黒崎との模擬戦
黒崎vs4人
「よし……今日は特別だ」
訓練場に立つ黒崎獅童は、ゆっくりと刀を抜いた。
「俺が相手をする。四人まとめてかかってこい」
緊張が走る。教官自らを倒すこと――それは訓練の最終段階を意味していた。
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蓮の攻防
「行くぞ!」
蓮が真っ先に踏み込み、黒の剣を振るった。
火花が散る。
黒崎の刀と蓮の剣が正面からぶつかり合った。
俺は思わず息を呑む。
(……互角に渡り合ってる?)
蓮の動きは鋭く、わずかに黒崎を押す瞬間さえあった。
だが次の瞬間、蓮は自ら力を緩めたように、少し後ろへ下がった。
「……ふむ」
黒崎はそれを追及しなかった。
だが心の奥で違和感を覚える。
(この年齢でここまで……いや、まだ“何か”を隠しているな)
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四人の連携
俺は盾を展開し、黒崎の斬撃を反射で逸らす。
琴音が風で蓮を加速させ、澪が小さな傷を即座に癒やす。
一瞬だけ黒崎の動きが止まり、俺たちの連携が決まったように見えた。
だが黒崎は刀をひるがえし、すぐに体勢を立て直す。
「……まだ甘い。お前たちの呼吸は完全には合っていない」
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合格基準
休憩の合間、俺は思わず口にした。
「先生……この訓練の合格基準って、何なんですか?」
黒崎は迷いなく答えた。
「単純だ。――俺を倒すことだ」
「せ、先生を……倒す?」
澪が目を見開き、俺も思わず聞き返した。
「どういう意味ですか……?」
黒崎は刀を肩に担ぎ、低く言った。
「文字通りだ。この学園に六年間いる間に、俺を倒せるほどの力を示してみせろ。
それが、お前たちが本物になった証だ」
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黒崎の本心
再び戦闘に入る。
俺たちが四人で仕掛けても、黒崎は余裕を崩さない。
ただ――蓮だけは、時折その鋭さで黒崎を本気にさせる一歩手前に迫っていた。
(……やはり蓮は異常だな。強すぎる。だが――自ら抑えている)
黒崎は気付かぬふりをして模擬戦を続けた。
だがその眼差しの奥には、確かに小さな疑念が残っていた。
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言葉の重み
模擬戦が終わり、黒崎は刀を収める。
「まだまだ未熟だ。だが……お前たちには伸びしろがある」
そして俺たちを順に見渡し、重く言った。
「六年間、この学園を引っ張り、守るのはお前たちだ。覚えておけ」
その言葉に、俺たちは無言で頷いた。
重責を感じながらも、不思議と胸の奥に熱が灯るのを感じていた。