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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

みんなちがって、みんないい

作者: @siva2nd


 妻の浮気は何となくだが感じていた。

 しかし妻の貞淑も信じたかった。

 それでもいつかは別れが来るのだろうかと考えることもあった。


 でもそれが今突然に訪れるとは思わなかった。


 きっかけは妻の仕事に問題が発生して帰りが遅くなったことだ。

 二十一時ころに帰宅した妻をねぎらったが、反応が薄かった。疲れているのだろう。そう考えた。

 でも妻はおかしなことを言い出した。


「あなたはそう。いつも私に関心がない」

 そんなことはない。実際に今も妻の労をねぎらって言葉をかけたばかりだ。それなのになぜ……

「他の人たちはみんな私に気をかけて心配してくる。手も貸してくれる。でもあなたは何?結婚なんてするじゃなかった。もう別れて」


 妻の言葉があまりにも衝撃的で声も出すことができなかった。

 しかし不思議と怒りは湧き上がってこなかった。それよりも焦燥感や世間体などが思い浮かんだ。

 そして私が黙り続けていたら、妻は浴室へ向かった。


 ひとりになった私はいろいろと考え始める。

 しかしさすがにショックで考えに一貫性がない。

 これからの生活に不安を覚えたり、妻と二年間の結婚生活を思い返したり、両親や義両親にどのように伝えるのとか、やっぱり浮気をしていたのかとか。

 まとまらない考えで、頭の中で右往左往をする。

 そして一人で思い悩んでいるところに入浴を終えた妻が来たが、黙ったまま寝室に向かった。

 その後姿をみるて、なぜ、どうしてと思い、再び考え始める。


 深夜二時を過ぎたころ、流石にもう寝ようと思い妻もいる寝室に入る。

 いつものように妻は静かに寝ている。まるで別れの言葉がなかったように。

 ベッドに近寄ると妻の枕元にあったスマートフォンが目に入る。

 魔が差すとはこういうことを指すのだろう。

 突然スマートフォンの情報が気になりだす。

 幸いリーズナブルな機種だったこともあり、セキュリティは指紋認証だったことは知っている。

 すぐに寝ている妻の指紋をいくつかを試したらロックが外れた。

 そのままSNSを開くと複数の男性とのやりとりが伺える。

 本当に浮気をしていたんだと実感した瞬間だった。

 そして付き合っている男性のことが気になり画像フォルダも覗くと、こちらにも複数の男性がいた。

 これはと思い、妻のスマートフォンを持ってリビングに抜け出す。

 そしてノートPCに写真や動画を転送し始めた。しかしすぐには終わりそうになかった。

 そのため妻のSNSの過去を振り返っていたら、これも記録しようと思いついく。

 今はデータの転送中なので、妻のSNSを少しずつ振り返りながら、自分のスマートフォンに動画として保存する。

 結局、画像などの転送には一時間以上かかった。その間に録画したSNSにはダブル不倫の痕跡もあった。

 辟易したせいか怒りは湧いてこなかった。


 そして妻の元にスマートフォンを戻す。

 改めて考えると、スマートフォンの中身を覗いたことがばれることなんかは気にならなかった。逆にばれてもどうということもないと思えた。

 それからはリビングに戻って離婚について考え始める。身体には疲れを感じていたが眠くはなかった。

 考えることに集中していたら、寝室からアラームが鳴って、しばらくして妻が出てくる。朝になっていたようだ。

 妻は顔を会わせても口を開くことはなかった。

 それでも自分は今日会社を休むことを伝えた。帰ってくる言葉はなかったし、妻は出勤するまで無口だった。

 妻が出勤してから、自分の上司と同僚に高熱を理由に仕事を休むことを伝えた。仮病なのに社内での流行を気にかけている風も装った。

 そしてネットで弁護士を探し、速攻で決めた。


 弁護士の話は、流れとしてはまず証拠となる情報の整理と相手方の確認。

 費用は着手金、妻との離婚と慰謝料請求で成功報酬一件。あとは相手方への慰謝料請求が一件ずつということ。

 ただし今回は相手方が複数いるため一件ごとに費用がかさむことを確認された。

 そして慰謝料が支払えなかった場合は持ち出しになることも念を押された。

 方向性として請求金額等は支払い可能額などを踏まえて弁護士に一任することにした。そして支払い逃れをされないために、強制執行も視野に一括払いのみにした。

 後は、今後の夫婦の会話は録音して、自分が不利にならないよう言動を慎むようにアドバイスを受けた。


 それからは同居生活が始まった。

 離婚を告げられた当初こそ寡黙で過ごしていたが、徐々に会話が増えてきた。それでもやり直そうとは思わない。

 それよりも弁護士の活動がじれったい。ほとんど放置だ。忘れたころに手続きの連絡があるくらいだ。

 そして二ヵ月近く過ぎたころに、妻の浮気を理由に離婚協議が始まった。

 最終的に両家家族を巻き込んで紛糾した。妻の浮気相手が複数存在していたからだ。

 そして三ヵ月ほどでして妻が慰謝料を支払うことで離婚が成立した。

 しかしこれは始まりにしか過ぎなかった。


 弁護士がまとめた結果、特定できた浮気相手が六人だった。妻のやり取りから通信事業者に情報開示請求請求をすれば、もう少し相手が増えるが調査を進めるか相談されたが断った。もう妻に関わることに疲れたからだ。

 結局一年以上もかかって六人の相手から慰謝料を受け取った。妻の分とも合わせて、弁護士費用を差し引いても一千万以上手元に入ってきた。

 そして、それ以上の金額が今妻に請求されているらしい。


 その理由は浮気をした相手に妻帯者が多くてその家族から慰謝料が請求されているからだ。

 お金に困った義両親が相談を持ちかけてきて経緯がわかった。

 その話を聞いたときに元妻との話を思い出した。「みんなが助けてくれた」

 助けてくれたみんなには好意があったのだろう。そして下心もあったのだろう。

 さらにはみんなというくらいだから、それぞれにちがった良さもあったのだろう。

 みんなちがってみんないい。

 ばかな女だ。

 私は「みんな」ではないから義両親の話を断った。

 自業自得だなと思ったけど、晴れやかな気持ちにはなれなかった。




おしまい




最後まで読んでいただいてありがとうございます。


純愛こそ正義!

ってことでNTRのアンチテーゼを書きたかったんです。

NTRって、きっかけは何であれ、結局は浮気でしょ?

だったら罪は償わなきゃ。

よく見かける、「イェーイ旦那さん見てるー。あんたの奥さんは俺の方がいいってよ。寝取ってごめ~ん」って状況があるじゃないですか、それってお互いが浮気を認めてるって証拠ですよ。

だからお互い「ざまぁ」されてください。


ちなみに六人って、手取り(笑)一千万にするための逆算です。



最後になりますが、今後の糧になりますので星を付けてもらえるとうれしいです。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 金に困って元旦那に連絡してくる義実家の下りが良い。 [気になる点] 二年間の結婚期間、妻含めて7人からの慰謝料が手元で1000万超えはやや無理の気も。(奥さんかなり悪質だからやや相場増し、…
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