初めましてと肩バシバシ
ぱち、と目を開けると見えたのはうっすら生えた金髪の赤ん坊。
ここがどこだか分からず、目を瞬かせる…のも一瞬で終わり。
次の瞬間ものすごい勢いで話し始める。
「昨日寝落ちしてごめん!
作業進んだ?
俺もうだめそう」
その勢いに俺はぽかんとする…わけもなく。
うんうんと頷きつつ言葉を交わす。
「俺も俺も。
寝落ちしたと思ったらなんか身体軽いしどこまでもいけそう。
今日入稿だっけ?」
「予定では。
…っていうかここどこ?」
ばーっと勢いのままお互い話し、ふと勢いが止まる。
相方の問い掛けに俺も少し考え込み。
「さあ…?
っていうか、お前赤ちゃんじゃない?」
「いや、お前も。
…ってことはもしかして寝たまま転生……」
「嫌すぎる」
相方の想像に2人してため息をついた後。
よくよくお互いを観察する。
おそらくここは今までいた自室とは別の場所で。
お互いもDi.Codeの通話ではなく対面で喋っていて。
そしてなにより、赤ちゃん。
「赤ちゃん、赤ちゃんかー。
うっすら生えてるの金髪?
外国…より転生のがいいなこれ」
「わかる。
まあまだ性別も何も分からんし」
「まあまあ。
とりあえず両親待ちますか」
「うい」
さっきまでの勢いはどこへやら。
方針が固まると一気に静かになる部屋の中。
異変を感じ取った両親らしき足音が近づいてくる。
ガチャッ
『……!!』
「なんか言ってる」
「それはそうでしょうよ。
なんて?」
「さあ。
こっち赤ちゃんだし」
「いやそれはこっちも。
…あ、待ってなんか聞き取れそう」
「リ、…リュ…?
もうちょいで分かりそう……」
「リュシエール…?
俺たちのことをそう言ってるっぽい」
「なんだろ、俺たちを見て言うなら…。
だめだ、自分の容姿がわからん」
「じゃ、俺から見た特徴で。
赤ん坊、金髪、目が緑」
「わかった、双子だ」
「双子…ってよく言ってた前世絶対双子って意味の?」
「そ。
俺からも似たような姿に見えるし」
「双子かー。
リアル双子あんま見ないし気になるな」
「鏡とかあるんじゃない?」
「かも…ってやばい、普通に会話してた」
「…あ」
推定両親が気になって、ぴたりと会話を止めて前を見る。
そこにいたのは黒髪ふわっとな緑目父と、金髪ストレートっぽい母。
多分だけど。
どっちも感動しているのか口に手を当てて嬉しそうに肩をバシバシやっている。
「いや絶対あれ肩痛そう」
「わかる。
まあでもお互いにやってたら痛くないんじゃ?」
「あー、まあ。
基本ああいうのって片方だから痛いやつだし」
「そうそう…ってまたやった」
両親の反応を見ようと黙ったのにまた気になることがあって会話が再開して。
それに対して肩バシバシがヒートアップする両親。
…これもしかして双子尊い状態…?
「うちの両親双子ガチ勢か…」
「いやわからなくない?
まだほら、うちの子賢い〜みたいな」
「いやいや見てみ?
顔。
目ぇキラッキラで肩バシバシ。
100パーガチ勢だって」
「…まあ、そう言われたらそうか」
「会話するの見てバシバシヒートアップしてるからもう絶対そう。
…っとちょっと黙るか。
あれじゃ肩痛いどころじゃなさそう」
「よくこの間ずっとやってたな、バシバシ」
すっと俺たちが黙るとバシバシと目のキラキラが終わり。
めちゃくちゃ両親っぽく俺たちを抱き上げて写真を撮っている。
…ただし、枚数は連写レベルで。
「……やっぱりガチ勢だ」
ぼそっと呟く相方に2回頷き。
驚きしかない両親との初対面を終える俺たちなのだった。