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不適合者のビーズ使い  作者: パシパシ


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2/25

不適合者

入試の日


 石畳の広場に、数百人の若者が集まっていた。

 空は快晴で、春の風が校舎を包み、張り詰めた空気を少しだけ和らげている。


 ――ここが、ビーズ学園。

 国家直属にして唯一無二、最高の戦士を育てる学び舎。

 門をくぐることが許されるのは、試験を突破した者だけだ。


「透、大丈夫?」


 隣に立つ若葉澪が不安そうに見上げてくる。

 緑のビーズを手に持ち、その輝きはもう彼女の適性をはっきりと示していた。

 回復と補助――目立ちはしないが、仲間を支える確かな力。


「ああ……大丈夫だ」

 本当は心臓が爆発しそうなくらい緊張していたが、澪に心配をかけたくなくて強がった。



筆記試験


 午前は筆記試験だった。

 歴史、魔力理論、属性学……分厚い答案用紙にびっしりと並ぶ難問。


 俺は必死に食らいついた。

 属性の力はなくても、知識だけは積み重ねてきた。

 「落ちこぼれ」と言われても、学ぶことだけは諦めなかったからだ。


 試験会場の隅に座る一人の少年が目に入る。

 黒髪の優等生――神谷蓮。

 彼は迷いなく答案を書き進め、姿勢も崩さず、完璧な集中を見せていた。


(……すげぇな……)


思わずそう呟きそうになる。

この時はまだ知らなかった。やがて彼が俺の人生に深く関わってくることを。



実技試験


 午後からは実技――ダンジョン攻略試験。

 筆記を突破した者だけが、この門をくぐれる。


 俺と澪は小規模なダンジョンへと送り込まれた。

 石造りの通路は薄暗く、どこか湿った匂いが漂う。


「核を破壊すること。それが課題だ」


 試験官の声が響き、受験者たちは散開した。

 赤属性の少年は掌から炎を放ち、迫るモンスターを一瞬で焼き尽くす。

 青属性の少女は水を操り、敵を押し流していく。

 誰もが堂々と力を使い、己の存在を証明していた。


 一方で俺は――。


「……何も出ない」


 ビーズを握りしめても、光は無色のまま。

 剣も盾も弓も、形を成さない。

 ただ立ち尽くすしかなかった。



澪の危機


「透、来るよ!」


 澪の声と同時に、鋭い爪を持つモンスターが飛びかかってきた。

 澪は仲間を癒やすのに集中していて、完全に無防備だった。


「澪ッ!」


 考えるより先に体が動いた。

 無意識に突き出した掌から光が弾ける。


 透明な壁が現れ、モンスターの爪を受け止める。

 次の瞬間、衝撃はそのまま反射し、モンスター自身を吹き飛ばした。


「……防いだ? いや……反射……?」

「透……今の!」


 俺自身、何が起きたのか分からなかった。



魔力の代償


 安堵も束の間、全身から力が抜けた。

 視界が揺らぎ、頭痛と吐き気に襲われる。

 膝が崩れ落ち、呼吸が乱れる。


「透ッ! 大丈夫!?」


 澪の緑の光が体を包み、必死に意識を繋ぎ止める。

 ――一度の防御と反射、それだけで魔力を使い果たしていた。


 試験官たちはざわめき、やがて結論を下した。


「属性は確認できない……だが確かに力はあった。

 ただし、実技の評価は最下位である」


 その言葉が胸に重く突き刺さる。



不安


 澪に支えられながら外に出たとき、青空がやけに眩しく見えた。

 受験生たちは皆、堂々と笑っていた。

 俺だけが、胸の奥に重たい影を抱えていた。


(筆記は首位……でも実技は最下位……これで本当にやっていけるのか……?)


 それでも――。


「透、大丈夫。私がいるから」


 澪の声に、ほんの少しだけ前を向ける気がした。


 こうして俺は、かろうじて学園への切符を掴んだ。

 ――けれど、この力が俺をどんな運命へ導くのか、その時の俺はまだ知らなかった。


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