一
「愛してるよ、小チー。」
スマホに届いた幼なじみからのメッセージを見て、思わず握りつぶしたくなる衝動に駆られた。
「おやすみ。」
もうあの甘ったるくてベタベタした絵文字は使わず、ただ二文字だけを返す。
一文字打つごとに、心が汚れていく気がした。
だって、彼女が浮気していることを知っているから。
彼女がいつからなのかは分からない。多分、高校一年の時から?クラスも違うし、高校二年になってからは彼女は文系、僕は理系を選んで、校舎も別々になった。唯一一緒にいられるのは休日か家に帰るとき、家の前で偶然会うくらい。
そう、今は偶然会うことしかできない。
それから、彼女はどんどん僕と距離を置くようになった。夕食に誘っても軽音部の練習だと断られ、朝一緒に登校しようと誘っても先に行ってしまう。やっと休日に遊びに誘っても、軽音部の活動があると言われる。道で会っても距離を保ち、手も繋いでくれない。
当時は、恋の熱が冷めてきた「倦怠期」だと思っていた。でも、ある日カフェで自習していた時、ロシュエンが隣のクラスの男子とレストランから出てきて、抱き合っているのを目撃した。その光景は一生忘れられない。
あの男、確か「子誠」って名前だったかな。
「なんでテスト前にこんなことするんだよ……」と、思わずため息が出た。
「今日はこの答案を提出しなきゃいけない。」
クラス委員長が話しているが、僕は全く頭に入らない。
「なあ、最近どうした?」
隣のクラスメートが僕を起こし、僕は笑顔だけを返した。
「いや、何でもない……」
「うそだろ、顔色悪いし、何かあったんじゃないの?」
「気にしないで、大丈夫だから。」
「彼女とケンカしたの?」
「……してないよ。」
「まあ、分かってるよ。」クラスメートは分かったような顔で言った。「ちゃんと謝るんだぞ。」
「……」
もう彼女のことは聞きたくなかった。
だから、机に突っ伏して頭を空っぽにした。