学園再開と新たな力
学園再開
六か月に及ぶ休校がようやく終わり、学園に再び生徒たちの声が戻ってきた。
あの日――魔人襲来による混乱から半年。
街の不安も少しずつ収まり、学園はようやく再開された。
だが俺にとっては、久々の登校は決して気楽なものではなかった。
入学式の日、俺は「無色」と嘲られた。
その記憶はまだ消えておらず、廊下を歩けばひそひそと声がする。
「……あいつ、まだいるんだ」
「入試のとき、何もできなかったんだろ?」
耳に入る言葉は変わらない。
けれど、俺の隣には蓮、澪、琴音がいる。
半年間の特別訓練を共にした仲間たちだ。
今の俺たちを、ただの「落ちこぼれ」と笑うことはできない。
ただ、生徒の数は少し減っていた。
休校期間中に、不安や恐怖から学園を去った者が少なくなかったのだ。
その現実が、この世界の厳しさを物語っていた。
⸻
黒崎の告知
初日の教室に、黒崎獅童が現れた。
いつもの鋭い眼差しで教壇に立ち、無駄のない声で言い放つ。
「次の学園行事は――トーナメントだ」
ざわめきが一斉に広がる。
学園恒例の武闘大会。半年に一度、1対1で己の力を示す戦い。
「全員が参加だ。例外はない」
黒崎の声が教室を震わせる。
「攻撃魔法を持たぬ者は武器を買え。攻撃手段を持たぬ者に参加資格はない。
力を示せぬ者は、この学園にいる価値がない」
空気が凍り、生徒たちの表情がこわばった。
だが、俺たち四人は顔を見合わせ、頷き合った。
――半年間の訓練を証明する機会がついに来たのだ。
⸻
澪の告白
授業後、俺は澪に小声で聞いた。
「澪……大丈夫か? お前、回復魔法しか――」
だが澪は少し照れくさそうに笑い、手を掲げた。
「……実は最近、攻撃魔法も使えるようになったんだ」
「えっ?」
俺も、蓮も、琴音も驚きの声を上げる。
澪は小さな緑の光を生み出し、壁に撃ち込む。
淡い光弾がぶつかり、石壁にひびが走った。
「回復魔法を“逆向き”に使ったの。
相手を治す力を無理やり叩き込むと、傷は治るんだけど――激痛で動けなくなるの」
「……えぐいな」
俺は思わず呟いた。
「でも、殺す力じゃないからね。牽制にしかならないよ」
澪は肩をすくめた。
けれど、間違いなく戦う力を手に入れたのだ。
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決意
「……十分だ」
蓮が短く言った。
「攻撃力が低くても、敵を止められるならそれでいい」
俺も頷いた。
「澪……無理しなくていい。でも、それはきっと大きな武器になる」
澪は少し頬を赤らめて微笑んだ。
こうして俺たち四人は、半年後のトーナメントに向けて新たな決意を固めたのだった。