謝罪
病室の再会
学園再開から数日後。
放課後の医務棟の廊下で、俺は声をかけられた。
「……光永」
振り返ると、ベッドから降りた悠真が立っていた。
まだ体は痩せ細り、動くだけで苦しそうだ。
けれど、その瞳だけは以前よりも澄んでいた。
「お前に……話がある」
病室の窓際に腰を下ろし、深く息を吐く悠真。
沈黙の後、唇を噛みながら言葉を絞り出した。
「俺は……ずっとお前を見下してた。“無色”だからって馬鹿にしてた。
でも結局、倒れたのは俺で……仲間を守れなかった。
お前は今も前に進んでる。本当は……謝りたかったんだ」
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透の返答
俺は拳を握りしめ、しばらく黙った。
あの日の嘲笑や冷たい視線――胸に残る痛みはまだ消えていない。
けれど――。
「……謝るだけなら誰でもできる。
だったら“半年後のトーナメント”で証明してみせろよ。
本当に変わったってことを」
悠真は驚いたように目を見開き、すぐに苦笑を浮かべた。
「……分かった。半年あれば、この体も治せる。
その時に示す。俺が変わったってことを」
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誓い
病室を後にしながら、夕暮れの赤空を見上げた。
半年後のトーナメント――そこに向けて悠真も立ち上がろうとしている。
(なら、俺も……負けられない)
透明なビーズを強く握りしめる。
ここからが本当の始まりだった。
トーナメント開幕
――そして、半年が過ぎた。
学園は再び熱気に包まれていた。
半年に一度の武闘大会――トーナメントが、ついに幕を開ける。
石畳の広場には数百人の生徒が集まり、観客席には教師や上級生、さらには各地から招かれた来賓の姿まであった。
張り詰めた空気の中、掲げられた巨大な対戦表に名前が次々と刻まれていく。
壇上に立つ学園長・**加賀谷玄道**が朗々と声を響かせた。
「これより、武闘大会トーナメントを開会する!」
続いて、第一クラス担任・**黒崎獅童**が一歩前に出る。
「戦いは一対一。己の力を示せ。――勝者のみが次へ進む」
その瞬間、観客席から大きなどよめきが広がった。
⸻
組み合わせ発表
•光永透 vs 藤堂颯馬
→ 筆記3位・実技2位の実力者。炎剣を操る攻撃型。
•若葉澪 vs 姫野沙耶
→ 回復の澪と、幻惑の沙耶。支援型同士の真っ向勝負。
•如月琴音 vs 新堂圭吾
→ 風の隠密型 vs 不明の実力を持つ新キャラ。
•神谷蓮 vs 荒城武瑠
→ 巨槍を振るう猛者。力と技を兼ね備えた強敵。
•天城悠真 vs 佐伯迅
→ 俊敏な青の剣士。復帰戦にふさわしい相手。
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生徒たちの反応
「透、大丈夫?」
隣で澪が心配そうに声をかける。
「ああ……問題ない」
胸の奥では、緊張と炎がせめぎ合っていた。
「荒城武瑠……か」
蓮が対戦表を見つめ、低く呟く。
「槍の扱いは上級生並みだと聞く。油断はできないな」
「私の相手は……新堂圭吾」
琴音は表情を引き締める。
「正直、名前しか知らない。でも――だからこそ全力でいく」
一方で悠真は、静かに拳を握った。
「佐伯迅……速さで知られる奴か。俺にとっては丁度いい」
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第一試合開始
審判役の黒崎が試合場の中央に立つ。
「第一試合――光永透 対 藤堂颯馬。前へ」
観客席がざわめきと歓声に包まれる。
颯馬は赤い炎剣を顕現させ、にやりと笑った。
「覚えてるか? 入学の時。筆記でお前は1位だったが、実技は最下位。
俺は実技2位……お前と同じ舞台にいること自体が気に入らねぇ」
観客からも声が飛ぶ。
「無色が勝てるわけない!」「炎に焼かれて終わりだ!」
だが俺は透明のビーズを強く握りしめ、真っ直ぐに颯馬を見返した。
(証明する。俺が“無意味じゃない”ってことを――!)
黒崎の声が鋭く響き渡る。
「――始めッ!」
次の瞬間、颯馬の炎剣が火花を散らして襲いかかってきた。