若葉澪 vs 姫野沙耶
第二試合 若葉澪 vs 姫野沙耶
観客のざわめきはまだ収まらない。
「無色の勝利なんてまぐれだ」
「次は回復役? すぐ負けるに決まってる」
そんな声の中、澪が真剣な表情で試合場へと歩み出た。
緑のビーズが淡く輝き、その姿は凛としていた。
「第二試合――若葉澪 対 姫野沙耶。前へ」
黒崎の声に応じ、沙耶が優雅に扇を広げる。
「ふふ……“治すだけ”の子が、私に勝てるかしら?」
挑発の声に観客席から笑いが起きた。
だが澪はきっぱりと返す。
「私は透を支えてきた。……でも、支えだけじゃない。自分でも戦える」
⸻
戦闘開始
「――始めッ!」
沙耶が紫の幻影を展開する。十数体の分身が一斉に動き出し、観客がどよめく。
「どれが本物だ!?」「無理だろ、あんなの!」
しかし澪は微動だにせず、静かにビーズを掲げた。
「――《光の矢》!」
緑の矢が10本、一斉に放たれる。
幻影をすり抜け、必ず1本が本体を撃ち抜く。
「ぎゃあああああああッ!!!」
沙耶が絶叫し、地面に転げる。
体は即座に治るが、骨折級の激痛だけが残る。
⸻
繰り返される直撃
二回目――また1本が直撃。
「いやぁぁぁぁ!! やめてぇぇ!!」
三回目――
「ぐううううあああッ!! 治ってるのに……痛いのやだぁぁ!!!」
四回目――
「ひぃぃぃぃ!! 怖い怖い怖い!!」
五回目――
「ぎゃあああああああ!! もう撃たないでぇぇ!!」
幻影は完全に崩れ、沙耶は涙と涎で顔をぐしゃぐしゃにして崩れ落ちた。
⸻
観客席
「幻影がまったく役立ってねぇ!」
「10本同時だから毎回当たるとか地獄だな!」
「澪ちゃん怖すぎる! 天使の皮かぶった悪魔だ!」
観客は驚愕と爆笑の渦に包まれる。
⸻
決着
黒崎が低く告げる。
「――勝負あり」
沙耶は扇を放り出し、泣き叫びながら退場していった。
通路を引きずられるように運ばれながらも、なお震えが止まらない。
そしてその後――彼女は澪を見るたびに肩を震わせ、吐き気をこらえるように口を押さえるようになった。
痛みが治っても、心に刻まれた恐怖は消えなかったのだ。
澪は光を収め、静かに息を整える。
(透だけじゃない……私も、この舞台で戦えるんだ)