学園トーナメントに向けて
1vs1訓練
学園が再開して数日、廊下では「半年に一度の学園トーナメント」の話題で持ちきりだった。
俺たちも黒崎先生に付き添われ、特別に訓練場で実戦形式の稽古を積んでいた。
「今日はお前たちに、1vs1の立ち回りを叩き込む。トーナメントは団体戦じゃないからな」
黒崎先生の声が響く。
まずは俺と蓮。
透明の刃を形にして構えるが、蓮の剣筋は速すぎて、何度も防御が遅れる。
壁を張っても一瞬で割られ、押し込まれる。
「くっ……!」
「まだ甘い」
必死に応じながら、俺は汗を拭った。黒崎は腕を組み、じっと見ている。
「透、防御の反応は前より速くなっている。だが蓮相手にはまだ足りん。続けろ」
続いて澪と琴音が対峙する。
澪の光の矢は当たれば痛みを与え、相手を怯ませる。だが琴音の速度強化を受けた動きは鋭く、矢をかわして反撃する。
それでも澪は諦めず、矢を放ち続けていた。
「すごい……二人とも、半年前とは別人みたい」
思わず息を呑むと、黒崎も低く呟いた。
「確かに伸びたな。……だが、まだこれからだ」
⸻
黒崎の指導
稽古がひと段落すると、黒崎は全員を見渡して口を開いた。
「お前たち四人は、確かに力をつけてきている。だが勘違いするな。トーナメントでは仲間に頼れん。
一人で立ち、戦い、勝ち残らなければならない」
そして、視線を鋭くして言い切った。
「……だが心配はいらん。お前たちなら余裕だ。」
その言葉に、一瞬息を呑む。
黒崎はさらに続けた。
「俺が望むのは“4人全員”が最後まで生き残ることだ。
トーナメントの最終盤、お前たち四人だけで戦え。
互いに全力を尽くし、勝者を決めろ。
それこそが、お前たちがこの学園を背負う証明になる」
胸の奥に熱が広がった。
澪も琴音も真剣な顔でうなずき、蓮の瞳は鋭く輝いていた。
(4人で最後まで……か。やってやる)
⸻
病室の悠真
一方その頃、医務棟の病室。
悠真はまだベッドの上だったが、瞳は以前よりも澄んでいた。
「……俺、透に謝りたいんだ」
見舞いに来た沙耶と颯馬が顔を見合わせる。
「本気か?」
「あれだけ馬鹿にしてたのに?」
「だからだよ。結局倒れたのは俺で、透は今も戦ってる。
本当に謝りたい。間違ってたのは俺なんだ」
二人は驚きつつも、最後にはうなずいた。
悠真は拳を握り、心に決意を固めた。
⸻
噂
数日後。
授業を終えて澪や琴音と歩いていると、廊下の生徒たちのひそひそ声が耳に入った。
「聞いたか? あの悠真が……」
「光永に謝りたいって言ってるらしいぞ」
俺は立ち止まり、無意識に拳を握りしめた。
「透……」
澪が心配そうに覗き込む。
「……本当かどうかは分からない。でも――確かめるのは直接だ」
透明のビーズを握りしめる手に、熱がこもった。
学園トーナメントは近づいている。
戦いの舞台に立つ前に、向き合わなければならないことがあるのかもしれない――そう思った。