぱりな!」
会場が熱気に包まれる。
続いて姫野沙耶。
彼女の周囲に紫の光がゆらめき、幻のように揺らいだ。
「姫野沙耶、紫属性!」
「幻惑系か……手ごわそうだな」
次は天城悠真。
澄み切った青の光が広がり、冷静な彼の雰囲気そのものを映す。
「天城悠真、青属性!」
「防御も支援もいけそうだ」
澪が壇上に立つ。
緑の光が優しく広がり、会場の空気が少し和らいだ。
「若葉澪、緑属性!」
「回復か! 仲間を支える存在だな」
そして蓮。
黒に近い強烈な光が弾け、空気が一瞬で張り詰める。
「神谷蓮、黒属性!」
「筆記も実技も首位で黒属性とか……完璧すぎる!」
尊敬と畏怖が混じった声が会場を揺らした。
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無色
そして、俺の番が来た。
水晶に手をかざす。
光が走り――……色づかない。
「…………」
大講堂全体が一瞬、凍りついた。
絶対に色が現れるはずの測定で、ただの無色が映し出されている。
誰もが息を呑み、言葉を失った。
次の瞬間、爆発するようにざわめきが広がった。
「そんな……歴史上一度もない!」
「測定器が壊れたのか?」
「いや、完全に“無色”だ……」
「やっぱり不適合者じゃないか!」
笑いと驚愕と軽蔑。
その全ての視線が俺に突き刺さる。
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支え
「透、大丈夫!」
壇下から澪の声が響く。
怯えのない瞳で、まっすぐに俺を見ていた。
「私は信じてる!」
その言葉に胸が熱くなる。
さらに、蓮が静かに言った。
「属性に縛られる時代は終わる。俺はそう思っている」
冷静な言葉が会場に響き、ざわめきがわずかに収まった。
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烙印
だが、俺に向けられる視線は冷たいままだ。
――「無色の不適合者」。
その烙印は、この日から俺に刻まれた。
(……必ず証明してみせる。この力が、無意味じゃないことを)
胸の奥で固く誓いながら、俺は学園生活の第一歩を踏み出した。




