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口頭試験ならびにマスターの称号

この時期は朝がとても涼しくて最高なのです

初夏の香しい日々。心地よい冷ややかさが残る朝日を浴びて、今日から始まる口頭試験に、主人公は胸を高鳴らせていた。昨夜までICレコーダーで録音した講義の音声を何倍速で再生していた。年を取ると記憶力が怪しくなるので、授業に録音は欠かせない。一応すべての授業は運営側において録画してあるのだが、動画だと気が散るので、内容に集中するためにも、ICレコーダーで録音した音声の方が内容に集中できる。授業の内容を咀嚼するには、音声で再生しながら、思考する必要がある。それの繰り返しだ。


そこで何回も思考を重ねた内容が、試験にて問われる事となる。また思考を研磨して洗練するためにも、討論は必須となる。厳密な前提の設定の上に、議論という格闘技をするのは、推奨された。


授業ら討論を含めた内容を咀嚼するかを試す試験が、口頭試験にて出題される禅問答のような回答だ。そこで試験官を納得させなければならない。


質問の回答は時間内に洗練された言葉遣いで答えることが必要だ。かなり緊張する。


また裏の判断基準として、日頃の生活での様々な事柄(カウンセリングを含め)を見てるので、口が上手いだけでは判断基準にならない。


夏の暑さを含んだ冷気は気持ちよかった。


試験会場に向かう、かつかつかつとした靴音だけが耳に入る音だ。試験会場は、非常に静謐かつ落ち着いた、香り高い学問的な品を漂わせた空間だ。入るたびに縮こまる思いがするが、居心地は悪くない。そのまま居眠りしてしまえば最高だ。椅子もふかふかだし。


そんな思いに耽ってると、次は主人公の番だと言うことを密かに告げられた。


運命の時が迫っていた。


さらに、口頭試験の是非だけでなく、6年次の試験の後に、その人に「マスターの称号」を与えるかどうかが審議される。「マスターの称号」を与えるかどうかは時間をかけて審議され、卒業間際になって公表される。


「マスターの称号」のあるなしでは、端的に言うと尊敬の度合いが異なって来る。もちろん卒業後の人生においても進路が違ってくる。(世間一般のように現世利益が増進するわけではない。卒業後に配置される分野が違ってくるだけだ。)


「マスターの称号」を得るという事は少なくとも、この学院こと「とある教育ユートピア」の運営陣にある種の「のようなもの」を認められたという事は間違いなく。それが重要な判断基準となって、卒業後の配置先の次元が異なって来るのだった。


最後まで行けば、学業修了自体の内容に差があるわけではない。「のようなもの」は、「とある教育ユートピア」では大きな要石と成り得るのだ。


そんな事を頭の中で復唱しながら、主人公は試験会場へと足を踏み入れた。


のようなもの」が認められる否かは、所詮私の及ぶ所ではないからな。と。

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